1. TOP メニュー
  2. HOTニュース
  3. 国内ニュース
  4. “藍ちゃん”世代の藤田さいきが、鈴木愛との激闘を制し、涙の復活優勝

“藍ちゃん”世代の藤田さいきが、鈴木愛との激闘を制し、涙の復活優勝

大王製紙エリエールレディスオープンで、36歳の藤田さいきが11年35日ぶりの優勝を飾る

2022/11/21 ゴルフサプリ編集部 真鍋雅彦

11年ぶりの復活Vを目指した藤田さいきと、今季初優勝を狙う鈴木愛の一騎打ちになった最終日。息詰まる展開になるも、最後は藤田が勝ちきった。

優勝を決めた瞬間、カップの前にしゃがみ込む

“キンクミ”こと金田久美子の11年189日ぶりの優勝で沸いた3週間後、再び女子ツアーが、ベテランの、しかも同じ11年ぶりの復活優勝が実現することを想像していた人はほとんどいなかったに違いない。

主役は、宮里藍、横峯さくらと同じ年(36歳)の藤田さいき。キンクミにはわずかに及ばなかった(?)が、女子ツアー史上2番目となる11年35日ぶりで頂点に立った。

キンクミは、涙、涙の優勝だったが、藤田も同じだった。

1メートルちょっとのウィニングパットを沈め、カップに向かって一歩踏み出したところで、崩れ落ちるようにしゃがみ込んでしまい、両手で小さくガッツポーズをしながらも号泣。さらにボールを拾い上げ、この日同組でプレーをした鈴木愛、岩井明愛と健闘を称え合ったあと、グリーンサイドで再び崩れ落ちた。

「11年ぶりの優勝がよほど嬉しかったのだろう」。そのシーンを見ていた人には、そのように見えたと思うが、涙の理由はけっしてひとつではなかった。

優勝後にまず彼女が口にしたのは、夫・和晃さんへの感謝だった。結婚したのは、2011年11月22日で、彼女が富士通レディースで5勝目を挙げた約1カ月後。ゴルフも人生も順風満帆のはずだったが、なぜかその優勝を最後に勝利を手にすることができなくなった。

14年に子宮頸がんを患うというアクシデントもあったが、06年から守り続けていたシード権も18、19年に失い、「結婚してからダメになった」という心許ない誹謗中傷もあったという。

そんな中でも、プロゴルファー・藤田さいきのマネージャーとして、彼女を支え、励まし続けたという和晃さん。「彼とともに優勝を味わいたい」という気持ちが大粒の涙となったのだ。

また、今季、最終戦までキャディを務めるはずだったプロキャディーの橋本道七三さんが、10月に食道ガンのため急逝。「彼のためにも優勝したいと思っていたので、それを見せることが出来て嬉しかった」という思いも吐露した。
もちろん、今季2位が3回と、いいところまでいきながらあと一歩が突き破れなかった自分を褒めて上げたい気持ちもあったのだろう。

「伝えたいことが沢山ありすぎて、ここでは伝えきれない」と言葉が、彼女の本当の気持ちを表していたような気がする。

激しいデッドヒートがファンをも魅了

優勝争いは、前週の伊藤園レディスに劣らず激しい戦いになった。

3日目が終わった時点で、鈴木愛が18アンダーでトップ、藤田が17アンダーの2位。3位タイの岩井とリ ハナは11アンダーだったので、最終日のスタート前から鈴木、藤田の一騎打ちになることが予想されたが、まさにその通りの展開になった。

前半は、鈴木が3バーディ、1ボギーで20アンダー、藤田も2バーディの19アンダーで1打差のまま折り返したが、11番パー5で鈴木がボギーを叩き、19アンダーで並ぶ。さらに13番パー4で藤田がバーディを奪い、逆転に成功する。とはいえ、この時点で残り5ホール。まだまだひと波乱もふた波乱もあると思われてた。

しかし、ここから2人の差は縮まらなかった。

最も痺れたのは15番パー4だった。

藤田、佐々木ともティーショットをラフに入れ、セカンドは藤田がピン手前3メートル、鈴木がピン奥5メートルのカラーに付ける。鈴木のラインは、下りのスライス。パターの名手、鈴木もこの日はもう一つ距離感が合っていなかったが、大事な場面でその実力を発揮。ライン、タッチともに完璧で、カップの左手前からきれいに沈めた。

一方、藤田も、3メートルの上りのフックと、けっして易しいラインではなかったが、これもジャストタッチでカップに沈め、1打差をキープした。

そして迎えた18番パー4。鈴木が先にパーパットを沈めて藤田のプレーを待ったが、藤田も1メートルちょっとをきっちり沈めてパーセーブ。パー71、72ホールのツアー最小ストロークというおまけ付きで、11年35日ぶりとなる今季初優勝を手にした。

敗れて悔いなしの鈴木。今後の活躍に期待

最終日、有利だといわれていたのは鈴木のほうだった。四国・徳島の出身で、舞台となった愛媛・エリエールゴルフクラブ松山は昔から慣れ親しんだコース。優勝こそないものの同大会には2014年から8回出場して2位が5回(3日の2位タイを含む)と常に好スコアをマークしている。

最終日、単独トップで迎えた今年も、これまでの成績を振り返り、「けっして自分の何かが悪かったわけではない。運や流れがなかっただけ。最終日も淡々とプレーをしたい」という言葉を残してスタート。その言葉に違わず、自分のプレーに徹していたような気がした。

勝者と敗者に分かれた原因も、ハッキリとは分析できないように思う。勝負の綾としかいいようがない、それほどの好勝負だったと思う。

鈴木は、試合後のコメントでも、「悔しいけれど、悔いはない」ときっぱり。「(最終日は)自分が今出せる力を18ホール出せたと思います。ここ2年、すごく辛かったけど、やっと楽しく回れたので、もうちょっとゴルフを続けようかなと思いました」と最後は笑顔も見せてくれた。17、19年の賞金女王が、またツアーを盛り上げてくれるに違いない。

藤田さいきのドライバースイング(斜め前方)連続写真

藤田さいきのドライバースイング(斜め前方)連続写真。2022シーズンは、ここまで14試合に出場して単独2位が2回、2位タイが1...

あわせて読みたい

藤田さいきのウェッジスイング(ラフ)連続写真【2022年ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント】

藤田さいきのウェッジスイング(ラフ)連続写真。2022シーズンは、ここまで21試合に出場して単独2位が2回、2位タイが1回、ト...

あわせて読みたい

真鍋雅彦(まなべ・まさひこ)

1957年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。
1986年に退社し、フリーライターとしてナンバー、週刊ベースボール、ラグビーマガジン、近代柔道などで執筆。
ゴルフは、1986年からALBAのライターとして制作に関わり、その後、週刊パーゴルフ、週刊ゴルフダイジェストなどでも執筆。現在はゴルフ雑誌、新聞などで記事を執筆するほか、ゴルフ書籍の制作にも携わっている。