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「スイートエリア拡大」でスコアはアップするのか?

重箱の隅、つつかせていただきます|第3回

2020/10/06 ゴルフサプリ編集部

スイング、ゴルフギア、ルールなどなど……。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。

GOLF TODAY本誌 No.580/78ページより

戸川景
とがわ・ひかる。1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。

「スイートエリア拡大」でスコアはアップするのか?

新しいゴルフクラブの謳い文句といえば「よりやさしく、もっと飛ばせる」を少しずつ言い換えたものばかりのような気がする。

使う人間は変わらないのだから、この要件を満たすには①ヘッドスピードのアップ、または②スイートエリアの拡大しかない、と思う。

①は、クラブヘッドやシャフト重量を減らしたり、長尺化するとか具体化するほど違和感が出やすく、ユーザーもとっつきにくいのか、よし買おう、とはなかなかならない。

だが、②は最近「反発エリア」と言い換えることで訴求力を増した感がある。

そもそも〝スイートエリア〟とは何か。インパクト時にエネルギー伝達効率が最も高い打点が〝スイートスポット〟で、それに遜色ないパフォーマンス(弾道)を発揮する〝当たり負けない打点エリア〟のことだ。

さて、スイートスポット(芯)を外してもヘッドが当たり負けない打点エリアは、どう作られてきたか。アイアンのキャビティバックが最初、ではない。アイアンとウッドの違い、つまり「重心深度」がスイートエリアの考え方の始まりだった。

ウッドならバックメタル装着、パターならブレード型よりマレット型。ヘッド重心が深いほど、打点がズレてもヘッドがブレにくく、ミスが減ることは知られていた。

これが周辺重量配分構造のキャビティバックアイアンとメタルウッドの登場以降、ヘッドの回転慣性モーメント計測で〝当たり負けにくさ〟を数値化するようになった。その肥大化を「スイートエリアの拡大」と呼ぶようになったのは、ここ30年ちょっとの話だ。

だが、最新のスイートエリアの考え方は、さらに進化している。打点ごとの反発性能で打球の初速を下げない=弾道を安定させる、ということになりつつある。

打面の肉厚やソールの溝まで工夫し、打点ごとの反発性能を適正化し、打ち出し角やスピン量までもコントロール。「打点が多少ズレてもほぼ同じ弾道で運べる」という機能が開発されている。

スイング精度の高い一流プレーヤーにとっては、確実にショットの安定につながる進化を遂げているのだ。

ただし、この進化、一般アマ、アベレージクラスにはほとんど恩恵はない、と思う。特にスコアアップには。

というのも、いくらスイートエリアが広くなっても、インパクトで打面の〝向き〟をコントロールできないと、方向性も距離感も結局は安定しないからだ。

打面は左右だけでなく、ロフトに関わる上下も含めて、安定させる必要がある。ウェッジやショートアイアンなら大丈夫、という人は多いと思うが、それならスイートエリアが狭いマッスルバックでも問題なく打てるし、弾道も安定しているはず。

長いアイアンは? スイートエリア以前に、ロフトが足りなくてまともに打てない、というケースが多い。

ウッドは? まずは打面がコントロールできるスペックでないと、根本的に方向性の悪さは解消できない。つまり、プロほどヘッドスピードが出せず、ボギーオンの多いプレーのアマチュアレベルでは、今どきの「スイートエリアの拡大」は意味がない……といったら言い過ぎだろうか。

スイートエリア拡大=やさしいクラブかもしれないが、スコアアップを期待するにはもっと別の要素が必要だと思う。たとえば、高さが出やすくて左右にブレにくいこと。ロフト設定とボール選びに活路がありそうだ。


Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ


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