ウエッジの構成と飛びすぎ問題のクリアが導入の大前提
のっけから私の勝手な想像で恐縮ですが、ストロングロフトは見栄っ張りさんのアイアンかな、なんて思っています。例えばパー3でライバルに「お前7番!?オレ9番!」みたいに、ドヤ顔するためのアイテムだったりする。なんせ今のストロングロフトはノーマルロフトに比べて2番手ぶんくらいロフトが立っていますからね。
その点、海外では日本ほどストロングロフトがなく、アイアンについては王道が好きなようです。日本人ゴルファーの方がミーハーなのかもしれません。とはいえ、ストロングロフトを否定する気は全くありません。ただ、導入するにあたって気をつけなければいけないことがいくつかありますので、まずはそこから。
一つは前後のクラブ構成です。上の番手については、ストロングロフトの一番長い番手で何ヤード飛ぶかを正確に把握できていれば問題ありません。ユーティリティやショートウッドのバリエーションでいくらでも対応できるからです。問題はウエッジで、例えばストロングロフトで一番下の番手がノーマルロフトより2番手ぶん立つと、ピッチングウエッジ(以下PW)のロフトは通常の8番アイアン相当のロフトになります。そうなるとアプローチウエッジや10番、11番アイアンなどを入れてロフトの空白を埋めなければなりませんが、それらにしてもロフトが44度程度はありますから、ウエッジを4本も5本も入れなければなりません。
もう一つは飛びすぎること。常時90台で回れるゴルファーは、ある程度ショットが打てる人ですが、そのレベルの人だと飛ぶ時と飛ばない時で10ヤード以上も差が出たりします。常時80台を目指すとなるともっと大変。ストロングロフトの長い番手はロフトの刻み方が等しくないからです。例えば5番で21度、6番が23度、7番が26度といったように等間隔でない。そうなると飛距離が10ヤード刻みになりません。特に上手くなって飛ぶようになってきた人が使うと、7番で150ヤード、6番で165ヤード、5番で185ヤードとかになってギャップが広がってしまうのです。タテ距離を安定させたい観点からすると、使い続けるのは難しいと思います。
私の考え方では、200ヤード以内については10ヤード刻みで打てる番手構成にしておきたい。100ヤード以内はフルスイングしないとするなら、200~100ヤードはフルスイングで10ヤードごとに刻めるようにする。180ヤード以下をアイアンで賄うとしたら、その間を10ヤード刻みでガチガチに固めるのが上手くなる人の発想なんです。もちろん同一の番手で距離を打ち分けてもいいですが、アマチュアの方には難しいので、クラブに頼れるものなら頼りたいのです。
ストロングロフトを使った瞬間に成果が出まくる人がいる!
ネガティブ情報が先行してしまいました。では、ストロングロフトの正しい使い方をいくつか挙げましょう。まずは自分がどうしても打てず、弱点になっているクラブをカバーすることです。それが5、6番だったら、それだけストロングロフトにするなど、積極的な逃げ道として使うのは有効だと思います。一つの目安として、半年使って悩んでも当たらないクラブは、この先一生当たりません。ずっと当たらないままだけどバッグに入ったままのアイアンがある、という人は、それに代わる武器として導入を考えてもいいと思います。
ついでに言っておくと、クラブを替える場合には、伸び悩んでいる原因が何かを分析することが不可欠。
【1】 ちゃんと当たらない
【2】 飛ばない
【3】 曲がる
大きくこの3つに分け、どれが主な原因かで対策を講じましょう。
【1】なら大きいヘッドにする。アイアンにはマッスルバック、ハーフキャビティ、キャビティ、ポケットキャビティ、デカヘッド、ウッド系などがありますが1~2ランク変える。いま使っているのがハーフキャビティならポケットキャビにするといった具合です。ちなみにドライバーのヘッドスピードが40m/s前後の平均的なアマチュアゴルファーに一番合うのはポケキャビ。打球が上がるし芯も広い。ゴルファーをほどよく甘やかしてくれて自信もつきますから伸び悩んでいる人にピッタリで、8割の人はアイアンのパフォーマンスが上がります。
【2】の飛ばない人はシャフトを替える。アイアンで飛ばないのは、よほどシャフトが合っていません。大体の原因は重いか硬いかなので、軽くして軟らかくすると解決します。ただし、スチールシャフトを使っている場合、「NSプロ950」で飛ばないなら、それ以上軽くしても変わらない可能性が高いのでカーボンを考えた方がいいでしょう。
【3】の曲がる人の場合、多くはスイングが原因ですが、クラブに原因を求めるならトルク。トルクが少なめのシャフトにすると曲がりが減ります。カーボンならスチールに、「モーダス120」なら「ダイナミックゴールド」に換えるといった感じで、捻れづらいシャフトにする。結果的に硬めにもなります。曲がるのはハードヒッターの人が多いのでスペックを上げる感じですね。
ストロングロフトのアイアンは、ある意味“夢のクラブ”です。これまでオーバースペックのクラブ(例えば誰かのお下がりなど)を使って上手くいかず、フィッティングもしたことがない人なら、ストロングロフトを使った瞬間に成果が出まくる。喜びも開放感も味わえるでしょう。クラブが合わなくて上手くなれないのに「悪いのは自分。自分が頑張らなければ!」という昭和な人がいまだにいますが、そんな人からしたら同じアイアンとは思えないくらい。スイング改造ができない人、フィジカル的に難しい人、いまの状態のままクラブで何とかしたい人にとっては素晴らしテクノロジーなので喜んでおすすめします。
また、ストロングロフトは妄想のクラブでもあります。ちょっと言い過ぎかもしれませんが、“最後の砦”みたいなキャラクターでもある。どうしてもクラブに甘やかされますから、正直、今後競技に出たいなど向上心あふれるゴルファーにはおすすめしません。よく「上手くなりたければマッスルバックを使えばいい」などと言われますが、一理あってマッスルバックは難しいけれどゴルファーを育てます。覚悟して修行すれば1年後には全然違って、ストロングロフトを使った人よりマッスルを使った人の方が上手くなっているでしょう。ただ、途中で心が折れるので塩梅が難しい。そう考えると、ちょっと小さめのキャビティでもいいかもしれません。マッスルバックでゴルフが嫌いになったら意味がないですから。
吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・表参道の「表参道ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。




