「足→体幹→肩甲骨→腕」と身体を順序よくスムーズに動かせば、飛ばしのパワーはMAXに‼
ゴルフで美BODY|ゴルフピラティス/第17回 シークエンス(動きの順番)
スムーズでバランスいい効率的なスイングを手に入れるには、そのベースとなる身体作りや身体のメンテナンスが重要。そこで、おすすめしたいのが、ゴルフピラティスだ。
ゴルファーのために考案されたゴルフピラティスは、美的スイングの要となる身体作りに効果があることはもちろん、美しい姿勢作りやシェイプアップ効果、ケガの予防にもつながる。
今回は、シークエンス(動きの順番)について紹介する。
トップの“タメ”は“静止”に非ず! 動きが止まると、飛ばしのエネルギーもそこでストップ‼
今回のテーマ・シークエンス(sequence)とは、「連続して起こる順序」という意味です。ポーズを取って静止するヨガとは違い、ピラティスは常に動き続けて行うため、このシークエンスが重要になります。
スイングも、シークエンスがとても大切です。一連の動きをスムーズに、流れるように行うのが理想ですが、皆さんご存じのようにスイングはとても複雑な動きで、やるべきことがたくさんあります。
しかし、アドレスはこう、トップはこう、インパクトはこう、フォローはこう……というようにスイングを分断し、それぞれの型や注意点にばかり気がとらわれてしまうと動きがギクシャクし、地面から受け取ったエネルギーの流れも寸断されて、パワー不足になります。
止まっているように見えるアドレスも、プロは完全に動きをストップしているわけではありません。身体の中は、エネルギーが充満した状態です。ヘッドを軽く揺らしたり軽く足踏みをしたりしながらタイミングを図り、体勢が整ったらスムーズに始動~スイング。10秒も20秒も、じ~っとボールを見つめてはいませんよね。
トップでも同じです。プロのトップは、ゴムのように頭と足・グリップエンド側と左足(リードする足)で引っ張り合う力が働き、パワーがみなぎっている状態です。だから、シャフトがしなっているんです。
トップでピタッと静止したら、シャフトはしならず真っすぐのまま。バックスイング中に生まれた飛ばしのパワーも、ピタッと止まってしまう。つまり、スイングをトップからスタートさせるようなものです。特に、トップで「タメをつくる」ことを意識しすぎて、動きが完全に止まっている人が多いので、要注意です。
エネルギーをロスした、もったいないスイングをしないためにも学んでほしいのが、シークエンスです。
スイングのエネルギーは、まず、カカトをギュッと押し付けるように地面を踏みしめる足から生まれます。そして、ふくらはぎ、太モモ、股関節、お尻、お腹、体幹、肩甲骨、頭へと上り、腕を通してクラブに伝わります。
今回紹介する【ウインドミル】を、あえて足やお腹、お尻、体幹など全身の力を使わず、腕だけの力で上体を回転させてみてください。回転力は弱々しく、遠心力に負けて身体がふらつきやすいと思います。
続いて、下記の「★POINT」に注意しながら正しい方法で行うと、回転のパワーが全然違うことを実感するでしょう。回転力は強くなり、軸もブレにくい。足元もしっかりと安定する。ただし、結構キツイ(笑)。お腹やお尻にしっかりと利いているのが分かるはずです。セラバンドの力に負けないようにする、腕力も必要です。
というように、見た目よりもちょっとハードなエクササイズ【ウインドミル】ですが、エネルギーが足裏から下半身、上半身、頭、腕へと伝わっていくのを意識しながら、リズミカルに行ってください。
動きの順序をしっかり意識しながら、リズミカルに行おう
■【ウインドミル】
1.足を肩幅よりやや広めに開いて立つ。背骨をスッと伸ばし、おへそを背骨に引き込んでお腹を凹ませる。骨盤底筋も締めて引き上げ、お腹とお尻の筋肉で骨盤を支える。
2.セラバンドの両端をつかみ、腕を左右に真っすぐ伸ばして引っ張り合う。
3.その状態のまま上体を軽く前傾させ、ヒザを軽く曲げる。鼻から息を吸ってスタンバイ。
3.口から息を吐きながら、上体を左右交互にリズムよく回転させる(★POINT参照)。
4.これを10回繰り返す。
★POINT
・骨盤から動かして、上体を大きく回転させること。両腕だけ動かすのは×
・セラバンドがたるまないよう注意
・上体をひねった時のヒザの向きに注意。常に正面を向くのが正解
・足裏の拇指球・小指球・かかとの3点で地面を押し、左右均等に体重をかけて踏ん張ること
ピラティスで五感をフル活用できるようになると、ゴルフがもっと面白くなる!
ゴルフには、五感の力が必要です。五感とは視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚ですが、五感の力が鈍っているとクラブ選びを間違ったり、グリーンの傾斜に気づけなかったり、“想定外”のミスをしがちです。
特に、ゴルフは外で行うスポーツですから、天気や気温など自然環境に大きく左右されます。それに対応するには、五感が一番の頼りになります。
ピラティスは、その呼吸法によって脳や身体のすみずみにしっかりと酸素を行き渡らせていくのが特徴です。また、動かしている部位を頭(脳)でしっかり意識しながら行うため、“脳トレ”にもなるといわれています。
すると、五感が研ぎ澄まされていく感覚が得られるのです。
「グリーンの傾斜がきつい」「ここのバンカーの砂はわらかい」といったコースに関することだけでなく、「今日は肩の位置がちょっと前だな」とか「ターゲットに対して直角に構えられていない」とか、自分の身体の動かし方やちょっとした変化も五感で感じられるようになるのです。
すると、ゴルフがどんどん面白く、上手になっていきます。
自分のニュートラル正解(基本)が分かるようになるので、身体をリセットする能力もつきます。
打ちっぱなしで練習する時も、1球打ったら身体をリセット。グリップもアドレスも整え、ひと息入れてから次の1打を打ちましょう。
ただひたすらボールを打ちまくるより、効果的で効率のよい練習になります。
【おさらい】ゴルフピラティスって何?
健康的にゴルフを楽しむための体幹トレーニングで、効率的なスイングをマスター!
ゴルフピラティスとは、ネバダ州立大学のドリー・ケラベス教授と、私(竹内)が共同で開発したプログラムです。ゴルフピラティスのすべてのエクササイズはゴルフにつながっており、スイングを効率的に行うための身体作りを目的としています。
ゴルフピラティスの主な効果
体幹が鍛えられる
ゴルフピラティスは正しい姿勢や呼吸法をキープすることで身体のコアの筋肉に働きかけ、柔軟性が高く、ケガのリスクの少ない身体を作ります。
スイングを再現性の高い、シンプルなものに変える=安定感が増す
ゴルフピラティスを行うことで身体が正しく使えるようになると、余計に複雑になっていたスイングがシンプルで効率のいい動きになります。動きがシンプルであれば再現性が高くなり、スイングは安定します。これが、“効率のよい美しいスイング”です。
ケガを予防する=長くゴルフを楽しむことができる
ゴルフピラティスで骨格を本来あるべきポジションに戻し、正しい身体の使い方を習得しましょう。ケガのリスクが減り、長くゴルフが楽しめる身体になります。
PROFILE
竹内弓美子(たけうち・ゆみこ)
京都府出身。キャナリープランニング合同会社代表。日本女子プロゴルフ協会会員(ティーチングプロ資格A級)。アメリカLPGA T&CP クラスAメンバー。日本ピラティス指導者協会(JAPICA)ゴルフピラティス専門コース開発者。ネバダ州立大学公認ピラティス指導者。日本予防医学会会員。これまでに、のべ6万人以上のゴルファー指導に携わる。著書に、『もっと飛ばせる!ゴルフの体幹トレーニング~ゴルフピラティスでブレない軸をつくる』(スキージャーナル社)がある。ゴルフピラティスを活用した著書や講習等によってゴルフビジネスの地位を確立させ、2019年LPGAアワード「ゴルフビジネス賞」を受賞。
★現在、WEBレッスンの準備中(現在、スタジオは閉鎖中)。キャナリープランニング(https://www.canaryplan.co.jp/)のホームページでお知らせします。
MODEL PROFILE
宮谷優理(みやたに・ゆり)
京都府出身。職業は歯科医師。速水歯科医院(滋賀県)副院長。「竹内先生にご指導いただき、ゴルフ歴は半年ほど。まさに面白くなってきたところです」
写真/作田祥一
撮影協力/ロイ・マーケティングデザイン