ゴルフ版ベルリンの壁崩壊となるか?2023年夏、ゴルファーのシャツアウト奨励発言、 真相はいかに…
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第80回
ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
写真提供/篠原嗣典
日本ゴルフ協会の公式な発表の中に、さり気なく問題と思える一文があった!
2023年7月25日。ゴルフ関連団体の代表的な統括団体である日本ゴルフ協会が「真夏のゴルフを楽しむ皆さんへ」という文章をウェブサイトで公表しました。(http://www.jga.or.jp/jga/jsp/jga_news/news_detail_21914.html)
関東ゴルフ連盟の公式競技中、参加者の熱中症による死亡事故が起こり、競技中止になったことがニュースになりました。それに対し、ネットを中心に責任問題や夏場の競技ゴルフについて丁々発止の議論がされている中での発表でした。
内容は、真夏ゴルフをする際に色々と注意しましょう、というものです。対策も具体的に書かれています。正直どこにでも書かれている対策ばかりで、ゴルファーを馬鹿にしているのか、と憤る人もいるだろうなぁと変な心配をしてしまうものでした。
しかし、服装の話が出てきて「あぁ、やっちまったなぁ」と声が出てしまったのです。
「プレー中にシャツを外に出すことで体温の上昇が抑えられると考えられます」(原文のまま)
シャツアウトの奨励は、日本のゴルフ史上初めてです。それも天下の日本ゴルフ協会の公式文章です。3行以上の文章になると、中身をちゃんとは読まない人が多いといわれる昨今。誰にも気付かれずに、修正されるのが最も好ましい展開だよね、と祈るように考えていました。
この話題が変なふうに勘違いされて広がっていくのは、過去のこの国独自の奇妙なドレスコードの発生と被ります。歴史は悪いことだけ繰り返す、のでしょうか。
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何重にも書かれた責任回避的な逃げ口上の効力はあるのか?
そもそも、この“真夏ゴルフをしてくれるのは協会として嬉しいけれど、一般的にはこんなことに注意すべきみたいだよ”みたいな中途半端な文章は、どうして今、そしてなんの目的でこのタイミングで発表されたのでしょうか?
いわゆる軽く“炎上”している真夏ゴルフの在り方諸々の消化剤になると思ったのなら、少々首をかしげてしまいたくなるような文章です。
いずれにしても、意図がつかみにくい発表内容であり、真夏の怪談だと考えたほうがしっくりきます。
問題の一文に対して思うこと
問題の一文に話を戻しますが、よく読めば手放しでシャツアウトの奨励をしているのではありません。前文で「ゴルフ場のドレスコードで認められているのであれば」と、ドレスコードの範囲内だと断りがあり、直後の一文では「プレーするゴルフ場に確認の上、実践してください」と、わざわざ挟むようにして書かれています。
ちゃんと読めばわかるはずですが、前後はカットした状態で、シャツアウトが熱中症対策になるんだってさ、という部分だけが広まりそうです。
日本ゴルフ界において、最も権威がある団体の日本ゴルフ協会が、本気で真夏ゴルフからゴルファーを守ろうとするのであれば、もっと覚悟を持った内容にして欲しかったですし、協会として各団体やゴルフ場にも協力をお願いをする、という形式にして欲しかったです。つまり、シャツアウトと心中するぐらいの気持ちがないのであれば、触れるべきではなかったのではないでしょうか。
中途半端な文章になっている最大の理由は、誰のために書かれているのかがわかりづらく、情報に責任を持ちたくない雰囲気が漂っているからだと言わざるをえません。
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