パットの練習、車の運転もギックリ腰の原因になる!
生涯スポーツ・ゴルフと健康「末長くゴルフを楽しむために」|第3回
12月は腰痛の患者さんが急増します。その理由は、忘年ゴルフ、大掃除、くしゃみが引き金になりやすいから。さらに、そもそもの原因は前かがみの姿勢にあると、代々木あおいカイロプラクティックの秋山誠司院長は言います。プレー中前かがみの姿勢をよくとるゴルファーに、腰痛の予防法を教えてもらいました。
■健康指導/秋山誠司氏(代々木あおいカイロプラクティック院長)
パットの練習、車の運転もギックリ腰の原因になる!
ゴルファーの腰痛の大半はギックリ腰!
腰痛の3回目は、屈曲性腰痛について詳しくお話を伺います。原因のおさらいと対処法について考えていきましょう。
例年、12月と3月は、腰痛の患者さんが急増する時期だといいます。代々木あおいカイロプラクティックの秋山誠司院長は、その原因を次のように分析します。
「12月は大掃除、3月は花粉症の方がくしゃみの頻発をきっかけに腰痛を発症するケースが多いからなのです。冬場や年末年始は、ゴルフをして腰を痛めたといって受診される患者さんも目立ちます。ゴルファーの方の場合は、もともと日常生活で腰痛の要因が溜まっているところに、ゴルフのスイングで前かがみを連続して行なったり、深くかがんだりして腰に負担をかけたのをきっかけに屈曲性腰痛、いわゆる“ギックリ腰”を発症する場合がほとんどです」(カッコ内はすべて秋山誠司院長)
靴下を履く、顔を洗う動作も原因に
屈曲性腰痛は、もともと腰痛の要因が溜まっているところに何らかの刺激や負担がかかって引き起こされます。連載の1回目から秋山先生が言われている“コップの水理論”です。コップの水があふれた時に痛みが出ることをイメージすると、腰痛の治療や予防には、要因となる水を溜めないことが最も大事であることがわかります。
「屈曲性腰痛の要因となるのは前かがみの姿勢です。日常生活では、草むしり、床の拭き掃除、靴下やズボンを履く、顔を洗う、物を拾う、お辞儀をするなどの姿勢はわかりやすいと思います。ゴルフでは、ティアップする、ボールを拾う、パッティングの姿勢が典型です」
「気づきにくい動作としては、車の運転、デスクワーク、ソファーに沈み込んで座る、あぐらをかくなどの姿勢があります。『座っているのに前かがみなの?』と思われるかもしれませんが、自覚しにくいだけに要注意です。普通に立っているとき腰の部分の背骨は反るように軽くカーブしているのですが、車のシートやソファーに座ると本来のカーブとは反対に丸まり、前かがみと同じ状態になっているのです」
運動不足とデスクワークも高リスク
車の運転やデスクワークといった長時間の作業はもちろん、着替えや洗顔など日常のあらゆるシーンで前かがみの姿勢をとっていることに驚きます。これほど普通に、自然に行なっている前かがみの動作が腰痛の要因になるのは、なぜかというと、
「長時間にせよ短時間にせよ、腰を前に折る動作を繰り返し行なうことで、しだいに背骨の骨と骨の間でクッションの役目を果たしている椎間板が潰れてしまうからです。潰れたうえに変形していると、深く屈む、重いものを持つなど、ちょっとした負担が加わった時に神経を刺激して痛みを発症します」と、秋山院長は説明します。
1球打つごとに腰を伸ばす、振り切る
腰痛を予防するには前かがみの姿勢を減らすのが一番なのでしょう。とはいえ、ゴルフに行けば全ホールでティアップもボール拾いもしますし、パッティングに至っては練習もします。何に気をつけたらいいのでしょう。
「例えばパットですが、プロのようにボールを3〜4個並べ、前かがみのまま続けてボールを打つ練習をよくしますね。ふだんデスクワークが多く運動不足の方が、朝1時間も2時間も車の運転をしてきて椎間板が潰れたままそれをすると、ギックリ腰(屈曲性腰痛)を発症しやすいので気をつけてください」
「パットもアプローチも、練習する時は1球打つごとに腰を伸ばして椎間板を休めるのが理想です。ボールがコロがっている間は前かがみの姿勢を解き、カップに入ったらまた次のボールに向かうのがいいでしょう。ショットの練習では、1回ごとに必ずフィニッシュまで振り切るのがオススメで、フィニッシュをとらない連続打ちは厳禁です。丸まってしまった腰を1球ずつしっかり反らせることで、椎間板の負担はある程度リセットできます」。
筋トレはかえって腰痛を悪化させることも…
ここで注意してほしいのは「腰痛は筋力が弱いと起きるから、予防には腹筋背筋といった筋力アップが欠かせない」という思い込みだといいます。
「背骨の周りは網目のように筋肉で囲まれているのですが、筋肉は鍛えるほど収縮するため、椎間板が潰されて屈曲性腰痛のリスクはかえって高まるからです。筋肉が収縮すると血管も圧迫されて血行が悪くなり、椎間板にも栄養が行き渡りません。激しい筋トレをするほどいつまでも痛みが引かない悪循環に陥りがちなのはそのためです」
血行をよくして椎間板の栄養不足を補うには、お風呂で温めたり、歩行によりリズミカルで軽い刺激を与えることが最適。筋肉を鍛えて収縮させるのは逆効果なのです。ギックリ腰が癖になっているような方は、普段から椎間板が潰れて筋肉は血行が悪く、コップの水は常にあふれそうなくらいに一杯になっていると考えられます。筋力強化ではなく、前かがみのクセを減らし、椎間板を休める動作をとることで予防をしましょう。
股関節を使うと前かがみを避けられる
一方、洗顔や着替えなどに伴う毎日の前かがみ動作は、少なくすることはできません。どのようにしたらいいのでしょうか。秋山院長は、腰痛がクセになっている人や軽いしびれを感じているような方には、できるだけ股関節を使うことを勧めています。
「足を大きく開き、腰を曲げずに股関節から上体を前に倒していきます。格好いいとは言えないかもしれませんが、顔を洗うにはこの姿勢がベターです。物を拾うなら、さらにヒザと足首をしっかり使えばラクにできます。そのほかズボンをはく時はベッドや椅子に座る、リモートワークの時は椅子に浅くかけて骨盤を立てるなど、普段から前かがみや腰を丸めた姿勢をとらないよう常に気を配ることで、新しい習慣を作ってください」。
【屈曲性腰痛のまとめ】
・特徴
(1)刺すような痛み、足の痺れ、動かすと怖いという不快感
(2)前かがみの姿勢が大元の原因
(3)大掃除、くしゃみ、ゴルフなどで負担がかかって発症
・ゴルフ時の注意点
(1)ウォーミングアップ、クールダウン、寝る前のケアとしてストレッチを行なう
(2)ティアップやボールを拾う時は腰を曲げず股関節とヒザを使う
(3)パット練習時は1球打つごとに体を起こす
(4)ショット練習時は1球打つごとにフィニッシュをとる
・日常生活での注意点
(1)ズボンや靴は座って履く
(2)洗顔時や物を拾う時は足を開いて腰を曲げず、股関節から前傾する
(3)デスクワーク時は椅子に浅く座り、骨盤を立てる
・予防法
(1)体の使い方を工夫し、普段からできるだけ腰を曲げない
(2)湯船で腰を温め、血行をよくして椎間板に栄養を送る
(3)たくさん歩いて椎間板にリズミカルで軽い刺激を与える
取材・文/野上雅子
秋山誠司(あきやませいじ)
日本カイロプラクティック医学協会認定カイロプラクター。2009年東京都渋谷区に代々木あおいカイロプラクティックを開業。これまでのべ4万人以上の体の不調や痛みに対する施術を行なう。2020年ストレートネック対策枕「寝返りで姿勢を整える枕/キュアラインピロー」を開発し、東急ハンズやロフトなどで好評販売中。ゴルファーの体の痛みや不調にも理解が深い。著書に『ゴルフの上達を阻む“首の痛み”の正体とは!?』(辰巳出版)。
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