パットに型なしグリップにも型なし。自分にとっての理想を追求しよう
ゴルフリサーチャーTASK【世界のゴルフスイング事情】vol.10
国内外で収集したゴルフスイングに関する最先端情報を「Jacobs3D」アンバサダー、ゴルフリサーチャー「タスク」が独自の視点と考察を交えてお届けします!
GOLF TODAY本誌 No.583/132〜133ページより
ゴルフリサーチャー・タスク
国際金融マンからゴルフリサーチャーに転身。米国のゴルフサイエンス団体Jacobs 3D GOLFのアドバイザリーメンバーであり、日本のアンバサダー。USGTF Teaching Professional、TPI Certified資格を所持。
理想的な“握り方”の追求が上達の近道
グリップはプレーヤーとゴルフクラブを繋げる唯一の部分です。プレーヤーがどう身体を動かそうとも、グリップを通じてしかキネティクスエネルギーを伝達させ、ゴルフクラブを動かすことはできない。よって、ゴルフはグリップにどのような直線運動(フォース)、または回転運動(トルク)を与えるかが全てと言って過言ではありません。
さらに、R&Aにより主にヘッドに規制の網がかぶされている現在、特に飛距離はグリップを通じてシャフトにどのように効率的なエネルギーを与えるかにかかっています。
ゴルフクラブが偏重心の重心系である以上、プレーヤーがグリップに与えるエネルギーによりゴルフクラブの挙動は全て物理現象として決まります。グリップの動きはHub Pathと言われ、それはランダムな3次元曲線です。よってプレーヤーそれぞれが独自に理想的なHub Pathを探し求めるのがゴルフ上達には欠かせないこととなるため、グリップをどう握るかは非常に重要です。では、プレーヤーはどうグリップを握るべきなのでしょうか。
クラブの握り方は道具によっても変わる
多くのツアープロがキャリアの途中でスイング改造を目指しますが、その多くが定着させることができずに失敗します。おそらくタイガー・ウッズはそのキャリアで常にスイング改造をしながら結果を出し続けている数少ない選手ですが、実はそのタイガーのグリップは変化し続けています。
道具の変遷もグリップの在り方に変化を与えてきました。全盛期の尾崎将司プロがウィークに握っていたのは、パーシモンやメタルの時代の重心距離の短いヘッドの特性と理想のリリースを実現するための工夫であったはずです。
当時のプレーヤーはインパクト直前までフェースを開き、手首を返してドローを打っていました。ヘッドが大型になり重心距離が長くなった現在では、フェースの開きを抑えるために左右のグリップをフックに握ることが主流となりました。つまりは、グリップは道具によって変えなくてはいけないし、プレーヤーが打ちたい球筋によって様々な握り方があって良いということなのです。
ただし、現代のゴルフクラブを前提とすれば合理的と考えられうるグリップはあります。スイング中にプレーヤーはその大きさやベクトルが常に変化するキネティクスエネルギーを与え続けますが、最も大切なタイミングはシャフトに積極的にエネルギーを与える切り返しの第一加速と、デリバリーポジションの第二加速の2つです。この連載で解説してきましたが、切り返しではグリップエンドを引くγフォースとシャフトを支えるαフォースの直線運動の合成でキャストさせ、そのまま強烈にグリップエンドをその時点でヘッドが描くべき円の中心方向へ引き続けます。
グリップには実は左手、右手それぞれの役割があることもJacobs3Dの解析結果として明らかにされています。ダウンスイング以降のゴルフクラブに与えるエネルギーへの貢献度としてはPGAツアーの一流選手でも左手が右手を圧倒します。
左手は主にグリップエンドへ引くフォースが主体であるため、左手の中、薬、小指の三本でしっかりとグリップを握ることが基本になります。右手の役割はグリップエンドを引き続けるベクトル(方向)の管理とデリバリーポジションからクラブヘッドをボールに向かわせるβフォースが主体となります。よって、プレーヤーのリリースの仕方により若干異なってきますが、右手人差し指の第二関節と第三関節の間でシャフトをしっかりと押せるようにどちらかというと横から絞るように握ります。もちろん、力学上必須であるシャフトの軸旋回が阻害されないようにグリップ全体の握りを調整することも肝要です。
ゴルフはあくまでもクラブが主役ですから、あまりにも物理特性の差が出てきたドライバーとアイアンのグリップの握り方を変えるのも一考に値します。
一方で、そもそもグリップをなんとなく握っているアマチュアプレーヤーの方は、一度しっかりとスクエアに握ることから始めて、ボールフライトからその因果関係を紐解いていくことをオススメします。
ゴルフリサーチャーTASK【世界のゴルフスイング事情】
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