試行錯誤はアスリートの宿命

「最近のゴルフの調子と、自分の考えていることとか全く違うことができた4日間でした」。あふれる悔しさと涙とともに、充実感も味わった渋野は、優勝争いをそう振り返った。

2019年の優勝から3年。当時は興味のなかった海外進出を改めて模索し、今季から米国女子ツアーのルーキーとして戦っている中で、苦しみ、もがいた日々がそこに写り込む。

6月半ばからは、体調不良で棄権した全米女子プロを挟んで3試合で予選落ち。特に、アムンディエビアン選手権では、西郷真央が優勝争い。トラストゴルフ・スコティッシュ女子オープンでは、同じ米ツアールーキーの古江彩佳が初優勝を飾るのを尻目に予選落ちして、「練習するしかないと思っています」と厳しい表情を見せたのが記憶に新しい。

ところが、今大会が始まると別人のようにいいプレーを見せて初日から首位に立つ。

ヒントを得たことでパッティングがよくなり、安心してクラブが振れるようになったのが大きかった。

最終日に、一緒にプレーしたのは、3年前にも同じ最終組で優勝を争ったブハイ。揃ってメジャー未勝利だったが、前回は渋野が初めての栄冠をつかんだ。18番でバーディパットを放り込んで優勝を決めた渋野を、自分のことのように喜んでくれた相手こそブハイだった。

ダブルボギーも叩きながら、最後まで優勝争いにしがみつくことができたのは、米ツアーで戦う上で1打の重みをより感じるようになったからだろう。イーグルを狙い、バーディを取りに行ったからこそ、1打差3位の結果がある。

永遠に正解を探し続けるゴールのない戦いを、アスリートたちは続けている。

優勝という美酒に酔えるのはひと時だけ、その状態が続く保証はどこにもないし、常に上を求めるハングリーさがなければ、坂を上っていくことはできない。

「わかった!」と迷路から抜け出したと思っても、気が付けばまた違う迷路にいることもある。試行錯誤はアスリートの宿命。今回の戦いを通して渋野はそのことに気付いて前向きにとらえられるようになったのではないか。涙をこらえながらも笑顔を見せた姿からは、そんな開き直りが垣間見える。

彗星のようにメジャーの舞台で優勝し、”スマイリング・シンデレラ“と呼ばれた渋野が、次に目指すのは”スマイリング・クイーン“だろうか。終わりのない戦いといういばらの道を、渋野もまた歩き続けている。おいしい果実に誘惑されながら。