キャロウェイ APEX PROアイアンの試打評価|高橋良明レビュー
プロや上級者が求める顔、打感、スピンコントロール性能。これらを妨げることなく飛距離ややさしさのアドバンテージを加えることができればアイアンは最高の武器となります。初めて中空構造を採用した『APEX PRO(エイペックスプロ)アイアン』がプロや上級者の理想にどこまで迫ることができたのか。「試打のスペシャリスト」高橋良明が検証します。
[目次]
キャロウェイ APEX PROアイアン総合評価
飛距離性能 | ★★★☆☆(3/5) |
---|---|
打球感 | ★★★★★(5/5) |
操作性 | ★★★★★(5/5) |
上がりやすさ | ★★★★☆(4/5) |
総合評価 | ★★★★★(5/5) |
キャロウェイ APEX PROアイアンの特徴
キャロウェイのフラッグシップ『APEXアイアン』シリーズの中でも上級モデルの『APEX PROアイアン』。
前作までのハーフキャビティから中空構造に生まれ変わると同時に7番以上の番手にはAIが設計した「FLASH(フラッシュ)フェースカップ」、全番手に前作を上回る重量の「タングステン・エナジー・コア」を搭載。
ボール初速のアップとスピン量の最適化により、マッスルバックのようなシャープなルックスながら従来以上の飛距離性能を実現。アスリートが思い通りの強い弾道で飛ばせる軟鉄鍛造アイアンになっています。
- 中空構造ながら見た目はマッスルバック並みにシャープ
- 高反発フェースと高スピンフェースを番手で使い分け
- タングステンパワーでロングアイアンも打ちやすい
特徴1.中空構造ながら見た目はマッスルバック並みにシャープ
『APEX PROアイアン』はシリーズ初の中空構造を採用。
前作はハーフキャビティでしたが、トップブレードが薄くオフセットの小さいシャープな形状は新製品にも受け継がれ、さらにバックフェースがマッスルバック風のデザインとなり精悍さを増しています。
また、ヘッドの内部には余計な振動を吸収するウレタン・マイクロスフィアを搭載。フェースの薄い中空構造でありながら軟鉄鍛造モデルらしいソフトで心地のいい打感を実現しています。
特徴2.高反発フェースと高スピンフェースを番手で使い分け
『APEX PROアイアン』ではとくに飛距離を出したい4番から7番にこのアイアン専用に設計された「FLASHフェースカップ」を搭載、高初速かつ適正なスピン量による安定した力強い飛びを実現しています。
また、飛距離を必要としない8番以下の番手にはボール初速を上げずにスピン性能と打感を高める「ツアーチューンド・フェース」を搭載。高いスピンコントロール性能を実現すると同時にラフから打ったときのフライヤーを軽減しています。
特徴3.タングステンパワーでロングアイアンも打ちやすい
中空構造になり使える余剰重量の増えた『APEX PROアイアン』は4番から7番までのヘッドの下部に前作のタングステンウエイトを大幅に上回る重さの「タングステン・エナジー・コア」を配置することが可能になりました。
その結果、細身のブレードにもかかわらず、低くて深い重心位置と高い慣性モーメントを実現。ロングやミドルアイアンでもボールがとても上がりやすく、当たり負けすることなく強弾道で飛ばせるアイアンとなっています。
キャロウェイ APEX PROアイアンのスペック
ロフト角はアスリートモデルとして平均的な数値で飛び過ぎない設定になっている。標準で用意されているシャフトは重めのスチールのみ。クラブ重量もバランスも重く、このアイアンを自在にコントロールするには相応の力量が必要だ。
メーカー | キャロウェイゴルフ |
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製品名 | APEX PRO アイアン(2021) |
ヘッド素材 | ボディ:軟鉄+ウレタン・マイクロスフィア+タングステン・インナーウエイト+スクリューウエイト フェース:17-4ステンレス |
番手/ロフト角 | 4I/23度 5I/26度 6I/29度 7I/33度 8I/37度 9I/41度 PW/45度 |
シャフト | スチール:Dynamic Gold(S200)、N.S.PRO MODUS3 TOUR105(S) |
長さ(#7) | 37インチ |
重量/バランス(#7) | 約447g/D3(Dynamic Gold)、約426g/D2(N.S.PRO MODUS3 TOUR105) |
価格 | 6本セット(#5〜9、PW):158,400円(税込)から |
公式サイト | キャロウェイゴルフ公式サイト |
キャロウェイ APEX PROアイアンを試打レビュー
「APEX」シリーズ初の中空アイアンは、アスリートゴルファーの期待に応えてくれるのか。プロゴルファー高橋良明が、顔、打感、操作性、飛びなど『APEX PROアイアン』の実力をさまざまな角度から診断します。
- 打感は芯の広いマッスルバックのような心地よさ
- フェースターンもヘッド軌道も思った通りに操れる
- 一発の飛びはないが安定した弾道でねらいやすい
打感は芯の広いマッスルバックのような心地よさ
ハーフキャビティの前作はいかにも軟鉄鍛造らしい打感が魅力でしたが、中空になった『APEX PROアイアン』も負けていません。
一般的に中空アイアンはフェースが薄くて中が空洞なので打感が硬くなりがちですが、『APEX PROアイアン』はそんな感じがまったくありません。むしろふつうの軟鉄鍛造キャビティの中でも相当やわらかい部類で、マッスルバックアイアンといわれて打ったらそう思う人もいるかもしれないくらいです。
マッスルバックとの違いはスイートスポットの大きさです。オフセンターヒットでも嫌な振動がなくてボール初速が出るので、芯が広がったような感覚です。
ソールの抜けがいいのも魅力で、パーンと打ったときにちょうどいい当たり具合で気持ちよく振り抜けます。
フェースターンもヘッド軌道も思った通りに操れる
コンパクトなヘッドと細身のシャープなトップブレードは中空アイアンに見えません。
オフセットの少ない太めのネックが操作性の高さを感じさせてくれます。実際にフェースのコントロールがしやすく、ソールが薄くどの角度からヘッドを入れてもきれいに振り抜けるので球筋を自在に操れます。ここまでシャープなソールは本物のマッスルバックでも最近あまり見かけません。
あまり薄いソールはリーディングエッジが刺さってしまう怖さもありますが、『APEX PROアイアン』の場合はバンスの効きもいいので安心です。また、『APEX PROアイアン』は重心が低いのでダウンブローでなくても打てます。
一発の飛びはないが安定した弾道でねらいやすい
マッスルバックアイアンと比べるとロフトが若干立っていて、ロフトなりの飛距離が出ます。
しかし、『APEX PROアイアン』はよけいに飛ばすというよりは、フェースの反発エリアが広く、オフセンターヒット時でも初速とスピン量が変わりにくく、飛距離を安定させてくれるクラブといえます。
また、タングステンの効果でスイートスポットの位置が下がっているのかリーディングエッジに近いところで打ってもボールが浮いてそれなりに飛びます。
キャロウェイ APEX PROアイアンがおすすめの人
誰にでもかんたんに打てるクラブとは決していいませんが、タングステンと中空の効果で見た目がマッスルバック風のアイアンとしてはかなり打ちやすくできています。少し前のツアーモデルのキャビティよりもやさしいのは確実です。
本物のマッスルバックに憧れているけれど、自分で使いこなせる自信がないという人には『APEX PROアイアン』がとっつきやすい入口です。
また、他のモデルと違ってトップブレードが薄いのでキャロウェイ好きの人にはけっこうとっつきにくいと思いますが、食わず嫌いせず一度は打ってみるべきです。打感の気持ちよさは病みつきになるでしょう。
もちろん、ハードヒッターやボールを曲げたい人はこのクラブがベストな選択肢になります。
キャロウェイ APEX PROアイアンの評価
シャープな見た目、優れた操作性、最高の打感プラス安定した高さと飛距離の出せるアイアン。
『APEX PROアイアン』は誰でも打てるやさしさではなく、上級者やアスリートにとってのやさしさを追求したモデルです。
とはいえ、低重心の中空構造になったことで間口はかなり広がっていて、中級者でも打てるくらいのやさしさはあります。
パワーはあるけれど打点が安定しない人や格好いいアイアンをバッグに入れたい人など一度は試して見る価値のあるクラブです。
テスター/高橋良明(たかはし・よしあき)
1983年生まれ、東京都出身。2013年プロ入会。サザンヤードCC所属。ツアーに挑戦するかたわら、ゴルフ専門誌やウェブメディアでテスターを務める。毎年出る新製品をほぼ打ち尽くす試打のスペシャリスト。
協力/サザンヤードカントリークラブ