ベン・ホーガンが「開いていた右足」をスクエアにした意味
アイアンが際立つ!強いスイングの作り方[第13回]
1949年に自動車事故で重傷を負ったホーガン。だが、復活後のスイングは精度を増していた。オーバースイングがすっかり影を潜めたが、そのキーポイントは「右足の据え方」と森プロ。ホーガン流スイングの最後の改善パーツとは?
GOLF TODAY本誌 No.588 73〜77ページより
ホーガン流スイング作り【課題12】右足スクエアがムダを削ぎ落とす
左半身の故障でトップ体勢の考察が深まった
バスとの正面衝突で、助手席の妻をかばって左半身を潰されたホーガン。わずか1年で奇跡的な回復を遂げたが、ラウンドでは左足を軽く引きずるようなり、腫れることもあったという。
「それ以前のホーガンは、グリップの修正で手元は落ち着いたものの、ヒールアップしながら両手の位置を高くするトップでした。飛距離への欲求から、身体をフルに使っていた印象です。
ところが事故以降、左腕は両肩のラインと平行までしか上がらなくなります。それ以上振り上げると、左半身で引き下ろしづらくなったのかもしれません」(森)
結果、オーバースイングではなくなった。
「上下ではなく、前後に振るスナップ動作なら、手は肩のラインの高さで十分。ただし、軌道がさらにフラットになるぶん、体の回りすぎを抑える必要性を感じて、右足の向きを閉じたんです」(森)
事故前
事故後
“回したい”から自動的に回りすぎを抑える右足にする
逆ハの字スタンスから右足だけスクエアに
「体の回りすぎを抑えるのに、腰や肩の回転自体を抑制しようとすると、余計なテンションが生じて動きが悪くなります。右足を飛球線にスクエアに合わせると、右足内側に踏み込んでいるだけで右ヒザがブレず、体のフルターンを自然に一定にすることができます」(森)
右足はスイング中常に内側に踏み込む
「バックスイングでは右ヒザを正面に向けたまま動かさなければ正しいターンになります。ダウンを左腰のターンでスタートしても、右足がスクエアなら内側に踏み込んでいるだけでОK。右サイドのスナップ動作を促します」(森)
<右足で押し込むヒント>左腰を浮かさない水平ターンをマスター
ほうきドリル
スタンスを取り、腰のターンを意識して、ほうきで地面を掃いてみる。ほうきを胸の正面から外さない。フォローで左腰を浮かさないのがポイント。
クロスハンドドリル
①ノーマルのアドレスから、グリップだけクロスハンドに。両肩はほぼ水平にする。
②トップでは左腕を両肩のラインと水平にする。ヘッドは後方に遠くなって正解。
③左腰を浮かさず低いままターンさせることで、ヘッドを低く振り抜くことができる。
サイドスローの動きからフットワークをアレンジする
プレーンの概念も右足スクエアで完成形に至った
ホーガンのプレーン理論は右足スクエアで完成した、と森プロ。「プレーン理論の本質は、安定したトップの完成にあります。事故のせいにせよ、ホーガンは左サイドの動きをおとなしくして、まず左腕を両肩のラインに合わせた。
実際にはヘッド軌道よりはフラットですが、トップでの両肩のラインをプレーンとイメージすることで、常に両肩と手元の位置関係が一定になりました。
で、手元が低くても身体のワインドアップの感覚を強めるため、右足をスクエアにセット。『モダン・ゴルフ』では以前から行っていた、と述べていますが、おそらくこれはオープンスタンスのアイアンでのイメージでしょう。
動かない右ヒザ、スナップの準備でたたまれる右腕、両肩のラインに上がる左腕。これで十分な捻転と安定したトップポジションが決まり、ショット精度が上がったのです」(森)
基本形
右足をスクエアに内側に踏み込んだ状態なら、左腰のターンと連動してスムーズにサイドスローの動きができる。左腰が後方に下がると、右腰と右ヒジが前方に出ていく。
アレンジ
サイドスローの動きを目標方向ではなく、ボールへの打撃をイメージして下方に向かわせると、左脚が伸びる。インパクトのメリハリのイメージでフットワークが変わる。
ホーガンアナリスト
森 守洋
ベン・ホーガンを手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。
取材協力/東京ゴルフスタジオ
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