渋野日向子のドライバースイングを連続写真で分析
手元が低く、インパクゾーンが長い/渋野日向子は“グローバルスイング”
2019全英女子オープンで優勝を果たした、渋野日向子(しぶのひなこ)のドライバースイングを連続写真とともに分析する。
三觜喜一が渋野日向子の“メジャー級・スイング”を三次元的に解説
初出場の全英女子オープンにおいて、42年ぶり、日本勢2人目のメジャー優勝という快挙を成し遂げた渋野日向子。笑顔でメジャーを制した“スマイル・シンデレラ”のスイングを、プロコーチ・三觜喜一に解説してもらった。
「まず、目を引くのが、ハンドダウンのアドレスですよね。あれだけ手元を低く構えて打てるのはすごい。これは、渋野プロの柔軟性のなせるワザでしょう。それから、全英女子オープンを見ていて驚いたのが、スイングリズムが常に変わらないという点です」(三觜)
一般的には、ハンドダウンのアドレスからでは、インパクトで手元が浮いてしまいがち。そのため、アマチュアゴルファーが真似をする必要はないだろうし、真似するのは難しいと言える。さらに、渋野のスイングのすぐれた点について、三觜喜一は、こう続ける。
「渋野プロの強さは、振り遅れないスイングである、ということが大きいです。そして、手元が浮くことなく、インパクトゾーンが長い。これは、海外のトッププレーヤーのスイングと共通する部分であり、ボールを押し込んでいけるインパクトに必要な要素です。また、先日の全英女子オープンにおいては、どんな場面でも振り切っていましたよね。それができるメンタルも、渋野プロの強さを構成する要素のひとつでしょう」(三觜)
手元を体に近づけないから、インパクトゾーンが長くなる
渋野日向子の強さの秘密。振り遅れないスイングとは、具体的にどういうことなのだろうか。
「まず、シャットなバックスイングから、左手を掌屈(掌側に手首を折る)させてシャローアウトさせています。切り返しは下半身がリードしますが、その際にクラブの位置は変わりません。これにより、下半身と上半身の捻転差(タイムラグ)が、適切に生じています。そして、渋野プロの特徴としては、切り返しから手元が体に寄っていきません。手元と体との間隔が変わらず、ダウンスイングが行われているということですね。そのため、ヘッドはスイープにボールに対して入っていき、インパクトゾーンが長くなります。さらに特筆すべきは、これら一連のスイング動作の中に、一切の緩みがないということ。インパクトに合わせにいく動きが生じないし“振り遅れない”。だから、ボールはつかまるし、インパクトが強くなる。ボールを押し込んでいくようなインパクトになるんです」(三觜)
適切に体重移動はしているが、上半身が左に流れずにビハインド・ザ・ボールが形成されている、などなど。渋野日向子のスイングには、ほかにも多くのすぐれた点を見出すことができる、と三觜喜一。
「ダウンスイングからインパクトに至る過程で、あれだけ低い位置で手元が動くツアープロは、なかなかいません。それだけをとっても、渋野プロはグローバルなレベルに達するスイングの持ち主だと言えます」(三觜)
世界で戦えるスイング。渋野日向子のスイング解説を、三觜喜一はこう締めくくった。本人は、まだまだ国内ツアーで実績を積むと公言しているが、いつか米女子ツアーで活躍する“世界のしぶこ”を見られる日がくるかもしれない。
取材・文/ゴルフトゥデイ編集部 角田柊二
解説 三觜喜一
みつはし・よしかず。1974年生まれ。神奈川県出身。PGAティーチングプロ。「ゴルフは運動」をモットーに、意図したままに体を動かせることに重きを置き、長年ジュニアの育成に尽力。現在は並行して辻梨恵らツアープロのコーチを行いながら、日々スイングを研究している。2019年9月2日、大箱根CC内にMGA(MITSUHASHI GOLF ACADEMY)を新たに開校。“三觜メソッド”の集大成となる上達カリキュラム・3次元スイングの習得をサポートする。
https://www.mitsuhashi.golf/
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