1. TOP メニュー
  2. テクニックに効く
  3. アプローチ
  4. 寺西明のアイアンスイングの極意「ノンストップ打法」とは?

寺西明のアイアンスイングの極意「ノンストップ打法」とは?

2020/07/16 ゴルフサプリ編集部

49歳でプロテストに一発合格、強者揃いのシニアツアーで3勝できたのは、ある気付きを得てそれまでの意識を180度変えたからだという。寺西明が50歳でつかんだアイアンスイングの極意とは?

指導
寺西 明
(てらにし・あきら)30歳でゴルフを始め、関西ミッドアマ2勝。関西アマと関西オープン(ローアマ)は48歳で制覇。翌年プロ転向し50歳になった2016年から会社経営と二足のわらじでシニアツアーに参戦中。

【関連】アイアンを上達!打ち方のコツやスイング練習方法をプロが解説

始動|体のどこを最初に動かすべきか?

目的は教えを守ることでなく目標に向かって飛ばすこと

皆さんと同じで雑誌やレッスン書がぼくの先生でした。そこには「ボールを見ろ」「頭を残せ」「左の壁を作れ」といったことが書いてあり、その通り練習したおかげでアマのタイトルをいくつも獲ることができました。しかし50歳になる少し前、プロを目指してもこのままでは通用しないと思い始めたのです。

やるからには勝ちたい。そのために何が必要か。出てきた答えは自分の振りたいように振ること、体が動きたいように動かすことでした。なぜなら、それまで守ってきた教えは体の動きを制限することばかり。年齢とともに体が思うように動かなくなるのに、自分から動きを止めたら余計に飛ばなくなるしコントロールも難しくなるからです。

それからはすべてのリミッターを外し、スイング中に体の動きを止めないようにしています。

静止からの始動は難しい、アドレスでもノンストップ

テークバックが上げづらいのは、静止した状態から動き始めるからです。始動をスムーズにするためには、アドレスしたときから動いている状態を作ればいいわけです。いきなり右足にのったりクラブを持ち上げたりするのではなく、いったん左に軽く踏み込んでから、その反動を利用すれば自然に右足にのってクラブを上げることができます。

お悩み 始動クラブを上げるときモジモジしてしまう…
解決法 左足を踏み込んで反動を利用しよう!

アドレスでも静止状態を作らない

その場で足踏みをする要領で左足を踏む。地面からの反動を使って左足にのり、同時に上体を右に回す。
  • 左に流れると右に戻れない。左に動くきっかけを作るだけなので大げさな動きは必要ない。

  • 左右の足の内側で体重移動すれば動きやすい。外側にのると次の動作に入りにくい。

構えた手を目標方向に動かす(フォワードプレス)だけでも始動しやすくなる。1の足踏みと同時に行ってもいい。
フォワードプレスを右手で行うと右肩に力が入ってクラブが上がりにくくなる。左手で動かそう。

テークバック|クラブはどの方向に上げるべき?

テークバックは丹田から回す
バックスイングもダウンスイングでも肩や胸ではなく丹田を使って回します。丹田を動かすことで肩や腕、クラブも自然についてきます。
❷ フェースがボールに向いている(軌道に対してスクエア)ので腰を回すだけで球がつかまる。

丹田はベルトのバックルあたり。ここから上体を回していく。
丹田を回せば肩も一緒に回る。

お悩み フェースが開いたままで球が右に飛ぶ…
解決法 フェース面をボールに向けたまま上げてみよう!

クラブをインサイドに上げてはダメ

インサイドに上げると極端にフェースが開く。

以前はフェース向きと前傾角が同じだった

フェース向きはヘッド軌道に対してオープン。
アーリーコックはオープンフェースになりやすい。
フックグリップがアーリーコックの原因になる。

現在はフェースを前傾角よりも下に向けている

フェース向きがヘッド軌道に対してスクエア。
  • 左手をスクエアに握るとフェースもスクエアに上がる。

  • 右手は真下から握れば自然と右ワキが締まる。

コックを使わないレイトコックだとフェースが開かない。

お悩みの原因は『アーリーコック』と『フックグリップ』にあった!意識的にコックする必要性はない

アマチュア時代はつかまらないクラブを使っていました。振っても左に行かないからです。プロになってからは使うクラブも変わってきました。いまアイアンはグースの入っているものを使っています。球をつかまえて強く打ち出せるからです。スイングも同じで、とくにアイアンは自分の中ではつかまえる動きしかしません。

一番のポイントはシャットフェースで上げること。腰の高さくらいまでは、フェース面がずっとボールを向いている状態のまま上げていきます。ダウンスイングでもフェースが真っすぐのまま下りてくるので、あとは腰を回すだけで球がつかまります。

ぼくも以前はアーリーコックでしたが、いまは意識してコックすることはありません。アマチュアにもアーリーコックの方が多いですが、フェースが開いて上がり、開いたまま当たりやすいので球がつかまりにくくなります。

フックグリップがつかまりやすいというのも勘違い。アマチュアの場合はインサイドに上がりやすいので、逆にフェースが開いて当たってしまう人がほとんどです。ぼくも握り方を、フックからスクエアに変えました。

ダウンスイング|アイアンでも飛ばしたい!どうすればいい?

上半身と下半身を時間差で切り返すことで大きな捻転パワーが生まれる。

お悩み 深いトップを意識しているが飛ばない…
解決法 クラブが上がりきる前に下半身を戻す!

❶ 両手だと手が早く反応してしまうので、片手の方が時間差で切り返すタイミングをつかみやすい。
❷ 上半身と下半身が逆方向に捻れて引っ張り合う。肩を深く
❸ クラブが上がる途中で左の踏み込みをスタート。

  • 肩を深く回すだけでは大きな捻転パワーは作れない。

  • 下半身を切り返すときは丹田を意識して動かす。

深いトップより上下の時間差が重要

どれだけ肩が回っているかとか、クラブがどこまで上がっているかとか、アマチュアにはけっこうトップの形を気にする人がいます。しかし、トップを深くするだけでは球は飛びません。それはその場でただ回っているだけだからです。また、ほとんどのアマチュアはトップができてから切り返しています。つまり、トップでいったん動きが止まってしまうわけです。止まった状態から加速しても、インパクトまでに十分なスピードが出ません。

ではプロはどうしているか。クラブが上がりきる前に、下半身を逆方向に動かし始めています。そこで上下のねじれが最大になり、回転力に捻り戻しの力が加わるので小さく浅いトップでも速く振ることができます。

お悩み スイングアイアンは上から叩いた方がいい…?
解決法 スイープに入れた方が飛んで曲がらない!

スイープに振ればボールを長く押せるのでボールにパワーと意思を伝えやすい。
  • 丹田を下にキープするとボールとの距離を一定に保ちやすい。

  • 丹田が上がるとクラブが手前に落ちてダフってしまう。

丹田を下げる意識で入射角がスイープになる

ハーフウェイダウンからフォローまで丹田を地面方向に押すイメージ。

欧米のプロも意外にレベルブローが多い

去年は「全英シニアオープン」に初めて出場させていただきました。そのとき気がついたのは、外国人選手は思い切り打ち込んでいるのかと思ったら意外にスイープに振っていることです。とくにヒメネスなんかはダフっているように見えるくらい入射角が浅い。スイープに振るメリットはインパクトが長くなることです。体の正面からクラブが外れにくいし、距離も変わらないので伝わるパワーも大きくなります。

スイープに振るには、スイングプレーンをフラットにする方法もありますが、シャンクが出やすくなります。オススメはダウンスイングで丹田を下げる意識で振ること。軸と下半身も安定するので距離が出てショットがブレにくくなります。

インパクトコントロール|インパクトでボールのどこを見たらいい?

お悩み ボールをよく見ているのに真っすぐ飛ばない…
解決法 自分の打ちたい球筋をイメージする

プロ級の腕前を持つビリヤードに例えると

「ショットのとき撞点(キューを当てるポイント)は見ません。的球(ターゲット)にどれくらいの厚みで当てるかだけを考えます」(寺西)

目を瞑っていても ボールはちゃんと打てる

①プレショットルーティンでは方向を確認するだけでなく、仮想の弾道をイメージする。
②アドレスに入ってショットするまで弾道のイメージを残したまま。
③ボールを凝視する必要はなく、むしろ出球のイメージを大事にしたい。

ターゲットの場所をイメージできていれば、真横(視界の外)にもボールを投げられる。
  • ボールを見過ぎると急ブレーキがかかり、一度力を抜かないとクラブを振り抜けない。

  • ボールの位置はわかっているので、だいたいこのあたりにヘッドを通せばいいという感覚。

ボールを見すぎるとブレーキがかかる

以前はボールの当てるところをしっかり見て顔を上げるなと言われていたのでその通りにしていましたが、いまはインパクトをほとんど見ていません。インパクトに集中すると、そこでスイングが終わってしまうからです。

では、何を見ているかといえば、頭の中にあるターゲットの残像です。ショットの目的はターゲットに向かってボールを打つことです。ボールに当たるか当たらないかより、ターゲットを意識することが重要です。キャッチボールの時にどこを見るか。ふつうは相手を見ながら投げます。自分のボールを見ながら投げる人はいません。それと同じです。ただ、ゴルフの場合はターゲットを見ながら打つことができないので、プレショットから仮想の弾道をイメージしておくことが大事です。

お悩み ボールがつかまらず球が弱々しい…
解決法 右腰の前でボールをとらえる

右腰で打てばボールを長く押し込める

ジュニアゴルファーのように体の動きを目一杯使うのがノンストップ打法の理想型。

インパクトはアドレスの再現ではない

  • 正しいインパクト。先に腰を切るので右腰の手前でインパクトを迎える。

  • インパクトでアドレスを再現しようとすると、腰を切れないので手打ちになる。

体の正面でなく右腰で捉えるのが正解

レッスン書にはインパクトはアドレスの再現だとよく書いてありますが、そんなわけはありません。ダウンスイングでは下半身の方が早く戻るので、インパクトでは上半身はターゲットの方を向いています。

また、体の正面でボールを打ちなさいとも書いてあります。その通りにすると上半身と下半身を一緒に戻すしかなく、捻転ではなくただの回転になってしまいます。

実際には体の正面ではなく右サイドでボールを打つくらいのイメージのほうが、はるかに球がつかまるし、そこから押し込んでいくこともできます。

ボールは常に左胸の前、シニアはスタンス狭めがベター

PWはボール位置がかなり右に寄っているように見えるが、実際には6Iと同じ位置。

体重移動よりも、回転を意識しよう

ショートアイアンで必要以上にボールを右に置く人がよくいます。右に置いたら球が上がらないしチーピンも出ます。ぼくはボールを常に左の胸の前に置き、スタンスの幅だけ変えています。長い番手は右足を広げるのでボールが左寄りに、短ければ右足が近いので右寄りに置いているように見えるだけです。シニアの場合、股関節が硬くなるのでスタンスは狭めの方が回転しやすくなります。

股関節の動きが鈍くなると、ワイドスタンスでは回転しづらい。スタンスを狭くして、回転でスピードを上げる方が楽。

インパクト&フォロー|叩けば叩くほどボールは飛ぶのか?

ボールを「打つ」と「投げる」はまったく違う

アイアンで飛ばすときもシャフトやヘッド、ボールに仕事をさせた方が楽です。また、ボールを打ちにいく場合、地面からの反発を使うのでインパクトからフォローにかけて上体が伸び上がります。

しかし、アイアンの場合は上下動を使うよりもレベルで回す打ち方のほうが安定します。打ちにいくというより、クラブの先でボールを投げるようなイメージで振ることで、腰の切れがよくなり回転速度が上がります。また、入射角の浅いスイープな軌道ならフェースに球をのせて強く押すことができます。

  • 遠くへ投げるイメージなら加速したままインパクトを迎えられる。

  • インパクトに集中するとボールに当たる手前でスピードダウンしやすい。

お悩み 5 叩けば叩くほどボール は飛ばすけっこう強く振っても飛ばない…
解決法 ボールを打ちに行かずに投げるイメージで振る

サイドスローをイメージしながらボールを投げてみよう

腰を切ることで回転速度を上げ、リリースポイントを遅らせることで体重をのせて速い球が投げられる。

クラブを腕で振るのでは なく、腰の回転を使いながらヘッドとボールを遠くへ投げるようなイメージで振りましょう。

丹田を下げることでスイープな軌道になる

丹田を意識し重心を下げたま回すことで、インパクトゾーンが長くなって大きな力がボールに伝わる。

ドリル|スイングのコツをすべて養える”ステップ打ち"

常にバッグに入れているのはステップ打ちに使う重い練習用アイアン、重めと軽めの練習用スティック。

ステップ打ちのやり方

左、右、左とステップを踏みながらボールに少しずつ近づく。クラブも左、右、左と振るが、下半身が先に動いてクラブがそれに引っ張られるように戻る感覚をつかみたい。オススメはヘッドを感じやすい練習用の重いクラブだが、なければSWでもいい。

❶アドレス状態から左足を踏み込んでクラブを左に振る。
❷左足を踏んだ反動を使って右足を踏み込み、引っ張られる力でクラブを右に切り返す。
❸右足の反動を利用して左足を踏み込む。クラブも左に引っ張られる。

❹クラブが上がりきる前に、左足を踏み込んで下半身を戻し始める。
❺最後にティアップしたボールを打つ。慣れるまでは素振りだけでもOK。

逆手でテークバックの向きをマスター

  • クラブを真っすぐ引いてシャットフェースで上げる感覚がわかりやすい。

  • グリップをクロスハンドで握ると、インサイドに上げることができない。

重いスティックでタイミングをつかむ

速く切り返せないので、時間差切り返しのタイミングやスイングのリズムを覚えられる。

軽いスティックでスピード感覚を養う

クラブを速く振る感覚を忘れないために、軽いスティックで素振り。

止まらずに打つコツがつかめる!

ステップ打ちはぼくが練習場で最初に必ず行うドリルです。その名の通り、左、右、左と足踏みをしながらクラブを素振りして最後にティアップしたボールを打ちます。ステップ打ちには、体重移動、腰の回転、クラブの上げ下ろし、リズム、時間差の切り返しなど今回のレッスンでお話しした要素がすべて入っています。

とくにスイング中に動き続ける感覚を養うには最適の練習です。また、ステップ打ちの応用でクラブをクロスハンドで握るやり方もあります。クロスハンドにするとクラブをインサイドに上げられないので、シャットに上げる感覚をつかむことができます。

[寺西流]練習効果を高め、ケガを予防するストレッチ

捻転に必要な筋肉を重点的に伸ばす

筋肉や関節の動きが悪くなるのも、体の動きにブレーキがかかる原因。とくにお尻、体側、首が硬くなると十分な捻転ができない。寺西明に日頃行っているストレッチを教えてもらった。

50歳を過ぎたら、いきなり動くのは絶対ダメ!

片方の足首をもう片方の右ヒザにかけ、しゃがむように腰を落とす。お尻の筋肉が伸びて捻転が大きくなる。ふらつかないようクラブ等で体を支えながら行うといい。
上半身を直角に曲げてお尻を後ろに引き、伸ばした腕と引っ張り合うようにする。肋骨が動きやすくなって捻転が大きくなる。
(左)頭を左右にゆっくり回す。軽く手で押すのも効果的。首は痛めやすいので体が冷えているときには行わないこと。(右)頭を左右に倒し首の横側を伸ばす。片腕を伸ばして前後に回旋させると満遍なくストレッチできる。

取材協力/ABCゴルフ倶楽部

GOLF TODAY本誌 No.577 54〜65ページより