タイガーが求めた『ディープ感』は『フェースへの乗り感』と『軟らかな打音』のこと

タイガーが求める『ディープ感』を日本語で言うならフェースへの『乗り感』。2017年から使用契約を結び、「ツアーB XS」を使ってきた彼が「欲を言えばアプローチの領域でもう少しディープ感が欲しい」と語ったことが発端となり改良が始まった。

『ディープ感』も『乗り感』も感覚的な表現だが、パソコンのマウスでクリックする時のような“クリッキー”な音を好まないタイガー。
それとは真逆の、アプローチでフェースに長く乗る感覚と、軟らかく静かな打音とイメージしていただけばいいだろう。ちなみに今回タイガーは、「ツアー B X」と「ツアーB XS」の両モデルの開発に関与したそうだ。

「ツアーB X」は正統進化。良いところは残し、さらに良くなる部分を突き詰めた

ではまず「ツアーB X」から石井のインプレッションを聞いてみよう。

「僕はもともとツアーB Xのユーザーなのですが、前作と比べると、インパクトの粘り感というか、粘り気というか、打った時に“ムギュ”というか、“むちゅっ”というか、ほのかな軟らかさを感じました。擬音ばかりで恐縮ですが、もしかしたらこれがタイガー・ウッズのリクエストを受けてブリヂストンが実現した“ディープ感”なのかもしれません。いずれにしてもフィールが良くなったので、とても好感がもてました。

もともとXは飛ぶイメージですが、練習場で打ったドライバーショットのスピン量、ボール初速とも相変わらず適切で、この寒い時期(試打時の気温は5度)のコンディションとしては飛んでいました。打点がずれてスピンが増減してもボールのせいではなく、技術の問題だということがわかります。

インパクトでちょっと粘り気があってフェースに乗る感じが出たせいで、ドライバーもアイアンも前作とは打音が違います。粘っこくなったぶん静か。打音との相乗効果で、より軟らかく感じている部分もあると思います。

というのも、ボールの硬度は変わらなくても、人間には感性や感覚があるので打音が静かだと実際より軟らかく感じるのです。よく打感と言いますが、ほとんどは音に影響されていて、手に伝わる衝撃より耳から入る音で硬軟を判断していると思います。XSとの打音の違いは、誰が聞いてもわかるくらいです。

もちろんこれもネガティブな要素ではありません。そういう意味で言うとXは正統な進化を遂げています。もともと良かった部分は変えずに残し、さらに良くなりそうなところを突き詰めていくことにこだわった。あらためてすごいと思いました」(石井良介)

「ツアーB X」については「クリッキーな感じはなく、ショートゲームのコントロール性能が向上している。ブリヂストンの技術者たちはまさに天才。彼らが作ってくれたボールで戦うのが楽しみだ」とタイガーも太鼓判。

またジェイソン・デイは「風に強い弾道が出て横風にも強い。40ヤード以内のアプローチも打感が軟らかく好感触」と評価している。

さらに2023年の国内シニアツアーの賞金王・宮本勝昌は「前のXより若干スピン量が減って打球が強くなりドライバーが楽になりました」とコメント。実際、昨年末のメディア向けの試打会では、気温5度を下回る寒空の下でも初速70m/s超えをマーク。ヘッドスピードが落ちているのに初速が出るXの高初速性能を高く買っている。

軟らかさが際立ち、打音も静かなのに飛距離性能がアップした「ツアーB XS」

XSはさらに良くなったと感じました。そもそも良いのはわかっていましたが、僕は基本的にスピン量が多いタイプのゴルファー。カバーの軟らかいボールはドライバーショットでスピン量が増えすぎて吹け上がるという先入観があり、実際にアゲンストが強いホールで球がフワッと飛んで前に行かない経験を何度もしてきました。コアが軟らかければ潰れてスピンが減るとわかっていながら、どうしてもカバーの軟らかさでスピンが入って飛ばないと思っていたのです。

ところがアゲンストのホールでXSを打ったところ、ドライバーの飛距離がXとほぼ変わりませんでした。セカンド地点では9番アイアンで138ヤード打ちましたが、XもXSもほぼ同じ場所に落ちていた。明らかに違うボールを打っているのに結果が変わらない。これはとても新鮮でしたね。

で、“どちらがいいのか?”となった時に、XSの方が軟らかくてフィーリングがいいので、ずっとXを使ってきた身としては、“これは考えちゃうぞ”となってしまいました。

新しいXSは軟らかさが際立っていて打音も静かです。ドライバーで多少打感のいい悪いはあってもスコアには直結しませんが、グリーン周りから思ったところに止めたり、アプローチで打球の高さを揃えることはスコアに敏感に響きますから、飛距離性能が同じならフィーリングのいいボールを選びたいと思ったわけです」

石井の証言は、宮本のボールデータによっても裏付けられている。「ツアーB XS」でも初速は70.6m/sで、トータル飛距離は279.5ヤード。「Xのほうが飛ぶイメージがあったけど、XSも今までのイメージより飛んでいますね」との感想を引き出した。また「以前のXSは“感触がない”くらい軟らかかったのに、いい手応えがある。感触が軟らかすぎると手応えを求めて力が入りやすいけれど、それもなさそう」とも話している。

手応えで“外径”を感じるボールが好きか、軟らかい感じが好きかで選ぶ

「アマチュアゴルファーがXかXS、どちらを選ぶかとなった場合、例えばグリーン周りのアプローチでボールをフェースに乗せて操りたい、あるいは“球遊び”がしたい人は、間違いなくXSだと思います。

ただ、今回のXもウエッジでフェースに乗ってくる感じはある。ですから、ドライバーでもアイアンでも、打った時に手応えで外径を感じるボールが好きなのか、軟らかい感じが好きなのかで選べばいいと思います。

新しいXとXSを打ってみると、人間のミスを全て加味したら、もはや飛距離の差はないと感じました。もちろんデータを厳密に精査すればXの方が飛ぶかもしれませんが、練習場でもラウンドでも大きくは変わりませんでした。タイガーさんのように、いつもちゃんと当たる人ならXが前に行くと思いますが、それにしても20ヤード飛ぶわけではありません。

強いて言うなら、硬いボールはインパクトした瞬間に右にスッポ抜けていくイメージが強く、軟らかいボールの方がつかまってくれるイメージがある。そう考えた時に、打球が右に行って困っているならXSで修正される可能性があるし、チーピンが怖い人はXを使った方が左に飛ぶケースが減るかもしれません。
また、20ヤードくらいからウエッジでアプローチする時に、転がす方が寄るイメージが出るならX、スピンをかけてボールを止めたいならXSの方がイメージは出やすいと思います」

今作の進化ポイントは2つ。コントロール性能と飛び性能だ。前者の向上に寄与しているのは、リアクティブiQ・ウレタンカバー。ウレタンカバーに新たな制音・衝撃吸収材を加えることで「乗り感」と軟らかな打音が具現化され、特にアプローチショットでコントロール性能がアップしている。

容器の中で沈んでいるのが新しく採用された高剛性・高比重のインナーカバー素材。

表面はカバーとの相乗効果で高い耐久性を発揮するスリップレス・バイトコーティング。ディンプルはシームレス330ディアルディンプルとなっている。

一方、飛び性能については、ハイスピード・インナーカバーによるところが大。インナーカバーの剛性と比重を高めることで高初速とフルショット時の低スピン化が促進され、風に強い伸びのある弾道が出るようになった。
同時にアイアンショットでのスピンも適正化され飛距離のばらつきが減少されるということだ。コアにはハイドロLSコアが採用されている。

トータルで見たら「ツアーB X/XS」が僕にとっての一番

「今回のXは良くなりましたが、打ち比べたらXSもすごく魅力的だったので、Xユーザーとしては、どちらにしようか本気で迷っています。たぶんXをオーダーすることになると思いますが、それとは別にXSも試したい。

もともと前々作(2020年モデル)から前作(2022年モデル)にスイッチした時にXの打感がすごく良くなって、それ以降は何の不満もなく、これでいいと思ってずっと使い続けてきました。もし“このボールを替えるならどうして欲しいですか?”と聞かれたら、“50ヤードないし30ヤード以下がXSになって、それより上はXのままでいいです”と言っていたのですが、今作は2つともその方向に進化しています。

自分に“コレ”というボールがあると、それをベースに選ぶことになりますから、必然的に”慣れ”の要素が基準になってきます。例えばアプローチで同じ打ち方をしているのに打球の高さが変わると、飛ぶ距離や止まり方も変わってイメージが出なくなる。その意味では、本来ボールのスイッチは難しいと思うんです。でも、新しいツアーB X/XSだったら問題なく替えられるし、良くなったことも実感できるでしょう。

パットについて言及すると、僕はフェースインサートが金属なので基本的には軟かいボールが好きですが、球離れが適度なのでXを使っています。ただ、今作はどちらもフィーリングが良かった。前作よりやや軟らかくてパターでも“むちゅっ”という感じがあります。

もっとも、XSの打感はもともと良かったので、ドライバーショットの潰れ感が減ってしっかりさが出た感じ。だからXと比べてドライバーの飛距離に遜色がないのでしょう。

ツアーB X/XSは世界のトッププロが使っているボール。それは、どんなクラブとも相性が良いということ。それってよく考えたら、すごいことですよね。今あるボールの中で、僕にとっては間違いなくナンバーワンのボールです」




テスター:石井良介
1981年生まれ。PGAティーチングプロA級。You tube「試打ラボしだるTV」が人気。早くからトラックマンを活用したレッスンを開始。高い経験値と分析力で正しいスイング、正しいギアへと導く指導に定評がある。