飛距離を取り戻したいアマチュアにすすめたいアイアン用カーボン

「ツアープロはグリーンを狙うショットで落下角を重視している」ところから開発コンセプトが組まれた狙って、止められる球が打てるところが魅力のTRAVIL。70g台がラインナップに加わった。最も重いモデルは120g台のTRAVIL IRON 115。

これまでアイアン用のカーボンシャフトは、スチールより軽くてトルクが大きく、しなりもあるイメージでしたが、ここ10年くらいはスチールと同程度の重さがある、いわゆる重量系カーボンと呼ばれるものが主流になっています。そもそもは女子プロが使い始めたのがきっかけです。

重量系カーボンはスチールよりもボールを弾いてくれるので飛距離が出ます。ただ、トルクが大きすぎるので曲がりやすい一面もある。そこが今シャフトメーカーに問われているところで、どうやって曲げずにタテの距離を安定させるかが課題になっています。一時期は男子プロの使用者も増えまたが、今は減少傾向にあります。これはやはり曲がるから。男子プロのレベルだと、まだスチールシャフトには勝てないのかもしれません。プロは飛びすぎてもよくないですからね。

でも、アマチュアゴルファーに関して言えば、私は積極的に取り入れた方がいいと思います。換える目安はやはり飛距離が一番。加齢やスイングに問題があるなど原因はさまざまですが、飛距離を取り戻したい人は試してみた方がいい。ましてトレーニングはしたくない、スイングもいじりたくない、という人ならなおさら。こういう人には“カーボンの魔法”が効くので頼るべき。5~10ヤードは飛ぶようになるので絶対に楽です。

ただ、カーボンには向き不向きがあります。クルマで言えばスチールはマニュアル車でカーボンはオートマ車。クラブを操作したい人はスチール、自分では何もしたくない人はカーボンが向いています。ヘッドスピードは関係なく、速くてもカーボンが合う人はいるし、遅くてもスチールが合う人もいます。スイングタイプで言うなら、どれだけ腕を使うか。操作するとは腕を使うことなので、こちらはスチールタイプ。器用さも関係しますが、スチールとカーボンはタイミングが根本的に違うので、できれば同じ重さのシャフトで打ち比べたいところです。最終的には直感、8割は本人のフィーリングで決めていいと思います。同じ重量、同じ硬さのスチールとカーボンで、カーボンの方がいいなと感じたら是非使ってほしいです。

アイアン用カーボンシャフトは低重心ヘッドとの相性がいい

ヘッドとの相性もあって、低重心のヘッドはカーボン、高重心ならスチールが向きます。マッスルバックとカーボンの組み合わせを目にしないのは相性がよくないからです。カーボンはよくしなるので、スイングで最終的に起こる「しなり返り」も大きくなります。しなり返るとヘッドは浮きやすいのですが、その状態で高重心ヘッドの打点にボールを当てるのは難しい。打点が下めにある低重心の方が当たりやすいので、ポケットキャビティやデカヘッドと相性がいいと言えます。加えてアマチュアの方はすくい打ちになりやすく、そうなると、よりヘッドが浮いて当たる。総じてカーボンはロフトを立てて当てにくいのです。ただ、ストロングロフトのアイアンなら幾分相殺されるので、ヘッドによってはカーボンシャフトでもイケるでしょう。

アマチュアゴルファーにとってたくさんのメリットがあるアイアン用カーボンシャフトですが、その割に普及していないのには、いくつかの理由があります。一つは種類がありすぎることです。前回お話ししたように、スチールには三大巨頭がありますが、カーボンにはなく今や乱立状態。いくらでも重量を決めて作れるため探せば絶対にドンピシャのものがあるのですが、融通がきくぶん多すぎで選びきれない。選択肢が多すぎるあまり沼になっていて、ある意味一番もったいない状態になっています。メーカーからしても、当たれば数が出るので売りたいカテゴリーだと思うんですけどね。

「カーボン=シニア」という思い込みも普及を妨げています。私もカーボンの方が明らかにショットデータがいいお客さんにすすめることがよくありますが「みんなに笑われるから」と踏み切れない人が多い。プライドの問題ですね。また、スチールに比べると重厚感がなく、打感も軽くなるので上級者は馴染めないようですが、これらも慣れで、気にしない人は何の問題もありません。

これは余談になりますが、もし先側がスチールと同じくらいしっかりしたカーボンシャフトができたら、男子プロも使うと思います。男子プロがカーボンを使わない一番の理由は先側が弱いこと。いくら元調子でも先側が動いて捻れるのが嫌なんです。その意味では先端がスチールの複合系シャフトはありだと思います。また、カーボンにはスチールシャフトにあるステップがありません。何でもステップは、ゴルフ界でトップ3に入るくらいの大発明ということ。ステップレスのスチールシャフトもありましたが、いつの間にか消えました。まあ、シャフトの中にステップがあって見えなかっただけらしいですが、いずれにしても先側が動きやすかった。トゥルーテンパーのプロジェクトXなどは、まだ好きなプロもいるようですが、もしかしたらこれが一番カーボンに近いスチールなのかもしれません。

合うものは絶対あるのにアマチュアと結びつける手段に乏しい

アマチュアの方が参考にできるのは、女子プロが使っているカーボンだと思います。渋野日向子選手が使っている藤倉コンポジットのMCIや、ホンマ契約のプロが多く使うヴィザードIB-WFなどです。後者は私もアマチュアの方にすすめています。ホンマの重量系カーボンシャフトはかなりクォリティが高い。断っておきますが、私はホンマユーザーですが、契約プロではないので“大人の事情”はありません。カオス状態のアイアン用カーボンシャフトですが、合うものは絶対にあって、それとアマチュアゴルファーを結びつける手段に乏しいのが現状なのです。

セッティングについて言えば、ロングアイアンはカーボン、ミドルアイアンは複合、ショートアイアン以下はスチール、というのも現行ではありだと思います。ダメなのはユーティリティがスチールで、アイアンがカーボンという組み合わせ。重量フローの問題でアイアンの方が軽くなってしまいます。なお、ウェッジについてはスチールに近いカーボンが生まれたらありだと思いますが、まだその域には至っていません。ウエッジは先が弱いと致命的なので、現段階ではウェッジはスチールがいいと思います。飛んじゃいますからね。でも、シニアで飛ばない方はカーボンでもいい。ウェッジ専用のカーボンもあるので試してみるといいでしょう。

交換する場合は、ちゃんとフィッティングして、できれば何軒か行った方がいい。メーカーの直営店だと贔屓のモデルに偏るので、それも込みで何軒か行って、できれば打ち比べ、究極はレンタルして練習場、コースで打ちたいですが、さすがにそこまでは難しいですかね。

でも、カーボンは壊れない限り一生使えます。スチールは錆びるので寿命があります。プロだと半年から1年の人もいる。アマチュアの方はメンテナンスすれば2~3年は大丈夫ですが、それでも劣化はして、表面に錆があったら中は100%錆びています。お財布事情もありますが5~10年経っているスチールなら、いい加減換えないといけません。もしあなたが該当するなら、ここでカーボンを考えてもいいのではないでしょうか。




吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・表参道の「表参道ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。





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