ヘッドスピードと飛距離の関係|速く振るコツや練習方法を解説
レベルが違っても、ゴルファーなら誰もがヘッドスピードを速くして、飛距離を伸ばしたいと思うものです。ゴルフは飛距離がすべてではありませんが、飛ぶほうが大きなアドバンテージを得られるのは事実です。
そこでこの記事ではどうすれば飛距離アップできるのかを、さまざまな角度から紹介します。ぜひ参考にして、今度のラウンドでドラコンをゲットしてください。
ヘッドスピードと飛距離の関係
ヘッドスピードとはインパクト時のヘッドの速さのことです。簡単にいうと打つ瞬間、ヘッドがどれくらいの速度で動いているかということになります。そしてヘッドスピードが速いほどボールに伝わる力が大きくなるため、遠くまでボールを飛ばすことができます。
遠くまで飛ばす要素はヘッドスピードだけではありませんが、わかりやすくいうとヘッドスピードが速い人ほど遠くまで飛ばせて、遅い人ほど飛ばせないということです。
飛距離は「ヘッドスピード(m/s)×5.5」で算出するのが一般的です。仮にヘッドスピードが38m/sだとすると、「38×5.5=209」となり、計算上の飛距離は209ヤードになります。
ただ飛距離はヘッドスピードだけで決まるわけではありません。そのためヘッドスピードの速さは、飛ばすための潜在能力が高いと捉えるほうがいいでしょう。
- ゴルフにおける飛距離の3要素とは
- ボール初速はヘッドスピードとミート率が関係
- ヘッドスピードに影響する要素
ゴルフにおける飛距離の3要素とは
飛距離を決めるのは「ボール初速」「打ち出し角度」「バックスピン量」の3つで、これを「飛ばしの3要素」「飛びの3要素」などといいます。
- ボール初速…インパクト直後、ボールが打ち出されたときの速さのこと。この数値が大きいほど飛距離を伸ばすことができる。
- 打ち出し角度…インパクト直後、ボールが飛び出した角度のこと。一般的に12~18度が理想の打ち出し角度といわれている。
- バックスピン量…打ち出されたボールにどれくらいバックスピンがかかっているかを示したもの。一般的に2,500~3,000回転ほどが理想といわれている。
飛距離アップを望む場合、上記の3つの数値を理想に近づける必要があります。
例えば筋トレなどを行ってヘッドスピードがアップしたとしても、それだけで飛距離が伸びるとは限らないのです。
ボール初速はヘッドスピードとミート率が関係
ヘッドスピードとミート率は、ボール初速の構成要素です。ボール初速は「ヘッドスピード×ミート率」で計算されます。飛距離の3要素のうち、打ち出し角、スピン量が一定と仮定すると、ボール初速を上げることで飛距離をアップすることができます。簡易計算になりますが、ボール初速の約4倍がドライバーの推定飛距離と言われています。
例えば、ヘッドスピード40m/sのゴルファーがミート率1.35で打ったとすると、飛距離は下記のように試算できます。
初速54m/s(ヘッドスピード40m/s × ミート率1.35)× 4 = 216ヤード
同じヘッドスピードでミート率を1.40にアップさせることができた場合の飛距離は下記の通りです。
初速56m/s(ヘッドスピード40m/s × ミート率1.40)× 4 = 224ヤード
ヘッドスピードがアップするとミート率が低下すると言われていますので、ヘッドスピード45m/sで、ミート率が1.30の場合の飛距離は下記の通りです。
初速58.5m/s(ヘッドスピード45m/s × ミート率1.30)× 4 = 234ヤード
ヘッドスピードに影響する要素
ヘッドスピードにはさまざまなものが影響します。
風が強いとスイングしたときにヘッドが風の抵抗を受けるため、ふだんほどのヘッドスピードは出ないでしょう。
重すぎるクラブも、速く振ることができないためヘッドスピードはアップしません。
体調がすぐれなければふだんのパフォーマンスを発揮できないため、ヘッドスピードは遅くなるでしょう。
着心地の悪いウェア、窮屈なウェアはカラダの動きを阻害するためヘッドスピードは上がらないでしょう。
ランディングエリアが狭いホールやハザードが気になるホールはプレッシャーがかかるため思い切り振れないことが多く、そのせいでヘッドスピードが上がりません。
ヘッドスピードに限らず、ショットはさまざまな影響を受けるため、飛ばすことばかりにこだわらず、粛々とプレーするほうが結果的に平均飛距離が伸びていることも多々あるでしょう。
ヘッドスピードの平均と飛距離の目安
男女共に平均スコアが100前後のプレーヤーを「一般」とした場合、平均ヘッドスピードと飛距離は下の表のようになります。
プレーヤー | 平均ヘッドスピード | 飛距離の目安 |
---|---|---|
一般男性 | 38〜40m/s | 210ヤード前後 |
一般女性 | 30〜33m/s | 170ヤード前後 |
男子プロ | 50m/s前後 | 275ヤード前後 |
女子プロ | 40m/s前後 | 220ヤード前後 |
ヘッドスピードが40m/sあっても、220ヤード飛ばせるとは限りません。ボールをつかまえることができず、いつもスライスばかりという人は180ヤード前後かもしれません。
またドライバーはチョロや引っかけ、チーピンばかりという人はヘッドスピードや飛距離とは無縁のレベルなので、まずは当てることを覚えるべきでしょう。
要するにヘッドスピードの速さで一喜一憂するのはナンセンス。ヘッドスピードはあくまでも“飛ばせる可能性がある”ということにすぎません。
ヘッドスピードの測定方法
前記したように、飛距離はヘッドスピードがすべてではありません。とはいえ、飛距離を知るための手っ取り早い手段であることには変わりません。そこで簡単にヘッドスピードを知るための測定方法についてお話ししましょう。
- ゴルフショップのスイング測定器で測定する
- ゴルフ練習場のシミュレーターで測定する
- 市販のヘッドスピード測定器で測定する
ゴルフショップのスイング測定器で測定する
ヘッドスピードを測定するための手段その1は、ゴルフショップで測定してもらうことです。試打ルームのあるゴルフショップは必ず弾道測定器を備えているため、そこで測ってもらいましょう。
とはいえ、何も購入せずに「ヘッドスピードだけを測ってください」とは言い難いかもしれませんが、クラブの購入を検討したいので、測らせてもらえるかを店員さんに伝えてから測ってもらいましょう。
ゴルフ練習場のシミュレーターで測定する
ヘッドスピードを測定するための手段その2は、シミュレーターのあるゴルフ練習場へ出かけることです。
最近は弾道測定器のある打ちっぱなし練習場が増えました。測定器を使うにあたり使用料がかかるところもあれば、無料のところもありますが、いずれにしろ自分一人で測定できるためとても気軽です。
ヘッドスピードを知りたいなら、まずはこのような練習場へ出かけてみましょう。
市販のヘッドスピード測定器で測定する
ヘッドスピードを測定するための手段その3は、市販されているヘッドスピード測定器を購入することです。
ボールの後方に置いて使用する小型の測定器を購入すれば、好きなときに測れるためとても便利です。安価なものなら1万円程度で購入でき、ヘッドスピードのほか、飛距離やミート率などもわかるため、自分の実力をデータで知りたい人にはおすすめです。
ヘッドスピードを上げるコツ【スイングのポイント】
ここではヘッドスピードを上げるコツやポイントを紹介します。コツといえども、ある程度、練習の必要があるものもあれば、すぐに取り入れられるものもあります。
どれが合うかは人によりますが、ここに紹介するものもぜひ試してみてください。きっと効果がありますよ。
- グリッププレッシャーを弱くする
- ムダなチカラを入れず、手首を柔らかく使う
- 腰の回転など、下半身のチカラも使う
グリッププレッシャーを弱くする
ヘッドスピードを上げるスイングのコツその1は、グリッププレッシャーを弱くすることになります。
グリッププレッシャーをできるだけ弱くすれば、スイングを変えなくても必ずヘッドスピードがアップします。その結果、インパクトゾーンでヘッドが走り、飛距離アップの可能性がグンと広がります。
アマチュアゴルファーはグリップを握る力が強すぎます。強いほど手首や腕はしなやかに動きません。その状態でいくら力一杯振ったとしても、ヘッドスピードが上がるわけがありません。
ムダなチカラを入れず、手首を柔らかく使う
ヘッドスピードを上げるスイングのコツその2は、スイング中は手首を柔らかく使うことになります。手首を固めずに、柔らかく使えば、インパクトゾーンで淀みないリストターンが発生するためヘッドが走ります。
ヘッドが走れば、自ずとヘッドスピードもアップし、そのぶん、飛距離アップの可能性が高まります。
手首を柔らかく使うポイントは、いわゆる“スナップをきかせる”イメージをもつこと。
このイメージがあれば、手首に余計な力が入ることはありません。
腰の回転など、下半身のチカラも使う
ヘッドスピードを上げるスイングのコツその3は、下半身をしっかり使うことになります。
よく言われるように、手や腕だけでスイングしてもヘッドスピードはそれほど速くなりません。
腰の回転や足の踏み込みといった下半身の力と連動させることがとても大切です。腰をスピーディに切るのも、左足をグッと踏み込んで地面反力を使うのもOK。
さらに基本的なことですが、切り返しを下半身リードで行うことも重要。これらを意識すれば手打ちにならず、ヘッドスピードは速くなるでしょう。
ヘッドスピードを上げるためのシャフトの選び方
筋トレをしてフィジカルを鍛えたり、スイングを改造するのはどうも…という人も多いはず。
そんな人はシャフトに注目してみましょう。自分に合ったものをチョイスするだけで、ヘッドスピードアップの可能性が高まるはずです。
- 自分に合った素材・硬さを選ぶことがポイント
- シャフトの素材はカーボン・スチールの2種類
- シャフトの硬さとヘッドスピードの関係
自分に合った素材・硬さを選ぶことがポイント
ヘッドスピードをアップして、いまよりもっと飛距離を伸ばしたいと思うクラブは、なんといってもドライバーでしょう。
ドライバーのシャフトは基本的にカーボンで、メーカーによって特徴はさまざま。そのため試打をしてから選ぶのが無難です。
流行っているからとか、評判がいいからといった理由で試打をせずに購入すると、失敗することが多々あります。試打をするときにシャフトの特性や硬さなど疑問があったら、フィッターにきちんと訊いて、納得のいくものを選びましょう。
シャフトの素材はカーボン・スチールの2種類
ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッドのシャフトはカーボンが主流です。少数派ですが、これらのクラブにスチールシャフトを挿している人もいます。
アイアンはスチールを使っている人が比較的多いようです。シニア層や女性はカーボンの使用率が高いといえます。
最近はカーボンとスチールをミックスしたコンポジットシャフトも人気があるようです。どの素材のシャフトにしろ、リシャフトするときはきちんとフィッティングを行い、自分のフィーリングと試打データを合わせ見ることが大切です。
とはいえ、スコアも性能も二の次というなら、見た目のカッコよさで選ぶのもアリです。
シャフトの硬さとヘッドスピードの関係
一般的にヘッドスピードが速い人は硬いシャフト、遅い人は軟らかいシャフトがマッチするといわれます。
速い人が軟らかいシャフトを使うと、しなりすぎてしまうからよくない、というのが主な理由です。
遅い人が硬いシャフトを使うと、しならないから飛ばせない、というのが主な理由です。
とはいえ、ヘッドスピードが速いけれど、軟らかいシャフトを使っている人もいます。逆に遅いけれど、硬いシャフトを使っている人もいます。一般論を気にせず、自身のフィーリングや振り心地のよさで選んでも問題はありません。
逆にデータに基づいて選ぶのもアリ。ある程度の時間は必要になりますが、いろいろなシャフトを試し打ちして、そこから選ぶのがもっとも間違いがないでしょう。
ヘッドスピードを上げる練習方法
ここではヘッドスピードを上げるための練習方法を紹介します。もっと飛ばしたいと切に願うなら、ぜひ試してください。一朝一夕とはいきませんが、継続すれば必ず効果があるはずです。
- とにかく、フィジカルトレーニング
- 重いクラブやマスコットバットで素振りをする
- トレーニングと並行してストレッチを必ず行う
とにかく、フィジカルトレーニング
ヘッドスピードをアップさせたいなら、四の五の言わずに、とにかくフィジカルトレーニングを行いましょう。筋トレはもちろん、ランニングや水泳、ストレッチなど、徹底的に体を鍛えることが重要です。
トレーニングによってカラダのパフォーマンスがアップすれば、クラブを速く振ることができます。その結果、ヘッドスピードも上がります。
自宅周辺をランニングしたり、自室で腕立て伏せや腹筋運動を行えば、わざわざジムに通う必要もなく、出費も抑えられます。
重いクラブやマスコットバットで素振りをする
トレーニング用の重いクラブやマスコットバットで素振りをしましょう。毎日最低でも100~200回振れば、筋力がついてヘッドスピードが上がるでしょう。
ゴルフに限らず、カラダのパワーをアップさせるにはフィジカルを鍛えるほかありません。それをせずにヘッドスピードアップを望むのは、都合がよすぎるのかもしれません。
素振りのために出費したくないなら、クラブを2本持ってやりましょう。サンドウェッジとアプローチウェッジで行えば、およそ800グラム程度になるため効果的です。
トレーニングと並行してストレッチを必ず行う
トレーニングによって筋力がアップしても、体がしなやかに動かなければ、スムーズなスイングができないためヘッドスピードは上がりません。
しなやかな体をつくるには、ストレッチなど、柔軟体操的なトレーニングが効果的です。
体が柔軟になれば淀みないスイングができ、またケガ防止にもつながり、一石二鳥です。
昔と違い、ゴルフもいまや立派なアスリートスポーツ。体を鍛える、体を整える。これなくしてヘッドスピードアップは叶いませんし、スコアアップも望めません。
ヘッドスピードと飛距離の関係についておさらい
飛距離にもっとも関係するのは飛ばしの3要素。でもヘッドスピードがアップすれば、飛距離もそれなりに伸びてきます。
3要素を向上するにはスイングの精度を上げる必要があります。でもヘッドスピードは体を鍛えればいいので、ある意味手軽。ですので今日から、いえ、いまからフィジカルを鍛えましょう。それが近道です。
■解説者プロフィール
宮川岳也(みやかわ たけや)
ゴルフ雑誌編集記者を経て、フリーランスのゴルフライターへ。USGTFティーチングプロ資格を有し、現在は埼玉県の練習場でレッスン活動も行っている。