パッティングしたボールがなぜカップを外れたのか? 理論的な理解が上達を加速させる!
「理論ゴルフ学」で解析! 共通イメージが作れる“時計文字盤理論”とは?|清永教授からの挑戦状 Vol.13
ゴルフの原理原則を疑い、分析した清永教授の常識を覆し、上達スピードが速まる理論を紹介!
ゴルフトゥデイ本誌 632号/102~103ページより
解説/清永 明 写真/Getty Images
〈問題〉
ミスパットの原因を追究する際パッティングを何分割すると分類しやすいでしょうか?
半世紀に渡り研究した清永教授の集大成?
GT 先生、新年に相応しい理論のまとめをつくられたと聞きました!
清永 はい、名付けて「理論ゴルフ学」!
GT 「理論ゴルフ学」……?
清永 「理論物理学」という言葉をAIで検索しました。これは実験物理学と共に物理学を2つに分ける学問で、理論研究を主としています。自然現象を記述する法則(物の理:もののことわり)を明らかにし、実験で検証可能な予言を行うことを目的としています。
GT なるほど。
清永 個々の実験事実や経験法則から理論体系を構築し、それによって個々の現象を説明したり、新しい未知の現象を予見したりします。研究には、紙と鉛筆や計算機によるシミュレーションなどが用いられます。
GT 調べると研究対象には原子内部の素粒子や超新星爆発など、この世界に存在するすべてのモノが挙げられ、研究分野には、素粒子理論、宇宙論、物性理論などがあるとなっています。
清永 理論物理学と似た学問に実験物理学があり、こちらは実験装置を使って自然に積極的に問いかけてその振る舞いを調べるのが特徴です。
GT なぜ「理論ゴルフ学」を提唱しようと?
清永 まずこの「理論物理学」の概要を参考にしました。つまりゴルフというスポーツで起こっている様々な現象について、理論的なモデルや理論的仮説(主に数理科学的な仮定)を基に理論を構成し、既知の経験的事実(ゴルフの常識)や実験事実(観測や観察の結果)などを説明し、かつ未知の現象に対しても正確でかつ合理的に予見できる法則を明らかにする。
GT 僕ら一般のゴルファーでも「それ、なんとなくそうじゃないかと思っていた」「ゴルフってなんでいつもそうなるのだろう?」と感覚的に知っていることをきちんと説明してくれるということでしょうか?
清永 その通り! そして第三者が実験で検証できるような予言を行うことを目的にしています。
GT まさに先生が研究してきたことではないですか!
清永 半世紀に亘って行なってきたゴルフ研究活動そのものです。2025年はこの連載を通じて、この称号を受けるのに相応しいのか否かを世に問いたいと思います。
ショートパットのミス時の判断と対応策
時計文字盤理論の覚えるべき定義
清永 まずは「時計文字盤理論」の定義を知ってもらわねばなりません。
GT 時計文字盤理論ですか。
清永 ゴルフ場のグリーン上でボールのコロがりを客観的かつ科学的に分析しようとすれば、カップとボールの位置関係を規定する何かが必要です。
GT 確かに……。
清永 その位置関係を表現する型として時計文字盤を利用します。ある一定の傾斜を持つグリーン面の一点(例えばカップの中心点)を中心に円を描き、その円を時計に見立てます。仮想する円周線上で一番高い地点を12時、一番低い地点を6時と規定するとしましょう。この規定によってボールが円周線上のどの地点にあろうが、時刻と同様にその場所を数値で簡単に表現できます。
GT おぉ! これは誰でもイメージできます。
清永 これで科学的研究方法が確定したことになります。この研究方法によって実際のグリーン上でのパッティング研究が可能となりました。
GT 研究目的は「パッティングでのボールのコロがり法則性を探求すること」ですね。
清永 ゴルフ界はパッティング技術を分析する際、あらゆるゴルファーが情報を共有するために必要となるはずのパッティング分類法を確立していないと思われます。パッティングを分析する際には、結果として何故そのパットが入ったのか、或いは入らなかったのかに特化されるでしょう。中でもショート(2.5 m以下)パットの場合には重要でかつ必要となります。
GT 入る、入らないだけでなく、何が原因でそうなったかが必要と言うことですね。
清永 そのためにもパッティングではボールのコロがりを時間軸によって分類することが合理的です。しかしながらボールがインパクト直後に動き始めてから完全に止まるまでを時間軸で分析するとしても、概念を表すべき言葉も欠けているようなのです。
GT そこで先生から提案があると。
清永 特にミスパットの原因を追及する際には、インパクト後のボールのコロがりを「初期方向性」と「終期方向性」とに二分する分類法を採用すると簡単でかつ便利になると思われます。図と分類法を見て、まずは考えてみてください。
清永パッティング分類法1
2.5m以内のショートパット
1)ボールがインパクト直後にコロがる方向は、パターフェースのリーディングエッジに対してほぼ直角。
2)インパクト直後のボールは、多くの場合フェース面を離れる際バックスピンと共に浮き上がり、放物線を形成しながら最初の落下地点では反射現象によってオーバースピンに変化しながらコロがっていく。距離にすると50cm程度での情報。
3)ボールが止まる直前の方向はボールがワンバウンドした後、カップ方向へコロがる段階になってからは、ボールが右や左へ曲がるのは、すべてグリーン面の傾斜や凸凹、芝目、砂、ゴミ等々に影響された結果である。
4)例えインパクト直後のボール回転が順回転でも逆回転でも、またスピン軸が傾いていたとしても、終期方向性には関与しない推察。
清永パッティング分類法2
ショートパットミス時の判断と対応策
1)ボールがカップを外れた際、カップの右側だろうと左側だろうと、最初に考えなければならないのはインパクト時のフェースの向き。
2)フェースの向きが許容範囲以上にオープンであれば右側へ、クローズであれば左側へボールは外れる。
3)1mの距離では、カップ中心に対して許容されるフェースの向きの角度は、±1.87 度以内である。
4)次に、フェース面が目標に対してスクエアであると仮定すれば、ストロークの動きがアウトサイド・インでもインサイド・アウトでも、許容される角度が存在する。
5)1mの距離では、カップ中心に対して許容されるストロークの角度は、±5.61度以内である。カップイン許容幅としては65mm になる。
6)許容角度に関するフェース:ストローク=1.87 : 5.61 =1:3 が成立。一方ボールの進行方向に関する役割はフェース:ストローク=1:2となる。よってミスパットの原因の関与度は逆転比で表現できる。
7)ミスパットの原因はフェースの向きが2/3=66.7%と圧倒する。ストロークのミスは1/3=33.3%と少ない。
8)上りの1mショートパットを数多く練習することがパッティング上達の王道となる。
解説/清永 明
福岡大学名誉教授。大学時代は九州学生選手権を3連覇。医師でありながらゴルフにまつわる現象を物理の目で分析。1メートルのパットが90%の確率で入るヨネックスの「トライプリンシプルパター」の設計者としても有名。