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蟬川泰果の2023最終戦「ボロボロだったけど、最後に勝てて良かった」

プロが分析するプロの心技体「ゴルフ 日本シリーズ JTカップ」

2024/01/21 ゴルフサプリ編集部

ゴルフ日本シリーズJTカップ

ゴルフ日本シリーズJTカップ男子ツアーの最終戦は、最終日の残り2ホールで中島啓太、金谷拓実、蟬川泰果という2023年シーズンの賞金ランキングトップ3がトップタイに並ぶ展開になった。どんな思いで最終戦の最後を戦っていたのか。

GOLF TODAY本誌 No.620/135〜137ページより
取材・構成・文/野中真一 撮影/相田克己

国内男子ツアー。それぞれの最終戦

ゴルフ日本シリーズJTカップ
最終日はトップタイに中島啓太と蟬川泰果が並び、2打差で石川遼と金谷拓実が追いかける展開。最終日の風について石川遼は、「今日は難しいほうの南風が吹いた。だから18番が難しくなるだろうと思った」と語る。その風は最後まで優勝争いをもつれさせることになる。

3日目に石川 遼が猛追!最終日の後半は「負の連鎖」に

3日目の主役は石川遼だった。1イーグル、7バーディ、1ボギーの「62」を出して、トップと2打差の3位タイに浮上。ラウンド後には、

「ラッキーもありましたけど、今年のベストスコア。最終日は啓太、拓実、泰果がいて、その中に自分もいる。みんな上位にいるというのが今年はなかったので、明日の後半まで優勝争いできればと思います」

最終日の前半にスコアを伸ばしたのは石川 遼。前半9ホールを終えた時点でトップの中島、蟬川に1打差まで迫る。しかし、石川は11番でティショットを曲げてから突然リズムが悪くなり、優勝争いから脱落。試合後に話を聞くと、

「11番のティショットで逆球が出てから、ショットがフワフワしてしまってリズムが崩れてしまった。今週はずっとフェードが良かった。だから11番もフェードで攻めたら逆球が出てしまった」

最終戦はどんな気持ちで戦っていたのか?

「優勝とか2位とかよりも、自分の中の納得度が100%で終わりたかったけれど、それができなくてすごく悔しい。でもショットやパッティングは昨年(2022年)よりすごく良くなったと思います」

石川 遼

「今週はフェードがすごく良かった。でも後半の11番で逆球が出てから…」
石川 遼


「前半は悪くなかったけれど、後半はリズムが崩れて、そこから耐えるだけのゴルフになってしまった」(石川)

最終組は中島、蟬川もバーディパットが決まらず、スコアが停滞。その状況でトップとの差を縮めていったのが金谷だった。後半だけで3つスコアを伸ばして17番ホールを終えた時点でトップタイに。そして最大の難所であり、名物の18番パー3でも約2.5メートルのバーディチャンスにつけた。入れば単独トップに立つ1打だったが、わずかに右方向に外れた。

金谷拓実

「最後まで諦めずにプレーできたから17番でトップタイに。18番を決めたかった」
金谷拓実


「最後まで諦めずにプレーできたけど、前半で簡単なアプローチをミスして2つのボギーがあったのが悔しい」(金谷)

18番グリーンを囲むギャラリーの歓声や溜息は、17番グリーンをプレーする最終組にも聞こえていた。17番のパー5は最もバーティがとりやすいチャンスホール。蟬川、中島は両者とも約1.5メートルのバーディチャンスにつけていた。最初に打った蟬川はきっちり沈めて15アンダー。しかし、中島はカップに蹴られてパー。この1打について中島は

「スライスラインは読めていましたが、タッチが強くなってしまった。17番だけの問題ではなく、後半からタッチが強くなっていて、12番、13番、16番も自分のフィーリングより強かった。だから、流れが良くなかったです」

2週間後に米国ツアーのQTに出場することが決まっていた中島は、

「出発まで1週間なので、今からできることは少ないのですが、良い準備をしてもう1試合やるつもりで頑張ります」

中島啓太

「17番だけではなく、後半は3つくらい、タッチが全然合わないパットがありました」
中島啓太


「丁寧にプレーしていたけど、後半はミドルパットが強く打ちすぎていたのが、17番のミスパットにつながってしまった」

中島は最終戦を終えても大事な“試合”が残っている感覚だったのだろう。1打差の単独トップで最終18番を迎えた蟬川は、前日のダブルボギーを意識しすぎてティショットをショート。試合後に話を聞くと、

17番コース

パー5でありながら最終日の平均スコアは4.5と最も難易度が低い17番。距離が短いので、ほとんどの選手がツーオンできる。

「18番の1打目はすごく緊張していました。3日目にオーバーしたので、少し手前から行くつもりでしたが、あそこまでショートするとは思わなかった。2打目地点はアップヒルでピンが近いというタフな状況でした。もちろんパーを狙うつもりでしたけれどダブルボギーもあるという状況でした」

アプローチは勝負をかけた。

「ダブルボギーもある状況でしたけれど、思いっきりピンを攻めた。一か八かの賭けでした」

結果は約50センチにつけるナイスアプローチ。それでもラインは難しく、慎重に時間をかけて読んだ。

「簡単ではなかったですし、もし外したら返しのパットは絶対に入らないラインでした」

ギャラリーにまで緊張感が伝わるパーパットだったが、それを沈めて優勝。蟬川の目には涙があった。4月の関西オープン以来のプロ2勝目について、

「本当に苦しかった。トレーニングしても練習しても上手くいかない時期が長かった。10月の『日本オープン』の頃は一番投げ出したくなるくらい悩んでいました。やっぱり去年の自分と比較してしまう。優勝争いはアマチュアのときはそんなに緊張していませんでしたが、プロになってからは緊張します」

蟬川泰果

「後半はリーダーズボードを初めてみてから急に緊張してきた」
蟬川泰果

最終組について解説していた田中秀道にこの試合を振り返ってもらうと、

「優勝が決まったのは17番の蟬川選手のバーディだと思いますが、考えてみると14番が大きかった。あのホールも後半ではチャンスホールの一つで蟬川選手はバーディでしたが、中島選手はパー。トップタイで並んでいても、蟬川選手が半歩くらいリードしている感じでした。」

田中秀道

「17番で決めた蟬川選手のバーディパットがウィニングパットですが、その布石は14番にあった」
田中秀道


1971年生まれ。日本ツアーでは「日本オープン」優勝を含む10勝をマーク。2002年以降、米国ツアーにも挑戦。現在はツアーの解説者としても活躍。

2024年は米国ツアーもしくは欧州ツアーに挑戦することを決めていた中島は18番グリーンで日本のファンに感謝の気持ちが伝わる深いお辞儀をしていた。それが、賞金王のラストシーンだった。

  • 蟬川泰果
  • 蟬川泰果

「今年の10月頃は精神的にボロボロだったので、最後に勝てて良かった」
蟬川泰果

「2024年も主戦場は日本ツアーになると思いますが、海外ツアーでも1勝することを目標にしたいと今日勝って思いました(笑)」

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