キャロウェイ米国本社の担当者が日本のメディアにはじめて語ったELYTE開発の裏側~
話題の新作 開発ストーリー秘話 ギアモノ語り VOL.46|Callaway × ELYTE【PR】

キャロウェイの2025年モデルは『ELYTE(エリート)』。最大の特徴はAIが設計したフェースのコントロールポイントを10倍以上にした『Ai 10x FACE』だが、米国本社のプロダクト戦略担当者に聞くと、10倍どころだけではない革命的進化が隠されていた。日本のゴルフメディアにはじめて語った開発の舞台裏に迫る。
ゴルフトゥデイ本誌 633号/59~63ページより
取材・構成・文/野中真一 撮影/相田克己 PMT

天才とAIの10X革命。
GENIUS ENGINEER × AI
AIには第4のインプット。エンジニアの分析で1500から25000に
キャロウェイの開発部門がスーパーコンピューターを導入したのは2009年。初期のAI担当メンバーは4人だけだったが2024年には20名以上になっていた。『ELYTE』では優秀なエンジニア達がAIの能力を最大限に高めていた。
約1年前、『パラダイム Ai SMOKE』の取材でAI担当のジム・セルーガ氏に話を聞くと、興味深いことを言っていた。ジムは4人しかいないAI開発初期メンバーの1人。当時はエンジニアだったが、今はシニアマネージャーに昇格している。
「最初の頃と比較するとAIがアウトプットするパワーは40倍以上になっていて処理速度は100倍。それを解析するために大幅にエンジニアを増員して、若くて“ジーニアス(天才的な)なエンジニア”がどんどん開発チームに集まっています」
もちろんAIのソフトウェアも進化しているが、『パラダイム Ai SMOKE』から『ELYTE』でAI設計フェースの能力を10倍以上に進化させたキーマンは優秀なエンジニア達だった。プロダクト戦略担当のザック・オークリー氏は『ELYTE』の開発初期段階から話をしてくれた。
「前作(パラダイム Ai SMOKE)もスピードがあって寛容性が高いフェースでした。ただし、次のモデル(ELYTE)はスピードと寛容性のバランスが良いというレベルではなくて、スピードも寛容性も突き抜けた領域のドライバーを目指していました。AIが設計したフェースにはまだまだ開発の余地があるし、コントロールポイントが増やせるだろうと思っていました」

コントロールポイントというのはミスヒットした弾道を補正してくれるポイント。例えばフェースが開いて当たるとボールは右に飛ぶが、コントロールポイントがあることでインパクトの瞬間にフェースがたわみ、左方向に飛ぶパワーを加えてくれる。結果として右方向への曲がり幅を抑えることができるのだ。ザックは「ボールに伝わる力の矛先を変えている」と表現した。
コントロールポイントはリアルなゴルファーのスイングデータをAIにインプットしたことによって『パラダイム Ai SMOKE』ではじめて搭載した画期的テクノロジー。スクエアにインパクトしなくても弾道を補正してくれるテクノロジーだが、どうやって10倍にしたのか?
「AIのスーパーコンピューターはどんどんアップデートして進化しているのですが、それを最大限に生かすためにはAIからアウトプットされる形状のデータを解析・分析するエンジニアの能力が必要です。そのためにキャロウェイでは人材投資をして、大幅にエンジニアを増員しました。新しいエンジニアにはAIからのデータを解析するメンバーもいれば、AIに新しいコードをインプットするメンバーもいます」

「エンジニアの解析能力が上がったことにより、AIの設計をより正確に曲線レベルで具現化した」

解析を担当するエンジニアがAIからのアウトプットデータを精密に分析した結果、フェース裏側の形状が変わった。元々、キャロウェイのAI設計フェースには人間の理解を超えた複雑な起伏と凹凸(おうとつ)がある。エンジニアを増員したことで、その凹凸を曲線レベルの起伏まで具現化することができた。
「正直に言うと、私達もコントロールポイントが増えるだろうとは思っていましたが、どのくらい増えるのかはわかっていませんでした。ただ、最終的にAIが設計した『ELYTE』のコントロールポイントを調べると2万5000にまで増えていました。『パラダイム Ai SMOKE』が約1500だったので10倍以上になっています」

ザック・オークリー(Zack Oakley/Callaway Golf Senior Product Strategy Maneger)
ザック氏はAIにインプットするレベルも上がったと語る。
「キャロウェイが最初にAIを使って製品化したのが2019年の『エピック フラッシュ』でした。当時は『ボールスピードを上げること』が唯一のテクノロジー的なインプット。それ以外は耐久性とルール適合であることだけでした。次にインプットできるようになったのがスピン量のコントロールです。3つめが打ち出し角、この3つで飛びの3要素をインプットできるようになりました。そして今は着弾範囲を狭くするところまでインプットできるようになりました」
着弾範囲を狭くするためには、具体的にAIにどのようにインプットしているのか?
「サイドスピンに関するインプットです。『ELYTE』になってからは着弾範囲のインプットがさらに進み、ボールの落下地点からどのように左右に転がっていくかという所までコントロールできるようになっています」
コントロールポイントを10倍以上にしたのは寛容性を極めるためのテクノロジーであり、ボールの着弾範囲は前作から19%も狭くなった(キャロウェイ調べ)。そして、サイドスピンを抑えるインプットはスピードを極めるためでもあった(次ページに続く)。
ELYTE SPEED & ELYTE FORGIVENESS
75回の試作でエリートスピードの新形状に。「10K」の試作品を採用しなかった理由は?
わずか1年で大幅に進化したのはフェースだけではない。ヘッド形状の開発ではチタン素材を使える3Dプリンターを導入したことで大幅に開発スピードが上がった。開発段階では慣性モーメントが10000g・cm2を超える10Kのヘッドを試作していたことも教えてくれた。
フェースは10倍(10x)の進化をしていたが、ヘッド形状はそれ以上かもしれない。
『ELYTE』の開発ではチタン素材を使える3Dプリンターを導入。私が知る限り、ゴルフメーカーでチタンの3Dプリンターを導入したのはキャロウェイがはじめてだ。その理由についてザック氏は、
「今までは海外にある3Dプリンターを使っていたので、試作品を作ってテストするまでに3、4カ月かかっていました。新製品の開発期間は15~18カ月しかありません。今までは3回、4回の試作品を作ってテストすることしかできませんでした。しかし『ELYTE』では、チタンの3Dプリンターを導入したことで約75回も試作品を作ることができました。今回導入した3Dプリンターは1度に4つのヘッドを作ることができます。それによって大幅なリードタイム(時間の短縮)が生まれました。開発メンバーに話を聞いても他のメーカーで自社のチタン3Dプリンターを使っているところは聞いたことがありません」
それだけの設備投資と約75回の試作をして、ヘッドはどのように開発していったのか?
「今回は形状をもう一度見直して、ヘッドスピードを上げるための形を模索しました。約75回の試作品を作り、テストを重ねながらわかったことは、空気抵抗を減らすためにはヒール側を低くして、トゥ側を高くする構造が最適であることです」
ただし、デメリットもあった。
「実はトゥ側を高くしてしまうと、サイドスピンが増えてしまうことが問題でした。それもあって、『Ai 10x フェース』では着弾範囲、サイドスピンについて時間をかけて分析しながらAIへのインプットを増やしました」

もう一つ、サイドスピンを減らすために前作から変えたのがクラウンの素材だ。
「軽くて強度の高いサーモフォージドカーボンを導入したのもサイドスピン対策のひとつです。前作のトライアクシャル・カーボンと比較しても、設計の自由度が高い素材なので最適な重量配分でスピン量を減らすことができます。クラウン部分の一番後ろ側まで覆うことができるので、金属部分を減らして重心も低くなりました」
キャロウェイの開発コンセプトは他社とは少し違っている。近年、他のゴルフメーカーは寛容性を高めて、ボールを曲げないためには慣性モーメントを高めることを徹底的に追求してきた。いわゆる10K(慣性モーメント10000g・cm2)のヘッドだ。
「実は今回、3Dプリンターを導入したこともあって、『エリート X』では10Kバージョンの試作品も同時に進めていました。しかし、テスト段階の結果で言えば、10Kバージョンはスイングスピードが落ちてしまうので飛距離が伸びない。スピン量も増えてしまう。ゴルファーに対してのメリットがそこまでないので10Kは採用しませんでした。慣性モーメントに固執しなくても、キャロウェイにはAI設計のフェースがあり、新しいヘッドシェイプがあるので十分にゴルファーを助けることができます」

10Kの超大型ヘッドでスピードを上げることは不可能に近い。『ELYTE』でスピードと寛容性の新しい領域に挑戦することができたのはAI設計フェースによる寛容性を追求してきたからだ。『ELYTE』の飛距離性能は『パラダイム Ai SMOKE』と比較しても8ヤードも伸びている(キャロウェイ調べ)。
キャロウェイがエンジニアの増員や設備に積極的に投資するようになったのは2013年にチップ・ブリュワーがCEOに就任してからだ。2019年にインタビューしたとき、彼はこんなことを言っていた。
「2013年のキャロウェイは今のポジションにはいませんでした。しかし、製品開発に力を入れたことで、現在のクラブ市場では競争力のあるリーダーになっています。この開発スタイルは私が考えたものではありません。キャロウェイの創業者イリー・リーブス・キャロウェイの“明らかに優れていて、その違いを楽しむことができる”という新モデル開発の哲学であり、もともとキャロウェイの文化としてあったものです。これからの5年はすごくエキサイティングで重要なものになります。私は製品開発に投資をして革新的なテクノロジーを生み続けることを約束します」
『ELITE』ではなく『ELYTE』にしたYには2つの意味がある。1つは昨年メジャーで2勝したザンダー・シャウフェレが自分を成長させるために自問自答した『WHY』。もう一つはキャロウェイの創業者であるイリー・リーブス・キャロウェイ(ELY REEVES CALLAWAY)のY。明らかに優れていて、その違いを楽しむことができるのが『ELYTE』だ。
4モデルの個性がはっきりして全領域をカバー
『ELYTE』『ELYTE X』はソールをチタンにしたことで重心が低くなり、ボールが上がりやすくなった。270グラム台の『ELYTE MAXFAST』には大幅に日本人ゴルファーのデータを追加。『トリプルダイヤモンド』は360度カーボンシャーシを継承したアスリート好みの中弾道。

ELYTE ◆◆◆
ディープフェース形状でヘッド体積450cm3に抑えた上級者モデルのドライバー。飛距離性能はもちろん、操作性の高さも兼ね備えている。
●SPEC ヘッド体積/450cm3 ロフト/8、9、10.5度 シャフト/TENSEI GREEN60 for Callaway 価格/10万7800円~

ELYTE MAX FAST
軽量タイプの『MAX FAST』には日本人を中心としてアジア人ゴルファーのスイングデータを入力。日本人の打点傾向に合ったコントロールポイントを搭載。
●SPEC ヘッド体積/460cm3 ロフト/9.5、10.5、12度 シャフト/LIN-Q GREEN40 for Callaway 価格/10万7800円~

ELYTE X
やさしさを追求した『X』はつかまりが良いドローバイアス設計。打ち出しも高く高弾道でキャリーを出せる。スライスに悩むゴルファーに最適なモデル。
●SPEC ヘッド体積/460cm3 ロフト/9、10.5、12度 シャフト/VENTUS GREEN5 for Callaway 価格/10万7800円~

ELYTE
幅広いゴルファーをターゲットにしたスタンダードモデル。約13グラムのウェイトを調整することでニュートラル、ドロー、フェードの弾道調整が可能。
●SPEC ヘッド体積/460cm3 ロフト/9、10.5、12度 シャフト/VENTUS GREEN5 for Callaway 価格/10万7800円~

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