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世界ランク28位の稲見萌寧選手が銀メダルを獲得できた理由

レックス倉本のGOLFアメリカンな話”ちょっと聞いて〜や‼︎”/第7回

2021/08/11 ゴルフサプリ編集部

稲見萌寧選手が銀メダルを獲得したオリンピック女子ゴルフ。この嬉しい結果について、世界のゴルフトーナメントを取材し続けているレックス倉本氏が独自分析しました!

フェアウェイキープ率が稲見選手は85%とダントツで1位!

オリンピックが終わりましたね!日本ゴルフの銀メダル獲得はゴルフファンにとっては本当に嬉しい出来事でした。稲見萌寧選手の明るく物怖じしないプレーぶりは彼女のメンタルの強さと彼女のゴルフの好調さの勢いを感じずにはいられませんでした。今回は、そんな稲見選手の勝因とオリンピック女子の試合をスタッツの数字なども交えながら私なりに分析してみたいと思います。

今回世界ランキング28位の稲見選手がメダル争いに加わっていくことができた大きな理由は前提として日本ツアーで今年5勝を挙げていることから、間違いなく彼女のショートゲームのパフォーマンスが良かったはずで、特にパッティングが良かったということ、そしてランキング28位以上のパフォーマンスができる勢いもあったことがまず挙げられます。

彼女にとってプラスの要因になった鍵は、霞ヶ関カンツリー倶楽部のコースセッティングです。女子の試合に向けてコースは硬いセッティングになりました。フェアウェイが硬くなり、そのことによってコースが狭くなり、グリーンも同様に硬くスピードも速くなりました。その狭いフェアウェイのキープ率が稲見選手は1位で85%。2位が中国のリン・シユの75%。85%はダントツです。めちゃくちゃ凄い!

そして、注目すべきは8月の猛暑の中あんなに素晴らしいグリーンのコンディションを2週間も維持できたこと。

日本のメンテナンス技術は凄いです。これらはパッティングが好調の選手たちにとってはグリーン上でのアドバンテージを十分に発揮できました。ストロークゲインドパッティング(参加選手の平均、今回は30位の選手をゼロとしてその選手と比べてグリーン上でのパフォーマンスが4日間で何打良かったかという指標)という指標がありますが、稲見選手はこの指標でプラス2以上で最終日においてはトップ5に入っています。

男子金メダルをとったザンダー・シャウフェレ選手もこの指標が一番よくプラス3.742で5位でした。特筆すべきは女子の4位に入ったインドのアディティ・アショク選手は4日間の平均飛距離のランキングが参加選手60人中59位で後から2番目の飛距離にもかかわらずメダル争いに最後まで加わっていたのですが、ストロークゲインドパッティングが1位の13.019。これは平均の選手より4日間で14打良かったということでこれは考えられないような異常な数字です。これはグリーンの状態がいいからこそパッティングで勝負している人が最後まで自分の強みで成績を残せたということです。

さらに霞ヶ関カンツリー倶楽部の特徴は、メンバーコースであることからグリーンが比較的平らで尚かつ花道が使えること。今やメジャーの試合で花道を使って攻めることができるコースはほぼほぼなく、グリーン上でボールを止められる選手が上位にくるようなセッティングにする傾向にあります。稲見選手は世界のトップクラスの選手と比べるとボールを止める技術についてはまだ追いついていません。でも今回のコースではそれでも十分に戦えるコースセッティングでした。アショク選手も然りで200ヤード前後からのセカンドショットをうまく花道を使って攻めていました。

ということで、稲見選手の素晴らしいパフォーマンス(特にパッティングとショートゲーム)、メンタル面の強さ、それに加え、霞ヶ関というコースが日本人にとって戦いやすかったという要因がそろった中で、その千載一遇のチャンスを稲見選手がしっかりと掴んだ、ということだと思います。何よりもゴルフをすることを楽しんでいた稲見選手。自国日本でのメダル獲得という一生に一度あるかないかのチャンスをモノにした彼女の運の強さも素晴らしい。本当にお見事でした!

最後に、長年US LPGAツアーを見続けてきた経験として、僭越ならがこれからもっともっと日本の女子ゴルフがメダルに近づくための私なりの提案も少しさせていただきました。詳しくは下記「レックス倉本のBYTC GOLF」のYouTube音声動画で引き続きお楽しみ下さい。Podcast、Himalayaでも配信中。「レックス倉本」で検索してください。

写真/IGF、渡辺義孝

▼レックス倉本 プロフィール
本名は倉本泰信(くらもとやすのぶ)。1991年プロゴルファーに転向/コメンテーター歴14年広島出身。広島カープの大ファン。毎朝、目覚めとともにカープの試合状況をチェックするのが日課。大学時代をアメリカで過ごしたとき、唯一日本のブリヂストンのボール”Rexter”を使っていたのでゴルフ部のチームメイトから”REX”(レックス)と呼ばれるようになる。アマチュアゴルファー時代は、広島県の瀬戸内高校ゴルフ部からアメリカのオクラホマ州立大学を経てイーストテネシー州立大学ゴルフ部で腕を磨く。在学中には2度オールアメリカンに選出され、1990年に日本アマチュア選手権優勝、全英オープン出場を果たす。大学卒業後、1991年に日本のプロテストを合格しプロデビュー。その後、ヨーロピアンツアー、カナダツアー、アジアツアー、日本国内ツアー(1995年2部ツアーの賞金王に輝く)に参戦。2007年より米国ゴルフチャンネルでUS PGA Tour 、European Tour、US LPGA Tourなどのコメンテーターとして活躍。現在はフリーランスとしてGOLF TVでの解説のほか、 NHK、WOWOWでUS PGA Tour、US LPGA TOURの現地レポーターとしても活躍中。


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