ファーマーズインシュランスオープンのグリーンはブロッコリーのように芽がボコボコ。ポアナ芝の難しさとは!?
レックス倉本のGOLFアメリカンな話”ちょっと聞いて〜や‼︎”/第15回
ファーマーズインシュランスオープンが開催されていたトーレパインズに行ってきました。いつ行っても美しい景色で海の青とゴルフ場の緑のコントラストが鮮やかでした。今年は例年とは違って20度前後の温かい微風が吹く素晴らしい天気のもとで、優勝争いも面白い展開となりましたね。今日は実際に見てきた難コースと言われているトーレパインズのそのわけと、プレーオフを戦ったルーク・リストとウィル・ザラトリスの2人について話します。
優勝したルーク・リストと惜敗したウィル・ザラトリス
初優勝を手にしたルーク・リストは大型選手で飛距離がすごく出る選手です。これまで何度か優勝のチャンスはあったんですが、最後でメンタルなのかな? 脆さが出て、これまで勝つことができなかったんですが、今回は見事に勝ち抜きました。
今回のリストは早い時間にスタートしていて、彼の頭の中ではジョン・ラームやジャスティン・トーマスらの強い選手が上位にいたので自分は優勝争いには絡まないけど、とりあえずできるだけ上位でフィニッシュしておこうというマインドセットでホールを進めて行ったら、結果的にプレーオフに行けたという状況だったと思います。そして、プレーオフの1ホール目で、素晴らしいバーディを奪えたことで優勝を手繰り寄せたという形ですね。初優勝をする上では理想的な展開になりました。
もう一人、どうしても初優勝をしたかったウィル・ザラトリス。去年のマスターズ、松山選手との優勝争いが記憶に残っている方も多いかと思います。非常にボールストライキングが上手い選手です。全米ジュニアで優勝をして、アーノルド・パーマーやカーティス・ストレンジらがいった名門Wake Forest大学を経たのち2018年にプロ入り。
下部ツアーのKorn Ferryツアーで活躍していたところ、一昨年の全米オープンの予選会がコロナの影響でなかったときにKorn Ferryツアーから数人に出場資格を与えられたのですが、ザラトリスもその1人として出場。
その全米オープンではホールインワンもして、尚且つトップ10フィニッシュも果たして賞金を稼ぎ、その資格で次のPGAツアーの試合にも出場してまたトップ10に入って……数試合試合に出場して賞金を稼ぎ、ツアーカードを獲得した去年の新人王です。
今年のオフにはウェイトトレーニングと、寝る前と起きてからの2回の食事法で体重を増やし、さらに先々週のアメリカンエキスプレスの試合からドライバーの長さを46インチギリギリまで長くして、そのコンビネーションで飛距離を15〜20ヤード伸ばして優勝争いに加わり、今回もプレーオフに進出。大躍進を続けている選手です。
難コースと言われているトーレパインズ(サウス)の何が難しいかといういうと、グリーンが西海岸の海岸線沿いによくあるポアナという芝なんですが、遅い時間になるとそのポアナが放射線状に芽を伸ばすんです。
なので、グリーンの表面がボコボコになります。ブロッコリーのように芽がボコボコ出てくるんです。ザラトリスの72ホール目のバーティパットはカップ間際でボールの転がりの勢いが弱まった時にポアナ芝で左に急激に曲がり、まさにポアナの影響を受けたと思います。
だから、このポアナ芝ではパッティングが計算できない。ということは、ティからグリーンまでコンスタントにボールを運べる選手に、絶対的なアドバンテージがあることになります。
そのため、ここでは毎年ボールストライキングがいい選手が勝ち抜いています。また、この時期はライ芝をオーバーシードするのでラフの密集度が高くなっていて、ラフが短くてもボールがスポッと沈み、なかなかスピンコントロールができません。なおさら、ボールストライキングがいい選手でないと上位には上がっていけません。トーレパインズの難しさはここにあります。
プレーオフに進んだリストとザラトリスはもともとボールストライキングがよく飛距離も出る選手です。リストのプレーオフでの3打目をそばで見ていましたが、あのショットは普段の優勝争いでのアドレナリンのコントロールプラス、日没間際でかなり暗くなり、さらに気温も時間が進むごとに下がって、実際の数字通りにショットを放つのがかなり難しい状況だったと思いますが、それらを見事にコントロールしてピンにベタっと寄せた神がかり的な素晴らしいショットでした。リストにとっては価値ある勝利だったと思います。
ここに書けなかったジャスティン・トーマスに3日目にインタビューした時の裏話や松山選手のプレーぶりなどなど、さらに詳しいお話の続きは、下記「レックス倉本のBYTC GOLF」のYouTube音声動画で引き続きお楽しみ下さい。Podcast、Anchorでも配信中。「レックス倉本」で検索してください。
▼レックス倉本 プロフィール
本名は倉本泰信(くらもとやすのぶ)。1991年プロゴルファーに転向/コメンテーター歴14年広島出身。広島カープの大ファン。毎朝、目覚めとともにカープの試合状況をチェックするのが日課。大学時代をアメリカで過ごしたとき、唯一日本のブリヂストンのボール”Rexter”を使っていたのでゴルフ部のチームメイトから”REX”(レックス)と呼ばれるようになる。アマチュアゴルファー時代は、広島県の瀬戸内高校ゴルフ部からアメリカのオクラホマ州立大学を経てイーストテネシー州立大学ゴルフ部で腕を磨く。在学中には2度オールアメリカンに選出され、1990年に日本アマチュア選手権優勝、全英オープン出場を果たす。大学卒業後、1991年に日本のプロテストを合格しプロデビュー。その後、ヨーロピアンツアー、カナダツアー、アジアツアー、日本国内ツアー(1995年2部ツアーの賞金王に輝く)に参戦。2007年より米国ゴルフチャンネルでUS PGA Tour 、European Tour、US LPGA Tourなどのコメンテーターとして活躍。現在はフリーランスとしてGOLF TVでの解説のほか、 NHK、WOWOWでUS PGA Tour、US LPGA TOURの現地レポーターとしても活躍中。
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