ゴルファーがしがちな「マスクプレー」の注意点とは!?
生涯スポーツ・ゴルフと健康「末長くゴルフを楽しむために」|第4回
コロナ禍の冬場は、防寒代わりにマスクを着けてゴルフをする方を見かけます。しかし、ゴルフはもちろんスポーツ時のマスク着用には要注意。「熱がこもってムレることで、皮膚の乾燥を進めるからです」と、皮膚科の医師・松本美緒先生はいいます。ゴルファーがしがちな「マスクプレー」の注意点を教えていただきました。
■健康指導/松本美緒氏(サザンガーデンクリニック副院長)
ゴルファーがしがちな「マスクプレー」の注意点とは!?
マスクの中は赤ちゃんのオムツ内と同じ!
ゴルフのプレーをした後、「顔や手が乾燥してカサカサになっちゃった」という声をよく聞きます。冬場はどうしても空気が乾燥するため、さまざまな皮膚トラブルが起こりやすいのです。外気にさらされてゴルフのプレーをすればなおさらです。
ただし、乾燥の原因は季節や気候だけではありません。新型コロナ感染予防のために着けるマスクも乾燥を進めるのです。
「マスクを着けたままプレーした方が外気にさらされないから乾燥を防げるんじゃないの?防寒にもなって一石二鳥だし……」多くの方はそう思うかもしれませんが、実は誤解しているようなのです。
皮膚科医でサザンガーデンクリニック(東京都品川区)副院長の松本美緒先生は次のように説明します。
「マスクの中は赤ちゃんのオムツ内と同じ。そう例えられるほど、マスク内は湿度が高くなっている場合がほとんどです。自分の息が湿っているのはもちろん、歩いたり運動したりすれば汗をかきますから、冬でもムレるのです」。
皮膚のバリアが低下するとかえって乾燥は進む!
マスク内は湿度が高いなら乾燥とは無縁のように思えますが、実際には反対のことが起きます。
「湿度が高いと皮膚のバリアが低下します。それによって炎症が起きるなど肌トラブルが起こりやすい状態になり、かえって乾燥が進んでしまうのです。熱がこもるので、防寒面ではマスクをしていると暖かいでしょうが、乾燥対策としてマスクをつけているとしたら逆効果になります。乾燥や肌荒れは確実に進みます。皮膚のバリアが低下するというのは、角質の水分量が低下することによって外からの要因から皮膚を守る力が低下することを意味します」
(以下カギかっこはすべて松本先生)。
松本先生によれば、健康な人の肌の水分量は30%に近いのが理想です。ところが、冬場は乾燥によって30%以下になりがちだといいます。また40〜50代以上の女性の場合は、女性ホルモンの低下に伴い、もともと水分量が低下していることが考えられます。
スポーツタイプや天然素材を使ってムレを防ごう
この状態でマスクの着用による高湿度が皮膚のバリアの低下を招くと、さらに乾燥が進んで肌トラブルが起きやすくなるのは明らかです。皮膚のためにはマスクをしないに越したことはないのでしょうが、コロナ禍ではそうはいかない場合もあります。レストラン内やコンペの集合時などマスクが必須な状況から、そのままコースへ出ることもあるでしょう。
そういう時のためにも、どういう種類のマスクを使えば「ムレ」や「ムレによる乾燥」を防げるのか松本先生に教えていただきました。「感染予防のためにマスクを着用してプレーをするなら、不織布のような高密度のマスクを避け、通気性のいいスポーツタイプのものを選ぶといいでしょう。また、マスクによるかゆみやニキビにお悩みの方は、綿や絹やガーゼ素材の方が肌への刺激が少なくなりベターです」。
不織布のマスクより、ゴルフ用品メーカーのスポーツ用マスク、あるいは天然素材のマスクを使う方が肌トラブルを防ぐことができそうです。
マスクが擦れてニキビや肌荒れの原因に
ただし、せっかく素材を変えても、肌とマスクの端っこや紐が擦れてニキビ、肌荒れの原因になることは往々にしてあります。
「摩擦が生じることでやはり皮膚のバリアは低下するのですが、そこにアレルゲンや菌が入ったり皮脂の分泌が盛んだったりすると、かゆみやニキビが発生します。特に、頬や鼻の上の方、アゴ下、耳元は擦れやすいので気をつけてください。比較的鼻やアゴにフィットしやすいのは立体マスクですが、それでもしゃべるとズレますので摩擦をゼロにすることはできません」。
注意が行き届かない耳の後ろ側に要注意!
頬や鼻やアゴ下ほど注意が行き届かない耳元、特に耳の後ろ側も肌トラブルが起きやすい部分だそうです。
「耳の後ろ側は皮脂腺が多いのですが、冬場は汗をかかなくなって皮脂が炎症を引き起こし、脂漏性湿疹になりがちです。その場合は、皮膚がカサカサしたりかゆくなったりする症状があります。そもそも中高年の方は、新陳代謝の低下によって冬場はどうしても肌がカサカサします。さらにマスクによる摩擦が生じると症状は悪化しますので、着脱の際は摩擦が起きないよう気をつけましょう。特に、外すときは耳元の紐から水平方向に外すといいですよ」。
口を覆う部分を下に引っ張ったり紐を乱暴に外したりせず、耳元の紐に指をかけてゆっくり横向きに外すことが大切です。
18ホール使ったら新しいマスクにチェンジしよう
ここまでのお話で、ゴルファーにベターなマスクの素材、形状、外し方などをアドイスしていただきました。完璧に乾燥を防ぐことはできないにしても、これらを実行すればマスクによる肌トラブルを最小に抑えられそうです。
「ゴルフのラウンド中はもちろん、普段の生活でもマスクを着用して汗をかいたら、使い捨ての汗拭きシートで顔全体の汗をふき取ることが肌トラブル防止に効果的です。また、不織布のマスクを捨てるタイミングについてよくご質問があるのですが、ゴルフの場合は18ホール使ったらプレー後に新しいものに替えるくらいがよいでしょう」。
マスク生活は今年もまだまだ続きそうです。どうせ着けるなら素材や取り扱いにも関心をもち、マスクラウンドでも安心して行ないたいものです。
【乾燥のまとめ】
(1)皮膚が乾燥する原因
・マスク内のムレによる皮膚バリアの低下
・水分量の低下による皮膚バリアの低下
・加齢による新陳代謝の低下など
(2)マスクが誘引する症状
かゆみ、ニキビ、肌荒れなど
(3)トラブルが起きる部分
頬上部、鼻上部、アゴ下、耳元特に耳の後ろ側
(4)マスク選びのポイント
・高密度の素材を避ける
・通気性に優れたスポーツタイプを使う
・綿、絹、ガーゼなど刺激の少ない天然素材を使う
(5)マスク着脱時の注意点
・摩擦が起きないようゆっくり着脱
・耳元の紐を持ち、紐から横向きに外す
(6)その他の注意点
・汗をかいたらマスクを外し、使い捨てシートで顔全体を拭いてから着ける
・18ホール使ったら新しいマスクに替える
取材・文/野上雅子
松本美緒
サザンガーデンクリニック副院長(東京都品川区)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。順天堂大学病院、文京区慈愛病院、巣鴨皮膚科医院勤務を経て、2008年京成小岩皮膚科クリニック院長、2010年9月から現職。長年にわたり皮膚科一般外来および脱毛症専門外来等に携わる。小児皮膚科、大人のスキンケア、脱毛症、アトピー性皮膚炎、じん麻疹、ニキビ等を専門とする皮膚科のスペシャリスト。幅広い患者さんに丁寧な診察とわかりやすい説明で接し、厚い信頼を得ている。