日本ゴルフ協会の公式な発表の中に、さり気なく問題と思える一文があった!

2023年7月25日。ゴルフ関連団体の代表的な統括団体である日本ゴルフ協会が「真夏のゴルフを楽しむ皆さんへ」という文章をウェブサイトで公表しました。(http://www.jga.or.jp/jga/jsp/jga_news/news_detail_21914.html

関東ゴルフ連盟の公式競技中、参加者の熱中症による死亡事故が起こり、競技中止になったことがニュースになりました。それに対し、ネットを中心に責任問題や夏場の競技ゴルフについて丁々発止の議論がされている中での発表でした。

内容は、真夏ゴルフをする際に色々と注意しましょう、というものです。対策も具体的に書かれています。正直どこにでも書かれている対策ばかりで、ゴルファーを馬鹿にしているのか、と憤る人もいるだろうなぁと変な心配をしてしまうものでした。

しかし、服装の話が出てきて「あぁ、やっちまったなぁ」と声が出てしまったのです。

「プレー中にシャツを外に出すことで体温の上昇が抑えられると考えられます」(原文のまま)

シャツアウトの奨励は、日本のゴルフ史上初めてです。それも天下の日本ゴルフ協会の公式文章です。3行以上の文章になると、中身をちゃんとは読まない人が多いといわれる昨今。誰にも気付かれずに、修正されるのが最も好ましい展開だよね、と祈るように考えていました。

この話題が変なふうに勘違いされて広がっていくのは、過去のこの国独自の奇妙なドレスコードの発生と被ります。歴史は悪いことだけ繰り返す、のでしょうか。

何重にも書かれた責任回避的な逃げ口上の効力はあるのか?

そもそも、この“真夏ゴルフをしてくれるのは協会として嬉しいけれど、一般的にはこんなことに注意すべきみたいだよ”みたいな中途半端な文章は、どうして今、そしてなんの目的でこのタイミングで発表されたのでしょうか?

いわゆる軽く“炎上”している真夏ゴルフの在り方諸々の消化剤になると思ったのなら、少々首をかしげてしまいたくなるような文章です。

いずれにしても、意図がつかみにくい発表内容であり、真夏の怪談だと考えたほうがしっくりきます。

問題の一文に対して思うこと

問題の一文に話を戻しますが、よく読めば手放しでシャツアウトの奨励をしているのではありません。前文で「ゴルフ場のドレスコードで認められているのであれば」と、ドレスコードの範囲内だと断りがあり、直後の一文では「プレーするゴルフ場に確認の上、実践してください」と、わざわざ挟むようにして書かれています。

ちゃんと読めばわかるはずですが、前後はカットした状態で、シャツアウトが熱中症対策になるんだってさ、という部分だけが広まりそうです。

日本ゴルフ界において、最も権威がある団体の日本ゴルフ協会が、本気で真夏ゴルフからゴルファーを守ろうとするのであれば、もっと覚悟を持った内容にして欲しかったですし、協会として各団体やゴルフ場にも協力をお願いをする、という形式にして欲しかったです。つまり、シャツアウトと心中するぐらいの気持ちがないのであれば、触れるべきではなかったのではないでしょうか。

中途半端な文章になっている最大の理由は、誰のために書かれているのかがわかりづらく、情報に責任を持ちたくない雰囲気が漂っているからだと言わざるをえません。

シャツアウト低温説は、科学的に立証されていない

シャツアウトしたほうが体温が4℃も下がる、というサーモグラフィの証拠映像付きのツイートがたくさんリツイートされて、「夏のスポーツはシャツアウトという指導をしませんか? 」という学校の先生たちへの投げかけが話題になったのは2022年の夏でした。

テレビなどのニュースでも取り上げられましたが、急激に消えていきました。理由は、科学的なエビデンスに欠けていたからです。同様の実験をしても、同じ結果が出ないのです。また、実際に自分もゴルフコースでシャツインとシャツアウトで比較してみましたが、体感できるほどの温度差は出ませんでした。

スポーツメーカーのウェア開発スタッフに取材をしましたが、現在の素材とウェアの形であれば、シャツインとシャツアウトで4℃以上も差が出ない、と断言していました。冬のダウンウェアのように暖まった空気をまとって防寒している場合は、シャツインが空気を逃がさないので有効らしいのですが、夏はハッキリと体感できるほどシャツインとシャツアウトに温度差は生まれない、ということでした。

シャツアウトが涼しいというのはどうやら実証されていないらしい、という話は昨年かなり早い時期にわかっていたことで、色々なところで話題になりました。ゴルフ関係者はそれを知らなかったのかなと、疑問に思います。

東西に分けられていたドイツが再び統一できたのは一人の人間の勘違いがきっけかで、ベルリンの壁が崩壊したからです。もちろん、それ以前に複数の大きな流れがドイツ統一に向かっていて、きっかけ待ちだったという歴史があったことも事実ですが、勘違いがなければ統一は何年も後のことになったと考えられています。

色々な要因や思惑が絡まって、突如、出現した「夏ゴルフのシャツアウト奨励事件」は、どんなオチになるのか。時代の生き証人としてじっくりと見極めるのもゴルフの内なのです。

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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