ナイターに出た幽霊?大事な貴重品を確実に守る最高の方法は?
ナイターゴルフの照明はフェアウェイやグリーンなどのメインの場所だけを照らしていて、大きく曲げると、ラフでも暗くてボールを見つけるのは困難です。
実際に体験した話
バブル期のある夏の夜のことです。ナイターゴルフでの出来事。
ラフに落ちたボールを探しに行った仲間が、「ひぇー」と悲鳴を上げました。慌てて向かっていくと、髪を取り乱した女性が暗がりに立っていました。「すみません。ダイヤがたくさん付いた○○の腕時計。落ちていませんでしたか?」消え入りそうな小さな声でした。
仲間は幽霊だと思って悲鳴を上げたようで、一瞬、番町皿屋敷(「いちまーい、にまーい」とお菊さんの怨霊が皿を数える怪談)を思い浮かべました。
後日コースのスタッフに聞いたところ、その女性が落とした腕時計は、有名ブランドが作った世界で一つだけの特注品だったそうです。彼女はその夜、朝まで探し回ったけれど、時計は結局見つかりませんでした。念のため警察に届けを出した数日後、彼女の同伴者がその時計を質屋に持ち込んで犯人確保となり、一件落着だったとか。
ゴルフコースに貴重なものを持ち込んで盗難に遭ったり紛失したりする話は珍しくありませが、昭和、平成、令和と長い間伝承されている、100%被害に遭わない方法は一つだけです。
なくなって困るような貴重品はゴルフコースに持ち込まない!それで全て解決です。
貴重品ボックスの歴史と正しい使い方
貴重品を持ち込むなといわれても、財布など必要不可欠なものはあるわけです。ではどうすればいいのかというと、ゴルフコースが利用を奨励している“貴重品ボックス”の出番です。
バブル期まではフロントに申し出て専用の袋をもらい、貴重品を入れて封をしたのちフロントに預かってもらう仕組みでした。貴重品が入った袋はカギがかかるキャビネットに保管され、料金を支払うときに交換する札(袋とセットになっている)にサインをして戻してもらう方式だったのです。
その後、財布などの小さなものは貴重品専用のロッカーに入れるようになって、徐々に現在の貴重品ボックスのように暗証番号でロックするタイプになり、カードホルダーと連動してセキュリティを高めたものになりました。
安全神話が崩れた貴重品ボックスの話
平成の終わりの頃、全国のゴルフ場で次のような犯罪が発生しました。
犯人は、貴重品ボックスの暗証番号を打ち込むテンキー覆いに小型カメラを仕掛け、駐車場からその映像をチェックします。そして、人気のない時間帯にクラブハウスに入り、貴重品ボックスを次々開けて中身を窃盗する、という組織的な犯罪でした。
そうしたことから、ゴルフ場はセキュリティを強化した貴重品ボックスに変更し、現在はその手の犯罪の被害は耳にしなくなりました。
しかし、貴重品ボックスは不安なので使わない、という人が今もいます。令和のゴルフブームでゴルフを始めた若いゴルファーの中にも、そういう人がいます。
とはいえ、ゴルフコースが推奨している場合は貴重品ボックスを使うのが賢明です。ゴルファー保険に入っているのに、貴重品ボックスを使わなかったため補償されないという事例もあります。
だからといって、「貴重品ボックスに預ければ大丈夫だから、なんでも持っていってOK」ではありません。貴重品ボックスは、財布専用だと割り切って使用するのがオススメです。
一部のゴルフ場は今も昔ながらの貴重品袋方式で、フロントで貴重品を預かってくれます。ごくまれに、数百万円を持ち歩いている現金主義の人がいるからです。そんなにたくさん入る財布はないので、セカンドバックがそのまま財布という使用法になり、普通の貴重品ボックスには収まらないのです。
自己責任のもと、自分で管理する方法もある
「財布以外の貴重品って、他には何がありますか?」
当然の疑問ですが、ゴルフ場の意識とゴルファーの意識にはズレがあるのです。
普通なら、財布以外の貴重品って高額なものが該当するのかぁ、という感じだと思います。しかし、コースのスタッフは日々の経験で知っているのです。人間の弱い心を刺激して出来心を生んでしまう、『欲しくなってしまうもの』は、全て貴重品なのだと。
【貴重品に該当するものの例】
● 最新のスマホ
● 距離計測器
● スマートウォッチ等々
コースのスタッフと話してみると、上記のようなサッと奪って自分の荷物に入れてしまえるものは、たびたび紛失してしまうそうです。当事者が盗難だと110番して、警察が介入することもあるそうです。
ハーフターンで、カートにこれらの貴重品を放置せずに携帯して欲しい、とお願いをしているコースが多いのはそういう事情なのです。
自分の場合、小さな鞄に財布やスマホなど紛失したら困る貴重品を入れて持ち歩き、ゴルフをしている間、クラブハウス内でも目を離さずにいます。完全な自己責任の範囲です。貴重品ボックスを使うときは、財布だけを入れます。
ゴルフコース内で目を離した一瞬の隙に、大切にしていたものが消えてしまった経験をしたことがあります。同じ経験をしないため、させないためにも、残念ですが自己防衛するしかないのです。
盗ませないことも秘やかに意識し、出来心の悲劇が起きないようにするのも、ゴルフを楽しむコツだといえるかもしれません。
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


