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アジアパシフィック女子アマで橋本美月が優勝。得意のアイアンショットで300ヤードヒッターのボンタビーラップを下す
吉田洋一郎の「アジアパシフィック女子アマゴルフ選手権」振り返りレポート
アジアパシフィック女子アマチュアゴルフ選手権で、東北福祉大1年の橋本美月(19歳)が、同じく19歳のタイ出身、ナタクリッタ・ボンタビーラップとの首位争いに競り勝ち優勝。AIG全英女子オープン、オーガスタナショナル女子アマチュア選手権など4つのビッグタイトルへの出場権を獲得。この一戦を、ゴルフスイングコンサルタント・吉田洋一郎プロの解説で振り返る。
写真/アジアパシフィック女子アマチュア選手権
橋本美月が逆転でアジアで最強の女子アマに!
11月10日からUAE(アラブ首長国連邦)のアブダビGCで開かれていたアジアパシフィック女子アマチュアゴルフ選手権で、東北福祉大1年の橋本美月が最終日に3打差を逆転して、初優勝を果たした。この大会で日本人が優勝するのは、2019年の安田祐香に続いて2人目の快挙だ。これで、橋本は、2022年の全英女子オープンとアムンディ・エビアン選手権、オーガスタナショナル女子アマチュア選手権の出場資格を獲得した。
アジアパシフィック女子アマは、R&Aとアジアパシフィックゴルフ連盟によって設立された大会で、第1回大会は2018年開催のまだ若い大会だ。アジア太平洋地域のアマチュア女子ゴルフのトップアマが最強を競う大会で、優勝者には全英女子オープンなどへの出場資格が与えられる。第1回大会の優勝者はタイのアタヤ・ティティクルで、全英女子オープンでローアマチュアを獲得した後、20年にプロ転向した。19年の第2回大会は日本のザ・ロイヤルGC(茨城県)で開催され、安田祐香が優勝。安田もエビアン選手権でローアマチュアとなり、全英女子でも予選通過を果たした。
特にアジアのアマチュア女子ゴルファーにとっては、世界で戦うチャンスを与えられる大会であり、プロへの登竜門といってもいいだろう。ちなみにアジアパシフィックアマチュアゴルフ選手権は男子の大会もあり、2010年の大会では松山英樹が優勝。翌年のマスターズへの出場権を獲得し、日本人初のローアマチュアに輝いたことでも有名だ。今年の大会でも日体大3年の中島啓太が優勝した。
昨年の大会はタイのサイアムCCで開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大のために今年10月に延期。しかし、タイで感染拡大が終息していないため、UAEに開催地を変更して開催されることになった。
今回は、ゴルフ専門チャンネルのゴルフネットワークで解説を務めたが、出場選手の経歴を見ていて感じたのは、米国の大学に籍を置いている選手が多いということだ。世界各国の選手がアメリカの大学に進学し、ゴルフの腕を磨いている。日本人選手では、長野未祈がセミノール州立大3年、日本生まれでタイ国籍の立松里奈もオクラホマ州立大学で活躍している。
国内外の大きな大会で活躍するとプロ転向を目指す選手が多いが、あえて海外の大学に進んでさらなる成長を目指すというのも一つの選択肢だと思う。
プロは良い成績を残せば多額の賞金を得られ、世間の注目も浴びる。しかし、常に結果を求められ、技術に加え、強い精神力がないと生き残れない。その点、大学に進めば精神的にゆとりを持って試合に臨めるし、恵まれた練習環境もある。長野は大学で心理学や人間科学を学んでいるそうだが、ゴルフにも生きてくることだろう。
正確性の橋本と飛距離のボンタビーラップ
大会最終日は平均飛距離270ヤードを誇るタイのボンタビーラップ(19歳)が3打リードし、そのまま逃げ切るかと思われたが、最終日前半で橋本美月(19歳)が追いつき、後半11番でバーディーを取った後、リードを守り切って優勝した。
橋本は得意のアイアンショットが乱れる場面もあったが、我慢強いゴルフで勝利をたぐり寄せた。1打差でプレッシャーのかかる状況で勝ち切ったことは、今後の成長の糧となるだろう。
橋本のスイングはバックスイングでアウトサイドに上げ、ダウンスイングでインサイドから下ろす軌道で、PGAの選手で言えば、ウィル・ザラトリスのスイングに近い。ダウンスイングで下半身から切り返す動きは非常に力強く、日本の女子ツアー選手に交じっても、トップ10に入るスイングだと思う。ワイドスタンスのアドレスやウィーク気味のグリップ、体の動きでクラブをコントロールするところなどは松山英樹にも似ている。
今回の優勝で出場権を手にした4大会、AIG全英女子オープン、アマンディエビアンチャンピオンシップ、ハナファイナンシャルグループチャンピオンシップ、オーガスタナショナル女子アマチュア選手権でも力を出し切ってほしい。特に今年の4月に梶谷翼が制したオーガスタナショナル女子アマチュア選手権は、アイアンショットの精度の高い橋本には相性がいいのではないかと思う。
最終日に逆転されて涙を飲んだボンタビーラップも、男子並みの飛距離を持つスケールの大きいゴルフが印象的だった。飛距離で他の選手を圧倒し、橋本を「私の1Wとボンタビーラップ選手の3Wが同じくらいの飛距離」と嘆かせた。飛んで曲がらないプレースタイルと、シャットフェースで体の垂直軸回転で飛ばすスイングは、ダスティン・ジョンソンのようだった。
良い指導者と出会い、アプローチの引き出しを増やしてセカンドショットの精度を高めれば、メジャーでも活躍できる逸材だと思う。それにしても、ボンタビーラップのプレーは、女子も男子と同じように飛距離が物を言うパワーの時代に入ってきたと感じさせるものだった。
第一回大会では2位タイフィニッシュだった笹生優花、15位タイだったパティ・タバタナキットはそれぞれメジャーを制するまでに成長した。近い将来、橋本とボンタビーラップが女子メジャーを制する日が来るかもしれない。
解説
吉田洋一郎
よしだ・ひろいちろう/1978年生まれ。デビッド・レッドベターのメソッドを学んだ後、PGAツアーや欧州ツアーで指導するプロコーチ約100名から直接指導を受ける。米国や欧州でのティーチング資格を多数取得している。
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