ベン・ホーガン ゴルフスイングにおける不変のベースとアレンジ要素の分け方
アイアンが際立つ!強いスイングの作り方[第14回]
スイングは、体調や年齢で日々変化するもの。大事なのは作り上げた基本動作は変えずに、アレンジ要素をどう取り込むか、と森プロ。ホーガンの場合は交通事故の重傷前後で、その考え方や方法が明確になっているという。
GOLF TODAY本誌 No.590 99〜103ページより
ホーガン流スイング作り【考え方】反復性と強打は外さない
〝打面〟を強く走らせるスイングを作る
ホーガンのスイング作りで学ぶべき点は、テクニックやメソッドだけではなく、その目的意識にもある、と森プロは言う。
「スイング作りでは、まず球に当てたい。次に真っすぐ、遠くに飛ばしたい。こういう気持ちで練習を重ねていくはずです。
ところが、スコアを気にするようになると、曲げたくない、加減したい気持ちが生まれ、何かしら動きにブレーキをかけるようになることがあります。すると、逆に曲がりやすくなったり、身体を痛めてスイングが壊れていきます。
ホーガンはフックに悩んでも強打、つまり〝打面〟を強く走らせて叩く動きは変えませんでした。実際、しっかり強く振る、ヘッドを走らせるほうが、ヘッド軌道や身体の動きが安定しやすく、反復性も高まります。
このベースを貫いたことで、交通事故の重傷からも早く復活できたのだと思います」(森)
強打=サイドスローの動き=スナップ動作が最優先!
ホーガン流スナップの要は「右手の背屈」と「ヒザの締め」
ベース1|右手甲をフルに背屈してフェース向きを感じ取る
「ホーガンの場合、フェース向きを操作するのは左手。右手はフェース向きを感じ取りながら、しなやかなスナップ動作を行うだけです。野球のサイドスローのように、トップでリキまずにしっかり背屈してクラブの動きを支えることがポイントです」(森)
ベース2|軽く両ヒザを締めると左腰がグルッと回る
「サイドスローのスナップ動作を促す身体のターンは、スイング軸をブラさないことが大切。軽く両ヒザを内側に締めておくと、ダウンで腰を鋭くターンさせても大丈夫。左脚を強く伸ばしても、ヘッドを低く走らせることができます」(森)
<左手の動きでアレンジ>グリップエンドのたぐり方を意識する
たぐり方の違いでプレーンも変わる
「左腕」の引き込み方で「スナップの入り方」をアレンジ
左手の締め込みに右手が追従する
左腕のローリングがたぐり込みに幅を持たせる
ホーガンの生涯の課題は〝左手のたぐり〟
スイング作りは、ベース部分を確立したら、アレンジ部分を決めてショットのバリエーションを増やすのが上達のコツ、と森プロ。「斜面などのライ、風雨などの天候、さらには体調や年齢による変化に対応するポイントを、自分なりに見つけることです。
一番やさしいのは、アドレスを変えること。ボール位置やスタンス幅などが基本のアレンジポイントになります」(森)
だが、ホーガンの場合はそれよりも際立ったアレンジポイントがあったという。
「〝左手のたぐり方〟ですね。ヒッコリーシャフトの影響か、トップでゆるめて甲側に折った左手を、内側に巻き込んでフェースコントロールを促していました。フックに悩み、解消するためにグリップ改造したのも、この動作を必要十分なレベルに抑えるためでした。
ホーガンのスイング変遷は、この部分の変化と言えます」(森)
ホーガンアナリスト
森 守洋
ベン・ホーガンを手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。
取材協力/東京ゴルフスタジオ
【アイアンが際立つ!強いスイングの作り方】
←ベン・ホーガンが「開いていた右足」をスクエアにした意味
ベン・ホーガン スコアを作る“決め球”の条件→
シリーズ一覧へ