ダンロップ スリクソンZX ハイブリッドの試打評価レビュー
試打のスペシャリスト・高橋良明の本気レビュー
ダンロップのアスリートブランド「スリクソンZシリーズ」は2020年のモデルチェンジを機に「X」の1文字をプラスした「スリクソンZXシリーズ」へと改称されました。その一員である『スリクソンZX ハイブリッド』にはどんな「プラスX」(プラスαの正しい表現です)が加わったのか。「試打のスペシャリスト」高橋良明が明らかにします。
[目次]
ダンロップ スリクソンZX ハイブリッドの総合評価
飛距離性能 | ★★★★☆(4/5) |
---|---|
打球感 | ★★★★☆(4/5) |
操作性 | ★★★★☆(4/5) |
上がりやすさ | ★★★★☆(4/5) |
総合評価 | ★★★★☆(4/5) |
ダンロップ スリクソンZX ハイブリッドの特徴
ツアープロの求める構えやすい形状と飛距離性能を追求して誕生した「スリクソンZXシリーズ」。
とくに構えやすさにこだわった『スリクソンZX ハイブリッド』にはプロの要望を採り入れて新たにグースネックを採用。アイアンに近い感覚で構えることができダウンブローで打ちやすい形状にリニューアルされました。
また、同シリーズのドライバーやフェウェイウッドにも採用されている「リバウンドフレーム」構造によりフェースの反発性能がアップ。ここぞ、というときには強弾道で飛ばせるユーティリティです。
- グースがついてアイアンのイメージで構えられるようになった
- 「リバウンドフレーム」でボール初速と飛距離アップを実現
- 高い反発性能と食いつく打感を両立する「HT1770鋼」
特徴1. グースがついてアイアンのイメージで構えられるようになった
前作『スリクソンZ H85』はフェースプログレッションが大きめで、トゥ側の輪郭の丸みのあるフェアウェイウッドに近いフォルムでした。アイアンタイプを好むプレーヤーにはアイアン型ユーティリティの『スリクソンZ U85』という選択肢がありました。
しかし、より球が上がりやすくてやさしいヘッドをアイアン感覚で使いたいというツアープロの要望に応えて、『スリクソンZX ハイブリッド』はデザインをリニューアル。
グースネック風の小さなフェースプログレッションはダウンブローをイメージしやすく、また、より直線的なトゥのデザインによりアイアンのようにフェースの向きを目標に真っすぐ合わせやすくなっています。
特徴2.「リバウンドフレーム」でボール初速と飛距離アップを実現
『スリクソンZX ハイブリッド』は、剛性が低くたわみやすいフレックスゾーン(フェースとフランジ)と高剛性でたわみを受け止めるリジッドゾーン(フェース周辺部とボディ)を交互に配置することでフェース全体のたわみ量を大きくしエネルギーを効率よくボールに伝える「リバウンドフレーム」を採用。従来モデルよりも平均的に高いボール初速が得られ、飛距離がアップします。
また、クラウンにステップ(段差)を設けることで重心位置を最適化。高い打ち出しと安定したスピンを実現しています。
特徴3. 高い反発性能と食いつく打感を両立する「HT1770鋼」
『スリクソンZX ハイブリッド』のフェースとボディには前作同様HT1770鋼とマレージング鋼が採用されています。
フェースのHT1770鋼は『ゼクシオフォージド』など軟鉄複合系アイアンのフェースにも多用されている高強度ステンレスで、比重が軽く重心設計の自由度が高い。
また、一般的なステンレス鋼よりもヤング率が高くたわみやすいため、球離れの速い弾き方ではなく食いついてから押し出すような上級者好みの打感が得られます。
ダンロップ スリクソンZX ハイブリッドのスペック
ヘッド体積、クラブ重量などスペックは前作とほぼ同じですが、グースネックでつかまりがよくなった分ライ角が2度ずつフラットになっています。シャフトは『スリクソンZX ハイブリッド』専用設計の『ディアマナZX』。50グラム台ですが先端が当たり負けしにくい設計です。
メーカー | ダンロップ |
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製品名 | スリクソンZX ハイブリッド ユーティリティ |
ヘッド素材 | ボディ:マレージング鋼 フェース:HT1770M鍛造 |
番手/ロフト角 | #3/19度 #4/22度 #5/25度 #6/28度 |
シャフト | カーボン:Diamana ZX for HYBRID(R、S) スチール:N.S.PRO 950GH DST(R、S)、N.S.PRO 950GH neo(R、S) |
長さ(#3) | 40.25インチ(カーボン)、39.75インチ(スチール) |
重量/バランス(#3) | 344g/D1(Diamana ZX for HYBRID、S)、388g/D2(N.S.PRO 950GH DST、S)、387g/D2(N.S.PRO 950GH neo、S) |
価格 | 37,400円(Diamana ZX for HYBRID、税込)、33,000円(N.S.PRO 950GH DST、税込)、34,100円(N.S.PRO 950GH neo、税込) |
公式サイト | ダンロップ公式サイト |
ダンロップ スリクソンZX ハイブリッドを試打レビュー
ツアープロの意見をフィードバックして作られた『スリクソンZX ハイブリッド』を高橋良明が試打。このモデルが売りにしている構えやすさ、操作性、飛距離性能について評価を下します。
- スクエアに構えやすく打ち込むイメージを出しやすい
- 高打ち出し・低スピンだから振れば振るほど飛ばせる
- 左右に曲げやすく、高い球でグリーンに止められる
スクエアに構えやすく打ち込むイメージを出しやすい
『スリクソンZX ハイブリッド』は前作と比べてスクエア感が強くとても構えやすくなりました。人によって見る場所は違うと思いますが、とくにスコアラインとトップブレードの下の部分がきれいな平行なのでぴたっとスクエアにセットアップできます。
また、前作はリーディングエッジが前に出ていてボールをすくうイメージが強かったけれど、今回のモデルはグースが入っているので少しハンドファーストに構えてヘッドを上から入れるイメージが持てるようになりました。ヘッドもそれほど大きくないので、ウッドのように払い打ってもアイアンのように打ち込んでも抜けはいいです。
高打ち出し・低スピンだから振れば振るほど飛ばせる
『スリクソンZX ハイブリッド』の打感はかなり軟らかく、ボールを弾くというよりはしっかりつかまえてからロフトの方向に押し出してくれるようなフィーリングです。球が右に滑るような感じや吹け上がりも少なく、振ったら振った分だけパワーがボールに伝わって、ある程度高さのある強い弾道で飛びます。
スピン量が少ないのでヘッドスピードが速い人ほど飛ばせます。ランも出るのでハードヒッターがティショットで使えばけっこう距離を稼げます。逆にヘッドスピードのあまり出ない人は打ち方にもよりますがスピン量が足りなくなって球が低くなる可能性があります。
左右に曲げやすく、高い球でグリーンに止められる
『スリクソンZX ハイブリッド』のコンパクトなヘッドは、アイアンのように上から入れたときもウッドのように横から払ったときも振り抜きがよく、フェースコントロールも思い通りです。弾きすぎず食いつくようなフィーリングも操作性の高さにつながっています。
フェース面はストレートに見えますがバルジの効果はしっかり出てくれて、ヒールに当てればちゃんとスライスしてくれますし、トゥに当てればフック回転がかかります。
スピン量は少なめですが、風に負けない低めの強い球が打ちやすく、逆に高い弾道でグリーンに止まる球もちゃんと打てます。
ダンロップ スリクソンZX ハイブリッドがおすすめの人
ネック形状がグースになったことで『スリクソンZX ハイブリッド』はアイアンが得意な人に打ちやすいユーティリティになりました。
ヘッドが小さめで操作性が高く、打点をずらすことでスライス系の球もフック系の球も打ちやすいので、ユーティリティでも真っすぐ飛ばすより自分で球筋を作ってねらっていきたい人にぴったりです。
逆にいえばヘッド軌道や打点のバラつき敏感に反応してしまうのでふだんから左右に曲がってしまう人には難しいクラブといえます。
アイアンよりも球は上がりますが、スピン量が少ないので高い球を打つにはドライバーのヘッドスピードで42m/s以上は必要です。スイングのパワーをロスなくボールに伝えてくれるので、ヘッドスピードが速ければ速いほど距離を稼げます。
ダンロップ スリクソンZX ハイブリッドの評価
ロングアイアンの代わりにターゲットをねらうクラブとして、構えやすさ、抜けのよさ、コントロール性能に磨きをかけてきたスリクソンの歴代モデルの中でも最新作の『スリクソンZX ハイブリッド』はアスリートゴルファーにとってまったく不満のないモデルです。
アイアン型ユーティリティに比べて重心が深くて球が上がりやすく、グースがあるのでアイアンのイメージで構えられます。いわばウッドとアイアンのいいところを足したクラブです。
また、ティショットは風に強い弾道で飛ばせるとことも魅力です。現役ばりばりのツアープロが求めている理想に限りなく近いユーティリティといっていいでしょう。
テスター/高橋良明(たかはし・よしあき)
1983年生まれ、東京都出身。2013年プロ入会。サザンヤードCC所属。ツアーに挑戦するかたわら、ゴルフ専門誌やウェブメディアでテスターを務める。毎年出る新製品はほぼ打ち尽くしている試打のスペシャリスト。