アディダスゴルフ「Adizero ZG 25」に“重さを感じない理由”「良いゴルフシューズは重心の置き方が上手い」
ドイツ・アディダス本社取材レポート

アディダスゴルフのまったく新しいフラッグシップゴルフシューズ「Adizero ZG 25」(アディゼロ ZG)は、発売前から予想を超える数の予約が入るほどの人気で、発売後も好調な売れ行きを見せている。アディダスゴルフのゴルフシューズはなぜゴルファーに選ばれるのか。そして、「Adizero ZG 25」の『軽い、まだいける』というキャッチコピーが物語る性能はどのように開発されたのか。2月14日の発売前に実施された日本での試着ラウンドとドイツのヘルツォーゲンアウラハにあるアディダス本社、元プロサッカー選手でありアディダスゴルフのアンバサダーを務めるガレス・ベイル氏などを取材した。
欧米・アジア主要国のメディアを本社に集めて「Adizero ZG 25」の優位性をアピール

2025年2月14日に発売された「Adizero ZG 25」は、ゴルファーが18ホールを通じて最高のパフォーマンスを発揮できるよう設計されており、軽量性、フィット感、反発力が追求されている。メンズ・ウィメンズともにダイヤルを回してフィット感を調節できる「Adizero ZG 25 BOA」とシューレースタイプの「Adizero ZG 25」、そしてジュニア用にはシューレースタイプをラインナップしている。
その「Adizero ZG 25」発売の約2週間前、ドイツ・バイエルン州のヘルツォーゲンアウラハにあるアディダス本社で、「Adizero ZG 25」のお披露目イベントが実施するということで取材をさせてもらった。
そして、このイベントに呼ばれたスペシャルゲストが、アディダスゴルフのアンバサダーを務めるガレス・ベイル(Gareth Bale)氏だ。ウェールズ出身の元プロサッカー選手で、スピードと強烈な左足のキックを武器に活躍し、トッテナム・ホットスパーやレアル・マドリードでプレーし、レアル・マドリードではチャンピオンズリーグ優勝5回を含む数々のタイトルを獲得したレジェンドだ。
大のゴルフ好きとしても知られており、自宅には専用のゴルフコースも持っている。引退後の2023年には「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」などにも参加しているので、ニュースで見聞きしたゴルファーもいるのではないだろうか。
今回、そのベイル氏に「Adizero ZG 25」の感想を聞く時間を用意してもらえただけでなく、その場でドライバーを振ってもらい、ヘッドスピードを測らせてもらうことができた。

ベストスコア67! 元・サッカー・ウェールズ代表の“ゴルファー・ベイル”が「Adizero ZG 25」を履いてフルスイング

ガレス・ベイル氏は現役のサッカー選手時代からゴルフを始め、すぐに“ハマって”しまったという。ベストスコアは67。自宅の庭には自身が好きな3つの有名ホール(オーガスタ・ナショナルの12番、ロイヤルトゥルーンの8番、TPCソーグラスの17番)を再現したプライベートゴルフコースを作るほどの熱狂的なゴルファーだ。故郷であるウェールズでは、ゴルフの普及にも努めている。
ーー「Adizero ZG 25」の前に、少しだけあなたのことを聞かせてください。好きなゴルフプレーヤーはいますか?
ベイル氏 ローリー・マキロイとダスティン・ジョンソン、もちろんタイガー・ウッズも好きです。彼らのパワーと正確性には目を見張るものがあるので、彼らのプレーを見るのはとても好きです。
ーーサッカーにおいては、あなたの最大の武器はスピードでした。ゴルフでもスピードにはこだわりますか?
ベイル氏 ゴルフでも僕の武器はスピードだと思っています(笑)。ボールスピードを測った時は181mph(80.9m/s)だったと思います。ドライバーの飛距離を測ったことはないのですが、普段の飛距離はキャリーでだいたい300ヤードくらいですね。

ーーそれでは、「Adizero ZG 25」を履いてヘッドスピードを測ってみましょう。
ベイル氏 寒いから普段通りにスイングできるかな(笑)。121mph(54m/s)ですね。だいたいこのくらいなのかな。
※取材時の気温はマイナス2〜3度だった。
ーー「Adizero ZG 25」を履いてスイングしてみた感想を聞かせてください。
ベイル氏 グリップ力がすごいですね。もともとスパイクレスのゴルフシューズが好きで履いているんですが、このシューズのグリップ力は秀逸だと思います。それに、とても軽いです。これなら全然疲れないんじゃないですか。
ーー最後の質問です。あなたのゴルフライフにおけるサプリメントのような存在やモノはなんでしょうか。
ベイル氏 面白い質問ですね(笑)。僕にとっては、大好きなゴルフが人生におけるサプリメントと言ってもいいんですが、親しい友人とのプレーですかね。大切な人たちとのゴルフは、とても楽しいですし、かけがえのないものだと思います。
「ゴルフシューズも重心の置き方は重要です」

ドイツでの取材において、最も楽しみだったのが「Adizero ZG 25」はもちろん、「コードカオス」「ZG」「TOUR360」など、すべてのシリーズの開発に携わってきたアディダスゴルフのグローバルフットウェアディレクターのメイスン・デニスン氏への質問だ。
アディダスゴルフのシューズは、足とシューズとの一体感がとても強い。また、実際の重量よりも軽く感じられる。これは優れたフィット感によるところも大きいのだが、重さを感じさせない秘密がほかにあるのではないだろうか? それはシューズの最底部に重量が偏っておらず、ゴルフクラブで言うところの重心設定に、特徴があるのではないだろうか。
デニスン氏に話を聞かせてもらった。
ーーアディダスのゴルフシューズは、他と違う”軽さ”を感じさせます。それは軽いというよりも、重さを感じないという感覚です。ゴルフシューズにも「重心設定」という考え方があるのでしょうか?
デニスン氏 たしかにバランス、重心の置き方は重視しているところです。そして、重心はゴルフシューズの中心に設定するのが良いと思っています。そのために、「360ラップ」といったアッパーのラップ構造だったり、シュータンの配置や形状、その他の部位の工夫によって、基本的にゴルフシューズの中心に重心が来るようにしてあります。インソールやミッドソール、アウトソールも、やはりバランス、重心の置き方に関係してきます。
それから、BOAシステムも全体のバランスの取り方に、大きく影響を与えるものです。BOAのあるところだけが締まるような作りではなくて、広い範囲をバランスよくフィット(締める)させることによって、重さを感じさせない履き心地にしてあります。
ーー次に「Adizero ZG 25」についての質問です。今回の「Adizero ZG 25」はどのようなアイディア、出発点から開発がスタートしたのですか。
デニスン氏 ベースとなっている「ZG」シリーズには「ZG 21」と「ZG 23」がありましたが、「ZG 23」は特に軽量性にフォーカスしたモデルでした。それで大成功したのですが、ランニングシューズにおいて高く評価されている「Adizero」シリーズがあり、その成功を得たテクノロジーを「ZG」と掛け合わせて進化させることができないか? というのがスタート地点でした。
「ZG」と「Adizero」の良いところを融合させて、よりベストなものに押し上げていくことで、両方の良いとこどりをしたようなゴルフシューズに仕上げることができました。

ーー開発の過程において、難しかったのはどんなところですか。
デニスン氏 たくさんのチャレンジが必要でした。たくさんありすぎて、全部は話せないので重要な2つのチャレンジについて話します。まずひとつ目はトラクション、グリップ力です。スパイクレスなのにスパイクシューズのようなグリップ力を持たせるというところがチャレンジでした。スタッズ(鋲)のデザインをどうするかということ、素材はどうするか、よりベストなグリップ力を実現するためにとても苦労しました。開発中はツアーアスリートにも試着をしてもらい、フィードバックをもらいました。
そして、2つ目のチャレンジがランニングのテクノロジーを応用したことです。アディダスにはマラソンで記録を残している厚底のランニングシューズがありますが、それはもちろんゴルフに持ってくることはできません。なぜならゴルフシューズは地面と足の距離が近くなければいけないからです。では、ランニングシューズのテクノロジーを、どうしたら活かせるかを考えた結果、新型の「3Dトルションプレート」という部品の採用を思い付きました。足裏の中足部から前足部に配置することで、反発力を発揮し、歩行時に前へ前へと足を進める、“勝手に歩く”みたいな感覚を与えてくれる。それによって歩行時の軽快感、軽さを感じさせることに成功しています。このランニングシューズのテクノロジーを融合させることが、とても大変でした。

ーーゴルフシューズの融合において、他にも適したスポーツカテゴリーはありそうですか?
デニスン氏 良い質問ですね。色々あります。特にサッカーは、相性の良いカテゴリーだと思っています。トラクション、スタッズのデザイン、もちろん軽量性にもフォーカスしたカテゴリーなので、ゴルフとの融合にはとても適していると考えています。ゴルフシューズの良いところは、あらゆるスポーツの良いところを融合しやすいところにあると思っています。もちろんそれは機能性だけでなく、ファッション面においても言えることです。
今、特に注目しているのは、アウトドアです。なぜならアウトドアのシューズは、保護性の高さにフォーカスするものだからです。例えば、ウォータープルーフがそうですし、山の中で岩や川の中を駆け回ったりもするので、ゴルフとの相性は良いと思います。
また、横移動の多いスポーツのテクノロジーもゴルフには必要なものだと考えています。例えばテニスだったり、バスケットボールがそうですね。横移動があるということは、トラクション(グリップ力)が大事になってきますし、もちろん軽量性も大事なんですけど、それらをゴルフと融合することができると思います。
もちろんランニングも欠かせないですね。前へ進む、優れた歩行性の進化は不可欠だと思います。ゴルフではショットとショットの間は、ほとんど歩いているスポーツなので、ランニングシューズの機能との融合は欠かせません。
アディダスは10種類以上のスポーツ向けにシューズを製造しており、それぞれの競技で培った知見や技術力、デザイン力を相互に活かしている。過去にも、ランニングシューズで開発されたクッション技術「Boost」が、バスケットボールやゴルフシューズに応用され、快適性とパフォーマンス向上に貢献した。また、サッカーシューズの軽量素材やフィット感の技術は、テニスやトレーニングシューズにも展開されている。
アディダスゴルフのゴルフシューズが特別なのは、1949年の創業時から培ってきた経験と技術力の膨大な記録があること、そして多様なスポーツでの経験を、新たなイノベーションを芽吹かせる“種”としているからなのだ。
それでは、ランニングシューズのテクノロジーを融合させたゴルフシューズ「Adizero ZG 25」の機能・履き心地をベテランゴルファーたちは、どのように評価したのか。日本での発表イベントでの取材内容を紹介する。
ランニングシューズの機能を融合した「Adizero ZG 25」その履き心地は?
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