人生のテーマは『爆笑』。勝みなみが持つ強さの根幹とは?
6打差圧勝で日本女子オープン初優勝!!
日本女子オープン最終日の18番ホールグリーン。両手でガッツポーズを決めた勝みなみは、自信に満ちた笑みを見せていた。その裏には、マイペースで過ごしてきた日々が見え隠れする。
アマチュアの頃から、常に自分をしっかり持っていた勝みなみ
最終日をプレー中の勝みなみ
若くして活躍する女子プロが増えれば増えるほど、彼女たちの人生を思う。大きなお世話なのは十分に承知している。だが、どれほど結果を出しても、一生、試合に出続けることはできない。だからこそ、ゴルフだけでなく、どんな時間を過ごしているのか。何を考えているのか、が気になって仕方ない。取材するたびに、そこを取材する。勝は、常に自分をしっかり持っているように見えた。
2014年、鹿児島高校入学直後の15歳293日で、勝がツアー競技、バンテリンレディスに優勝したのは、多くの人が知るところだ。同じ1998年度生まれの面々は、これに強烈な刺激を受けた。のちにプロとなり、強豪ぞろいの黄金世代と呼ばれるようになった彼女たちの牽引車が勝だったといっても過言ではない。
優勝したことで、一定の期間内に手続きをすれば、プロになることもできた勝だが、それをしなかった。アマチュアのまま、ナショナルチームの一員となり、プロの試合にも出られれば出る。その上で3年間の高校生活を全うした。「(あの時プロになることは)考えてもいませんでした」と、のちに語っているが、仲のいい友達とのかけがえのない日々を過ごしている。
「せっかくのチャンスをもったいない」と言う声がなかったわけではない。だが、ここで焦ってプロの道を選ばなかったことは、長い目で見るとよかったのではないか。結果論だが、今回の勝を見てそう感じた。
常に比較される宿命にある黄金世代にあって、勝は、マイペースを崩さない。プロになってからの優勝では、同期に先を越されたが、そこでも「自分のやることをやるだけです」と焦りを見せずにいた。目先の結果に左右されるに、自分のやるべきことをやる。コースや自然を相手にベストを尽くすゴルフの真髄を、自然に会得しているのかもしれない。
周囲に振り回されることなく自分を客観視
笑顔の勝みなみ
単独首位でスタートし、1打差で追う西郷真央と最終組での一騎打ちの様相だったナショナルオープン最終日。11番のティーショットを打った直後に勝は笑みを浮かべた。
パー3のティーショットは左のバンカーへ。西村との差は3打に開いていたとはいえ、まだここを入れて8ホールも残っている。それでも、ギャラリーのほうを見ながら笑った姿見たとき「これは優勝するな」と感じた。
2018年の終盤、プロになってから受け始めたメンタルトレーニングの効果が出て「プレー中の自分の表情を客観的にみられるようになった」と以前、勝から聞いた。これが、プロ最初の優勝につながっている。
大舞台の優勝争いで、勝は自分の表情をどう見ていたのか。少なくともこの場面で不安ではなかったに違いない。
かつて、将来の目標を訪ねたとき、勝は言った。「人生のテーマは『爆笑』にしました」と。
トップレベルで活躍する女子プロが増えれば増えるほど、そこには大きなお金が動くようになる。試合が増え、賞金額が上がるばかりでなく、プロそれぞれにスポンサーが付く。プロとして当たり前のことではあるが、世間を知らない若いプロたちが、これにがんじがらめにされて苦しむことも少なくない。
だが、勝については、そんな心配はないように思う。この先、どんなふうに羽ばたいていっても、ときにはもがくことがあっても、マイペースでいられるのではないか。周囲に振り回されることなく、自分を客観視できれば、それほどの武器はない。ナショナルオープンチャンピオンとなり、一つステップを上がっても、勝みなみという根幹が揺らぐことはないのだろう。
文/小川淳子
写真/相田克己