「日本オープン」はS.ノリスの圧勝劇だったけれど、4打差あっても一球入魂だったもう一人の選手とは
世界の杉ちゃんが診る|今月の一打
プロキャディー・ゴルフ解説者の“世界の杉ちゃん”こと、杉澤伸章氏が現地からレポート! 今回は2位に4打差をつけて優勝したショーン・ノリスの『日本オープン』を解説。
GOLF TODAY本誌 No.594/71ページより
相手のプレーに惑わされず、集中し続けたノリス
結果だけを見れば「日本オープン」はショーン・ノリスが2位に4打差をつける圧勝でした。19アンダーという大会新記録を樹立したノリスですが、そこまでスコアを伸ばせたのは、どれだけ差があっても一球入魂のプレーを続けていたからだと思います。
最終日を迎えた時点でノリスは5打差のリードがあり、単独2位の小平智選手がスタートホールでトリプルボギーを叩いた時点で、さらに差が広がりました。それでもノリスは前半からナイスショットをすればガッツポーズをして、ミスショットをすれば悔しがっていました。相手のプレーにとらわれず、しっかり自分との戦い、コースとの戦いに集中できていたので、19アンダーまでスコアを伸ばせていけたと思います。
大型選手だが、実はパットが上手い!
188㎝、100㎏という恵まれた体型のノリスだが、飛距離を武器にするタイプではなく実はパッティングが上手い。部門別データでも平均パット数が7位。
キャディを務める弟は持病と戦っていた
ノリスのキャディを務めるのは弟のカイル。高血圧の持病があり、薬を処方しながらノリスのキャディを続けていた。
もう1人、一球入魂のプレーを続けていたのが池田勇太選手です。最終日に首位ノリスと7打差つけられていた池田選手。スコアだけを見れば優勝は難しい状況ですが、10番ホールまでに3つのバーディを奪うと、3打差まで縮めます。しかし、12番をボギーをとした時点で、ノリスの優勝が決定的になります。それでも池田選手は12番ボギーの後、13番で難しいパッティングのラインを決めてバーディ。さらに17番でもバーディを奪って、最終日は「67」の好スコアを出しました。
私は上手い選手と勝てる選手の差はここにあると思っています。プロゴルファーの中でも、実力はあっても優勝に手が届かない選手もいれば、優勝のチャンスが来たら、確実に勝ち切る選手がいます。ノリス選手や池田選手は間違いなく後者。勝ちきれない選手は優勝争いする相手が気になったら、他の選手のバーディ、ボギーが自分のプレーに影響しやすい。しかし、勝ちきる選手はそれがないので自分のプレーができれば優勝できる。今年の「日本オープン」は、勝てる選手2人の一球入魂のプレーを最後まで見れた1戦でした。
日本ツアー6年目で通算6勝をマーク
南アフリカ出身のノリスは16年から日本ツアーに参戦。参戦6年目で通算6勝をマークして、国内メジャーでも2勝している。
約25年振りにジャンボ尾崎の記録更新
優勝スコアの通算19アンダーは、1994年にジャンボ尾崎が出した18アンダーの日本オープン記録を約25年振りに更新した。
最終日はワンオンが狙える6番パー4でも、アイアンでティショットを打つなど安全策を徹底した。
杉澤伸章(すぎさわ・のぶあき)
1975年7月5日生まれ。02年から丸山茂樹の専属キャディとして米国ツアーを転戦。13年には宮里優作のキャディを務め、「日本シリーズ」での初優勝にも貢献。現在はゴルフ中継番組のレポーターとしても活躍。