ピン i59アイアンの試打評価|高橋良明の本気レビュー
2021年9月9日に発売予定のピンの新作『i59 アイアン』を試打のスペシャリストとして活躍するプロゴルファー、高橋良明にいち早く試打してもらいました。かつての傑作アイアン『S59』を思わせるコンパクトなブレードアイアン風の見た目からは想像もつかないほどの打ちやすさについてレポートをお届けします。
ピン i59アイアンの総合評価
飛距離性能 | ★★★★☆(4/5) |
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打球感 | ★★★★☆(4/5) |
操作性 | ★★★★★(5/5) |
上がりやすさ | ★★★★☆(4/5) |
総合評価 | ★★★★☆(4/5) |
ピン i59アイアンの特徴
『i59 アイアン』のコンパクトでシャープなフォルムは、かつてアスリートゴルファーに絶大な支持を得た名器『S59 アイアン』を思い起こさせます。しかし、どちらも見た目が似ているブレードアイアンながら「i」と「S」には大きな違いがあります。
『S59 アイアン』はステンレスヘッドのオーソドックスなハーフキャビティ。これに対して『i59 アイアン』は軟鉄鍛造ボディとステンレスフェースの中空部にアルミニウム合金のコアをインサートした複合構造を採用。この新構造により、ブレードアイアンの長所である打感と操作性に中空アイアンのメリットの寛容性を併せ持つアイアンとなっています。
- 打感と寛容性を両立させる「アルミ・コア・インサート」搭載
- ピン初採用の「鍛鉄鍛造ボディ」が極上の打感を実現
- スピンが安定する17本溝「マイクロマックス・グルーブ」搭載
特徴1. 打感と寛容性を両立させる「アルミ・コア・インサート」搭載
中空アイアンには深い重心位置と高い慣性モーメントにより、ミスヒットに対する強さや球の上がりやすさなどのメリットがあります。一方、一般的な中空アイアンはヘッド内部で共振が起こりやすく打感が今ひとつと評価されています。
『i59 アイアン』ではそのメリットを生かし、デメリットを解消するため、フェースとボディの間に軽比重で振動抑制効果のある「アルミ・コア・インサート」を搭載。周辺重量配分による高い寛容性とブレードアイアンのようなソリッドな打感を両立させています。
特徴2. ピン初採用の「鍛鉄鍛造ボディ」が極上の打感を実現
ピンのアイアンには長らく形状の再現性に優れるステンレス鋳造ボディが採用されてきましたが、『i59 アイアン』では軟鉄鍛造ボディが初採用されました。
『i59 アイアン』のボディに使われている1025カーボンスチールは、なじみのあるS25Cと同等の素材で、低炭素鋼独特の澄んだ打球音とやわらかい打感が得られます。
また、ボディ本体を中空構造とし、さらに高比重ウエイトをトゥに搭載することでブレードタイプのコンパクトアイアンとしては最大級の重量周辺配分を実現。ミスヒットに強いアイアンとなっています。
特徴3. スピンが安定する17本溝「マイクロマックス・グルーブ」搭載
『i59 アイアン』をかまえて気付くのはフェースのスコアラインの本数が増えたことです。最近はスピン性能を重視するウェッジでも溝の本数が増えてきていますが、『i59 アイアン』でも本数が13本から17本に大幅にアップ。
また、溝の断面形状と溝と溝の間隔も一から見直されたことで、ラフや濡れた芝など、様々な条件下においてフェースとボールとの摩擦力が増大。安定したスピン量によって、自分のイメージした通りの弾道でターゲットをねらうことができます。
ピン i59アイアンのスペック
7Iのロフト角は34度。最近の複合アイアンとしてはロフト角を寝かせた設定で、飛距離よりもねらいやすさを重視していることがうかがえます。標準シャフトには、日本シャフトの新作『N.S.PRO MODUS3 TOUR115』と『N.S.PRO 850GH neo』もラインナップされています。
メーカー | ピン |
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製品名 | i59 アイアン |
ヘッド素材 | ボディ:1025カーボンスチール鍛造 フェース:17-4ステンレススチール インサート:ADC12 |
番手/ロフト角 | 3I/20度 4I/23.5度 5I/27度 6I/30.5度 7I/34度 8I/38度 9I/42度 PW/46度 |
シャフト | カーボン:ALTA J CB SLATE スチール:N.S.PRO MODUS3 TOUR115、N.S.PRO MODUS3 TOUR105、N.S.PRO 950GH neo、N.S.PRO 850GH neo、DG EX TOUR ISSUE |
長さ(#7) | 37インチ(スチール) |
重量/バランス(#7) | 約431g/D2(N.S.PRO MODUS3 TOUR105)、約443g/D2(DG EX TOUR ISSUE・S200) |
価格 | ●カーボン 1本:41,800円(税込) ●スチール(DG EX TOUR ISSUE以外) 1本:38,500円(税込) ●DG EX TOUR ISSUE 1本:40,700円(税込) |
公式サイト | ピンゴルフジャパン公式サイト |
ピン i59アイアンを試打レビュー
まったく新しい構造と新溝形状が従来のブレードアイアンを覆すことができたのでしょうか。『i59 アイアン』のかまえやすさ、うちやすさ、打感、操作性、飛距離性能について高橋良明が本気で評価しました。
- 真っすぐに合わせやすく、かまえたときの安心感も大きい
- ヘッドの抜けがよく球筋をイメージ通りに操作できる
- ヘッド挙動とスピン量が安定しているから平均して飛ぶ
真っすぐに合わせやすく、かまえたときの安心感も大きい
すごくきれいなストレートネックなので、ターゲットに対して何の迷いもなく真っすぐにかまえられます。溝の本数が多いので余計にそう見えるのかもしれませんが、見た目がすごくコンパクトでいかにも操作性が高そうなイメージがあります。
かといってそれほど難しそうに見えないところは『i59 アイアン』の特色といっていいでしょう。ヒールに高さがあって、ボールを包み込むような感じがあるので安心してかまえられます。
打感もすごくいいですね。当たった瞬間はバチッと少し硬めの音がしますが、手のひらに伝わってくる打感がめちゃくちゃやわらかいです。ボディが軟鉄鍛造ですし、ただの中空ではなく芯にアルミニウムが入っている効果もありそうです。
ヘッドの抜けがよく球筋をイメージ通りに操作できる
『i59 アイアン』はコンパクトで細身な見た目の印象通りすごくコントロールしやすいアイアンです。
ソール幅は狭いけれど、けっこうバンスが効いているのでソールの抜けがよく、自分のイメージした通りにヘッドを入れてそのまま振り抜いていけるので、球筋の操作も思い通りにできます。ヒールから当てればフェード回転で球が上がってくれるし、トゥに当てればしっかり球がつかまってドロー回転で飛ばせます。
このサイズにしては打点が上下左右にブレても当たり負けしにくく、いろいろなライから打ってもスピン量がそんなに変わらないので、ターゲットを積極的にねらっていきたくなるようなアイアンです。
ヘッド挙動とスピン量が安定しているから平均して飛ぶ
7番のロフト34度もあるブレードアイアンなので本来飛ぶクラブではないはずですが、自分が思った以上に飛んでくれる印象です。これはソールの抜けがよく、インパクト時のヘッドの挙動が落ち着いていて、スピン量が安定しているため多少ミスヒットしても距離が落ちないからそう感じるのかもしれません。
実際のところミスには強く、かなりヒールの下めで当てても飛距離ロスはわずかですし、トゥに当てた場合は芯で打ったときとほとんど距離の差がありません。
『i59 アイアン』は飛び系アイアンのように余計に飛ばせるわけではありませんが、飛ばないショットを減らして平均飛距離で勝負できるアイアンです。
ピン i59アイアンがおすすめの人
かっこいいアイアンを使いたい人にはまず試してもらいたいのが『i59 アイアン』です。見た目は完全なアスリート系ですが、ロフトがあって球は上がるので意外と懐が広く、中級以上なら十分打ちこなせると思います。アイアンもとにかく飛んで欲しいという人には向きませんが、距離を安定させてねらいたい人にもおすすめです。
打点を変えるだけで球筋をコントロールできるのでドローやフェードを打ちたい人にも向いています。とくに昔からブレードタイプを使い続けている上級者にもぜひ試してもらいたいですね。
マッスルバックと比べても打感に遜色はなく、ミスに強くて同じ距離を楽に打てます。打ってみれば最新のブレードアイアンのすごい進化に驚くと思います。
ピン i59アイアンの評価
一言でいえばブレードアイアンと中空アイアンのそれぞれの長所だけを足したクラブです。見た目がすっきりしていて球筋のイメージが出しやすく、ヘッドの抜けがよくて打感もやわらかいので左右上下の球筋もかんたんに打ち分けられます。
その一方で球がしっかりつかまってくれて、ミスヒットにも強くて打点がズレたりライが変わったりしてもスピン量が安定しています。とくにラフからフライヤーしにくいので距離を計算しやすいと思います。
『i59 アイアン』は欲しい距離をイメージした球筋で楽に飛ばせるアイアンです。
テスター/高橋良明(たかはし・よしあき)
1983年生まれ、東京都出身。2013年プロ入会。サザンヤードCC所属。ツアーに挑戦するかたわら、ゴルフ専門誌やウェブメディアでテスターを務める。毎年出る新製品をほぼ打ち尽くす試打のスペシャリスト。