アイアンスイング上達|ダウンブローの打ち方を小川泰弘プロ解説
アイアンといえばダウンブロー。ダフリやトップなどのミスが出てしまうと、「ちゃんとダウンブローに打てていないよ」と指摘されるゴルファーも多いことだろう。でも、ダウンブローとは一体どういうことなのか?そこで小川泰弘プロにダウンブローの真相と、正確にダウンブローに打てるようになるためのポイントを訊いた。
ダウンブローの基本|スイング軌道最下点の手前でボールをとらえる
「アイアンはダウンブローに打つ」。これはゴルフの基本であり、ゴルファーにとっての常識ともいえます。
芝の上にあるボールを打つとき、どうしても「上げたい」心理が働きやすいものですが、すくい打ちは禁物です。
すくい打ちになるとダウンスイングからインパクトにかけて体重が左足に移動せず、右足体重のままでインパクトを迎えてしまいます。スイング軌道の最下点がボールよりも手前側となり、結果はダフリです。
ダウンブローとは「ボールを上からヒットする軌道」のことで、スイング軌道の最下点の手前でインパクトを迎えるという意味も含んでいます。
7番アイアンのショットでいえば、アドレスの体重配分は左右均等。ボールの位置はスタンスの中央か、やや左寄り。そして両手を左モモのツケネの前にセットし、軽いハンドファーストの構えをつくりましょう。
そしてインパクトは体重を左足に乗せて、両手をアドレスよりも少し左側に寄せてハンドファーストの度合いを強めます。アドレスよりも少しフェースを立てて、ロフトを減らすイメージでインパクトを迎えるのです。
そうすればクラブヘッドがスイング軌道の最下点に向かって下降する軌道でボールをとらえることができ、理想的な打ち出し角で飛んでいきます。適正のスピン量がかかりやすくなりますから、ロフト角とおりの距離が打てるようになります。
ダウンブローに打つといっても、何でもかんでも上から鋭角に打ち込めばいいというものでもありません。ダウンスイングでクラブを急角度で振り下ろしてしまうとフェースの刃が芝に刺さってフォロースルーが取れなくなってしまいます。
体をスムーズに回し、回転に同調して腕を振れば自然にダウンブローに打てるというくらいにシンプルに考えましょう。
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スイング軌道の最下点の少し手前でボールをヒットするのがダウンブロー。
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スイング軌道の最下点がボールの手前側となるとダフリが生じる。
今のアイアンは鈍角なダウンブローでもいいが、すくい打ちはNG
今のアイアンは昔よりもやさしく打てるようになり、多くのゴルファーが恩恵を受けていることと察します。
昔のアイアンはクラブヘッドが小さくてフェースの肉厚が薄く、重心が高めでした。そのためダウンスイングで大きなタメをつくってクラブを鋭角的に振り下ろし、さらにインパクトでフェースターンをしっかり使って打っていました。そうしないとスピンが十分にかかりませんし、距離も出にくかったためです。
時代とともに道具が改良改善されて、アイアンは昔のマッスルバックからキャビティバックへと移行してきました。
フェース面がやや長くなり、重心を下げた低重心設計のアイアンです。スイートスポットが広がり、ミート率が高くてボールが上がりやすいように造られていますから、ミスを軽減してくれるというメリットもあります。
そんな理由から現在のアイアンは、昔ほど鋭角に打ち込まなくても高さを出せるようになりました。実際、プロの中にも「アイアンはシャローに打つイメージ」と口にする人が増えています。
昔よりも鈍角な軌道でとらえるイメージというわけですが、鈍角に入れるイメージが強すぎては距離が出なくなります。インパクトでロフトを立てて打つことができませんし、スイング軌道の最下点がボールよりも手前になってダフリが生じやすいからです。
一番いいのはボールの先のターフを薄く長く取るイメージでスイングすること。そうすればロフト角どおりの距離を出しやすくなります。練習法としてはバックスイングをとらないで、アドレスの姿勢からインパクトの形をつくり、フォロースルーだけでボールを低い角度で飛ばすのが効果的です。
この練習はロフト角の多いサンドウェッジでは難しいですが、7番アイアンならなれてくれば低い角度で飛ばせるようになります。
なかなか飛ばせないようでしたら、手首をこねている証拠。アドレスの右手首の角度をそのままキープして、クラブヘッドを低く出していくのがコツです。
ダウンブローの技術が身につくアイアンを選ぶのが得策といえる
初心者やハンディキャップが多いゴルファー向けのアイアンと、プロやシングルゴルファーが好んで使うアイアンの一番の違いは何だと思いますか?フェースの見た目の顔とかシャフトの高度などもありますが、一番の違いはロフト角です。
各クラブメーカーもよく研究されていて、ハンディキャップが多い人向けのアイアンはロフト角が少なくて、プロやシングルゴルファー向けのアイアンはロフト角が多めとなっています。
7番アイアンを例にあげると、初心者やハンディキャップの多い人でもやさしく打ててボールが上がりやすく、距離も出るというクラブのロフト角は25〜27度くらいとなっています。
このタイプにはヘッド形状に特徴があって、「ポケットキャビティ」と呼ばれるアイアンが多く出そろっています。ポケットキャビティとはバックフェースのソール寄りの部分に肉厚をもたせて、そのフェース際をくくり抜いてポケット状にしたものです。
こうしたクラブを使えば、ダウンブローに打てない人でもボールがちゃんと上がって、ちゃんと距離を出すこともできます。「すくい打ちになりやすい人=インパクトでロフト角が増える」ということを計算して造られたクラブだからです。
上級者向けのアイアンにもキャビティバックが主流となりましたが、ポケットキャビティのタイプはほとんど見られません。技術レベルの高いゴルファーはインパクトでロフト角を減らすようにハンドファーストに打てますから、アイアンのロフト角が逆に多めとなっているのです。
今はプロたちもやさしいクラブを好んで使う時代です。そういう意味では技術不足をカバーしてくれるクラブを使うのもいいと思いますが、ダウンブローに打てなくてもグッドショットを実現してくれるアイアンに使い慣れてしまうと、ドライバーが飛ばなくなる懸念もあります。
ドライバーで飛ばせる人は、アイアンがちゃんとダウンブローに打てる人です。そうしたことを頭に入れた上で、どのアイアンを選択するかを決めるのも大事なことです。
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ハンドファーストインパクトをつくり、ダウンブローに打つ技術が身につきやすいアイアンを選ぼう。
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アイアンがやさしく打てるクラブを選ぶのもいいが、すくい打ちの癖が悪化しないように注意しよう。
解説・小川泰弘プロ
おがわ・やすひろ。
1972年9月5日生まれ、東京都出身。1999年プロ入り。
昭和の森ゴルフアカデミーで幅広い年代層をレッスン。実戦的でわかりやすい指導法に定評があり、これまでにレッスンしたゴルファーは2500人を超える。
取材・写真/三代 崇 協力/昭和の森ゴルフコース
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