炎天下のラウンドを乗り切る裏ワザ!グローブを外して、両手のヒラを冷たいタオルやペットボトルで冷やすだけ
生涯スポーツ・ゴルフと健康「末長くゴルフを楽しむために」|第16回
夏ゴルフは、熱中症に注意しなければなりません。特に炎天下でのゴルフには、万全の準備でのぞみましょう。
ラウンド中こまめに手のひらを冷やすと体温の上昇を防げる!
梅雨明けの急な「暑くなり始め」に警戒する!
関東・甲信越地方地方では、梅雨明け前から急に35度を超える猛暑となりました。残暑が落ち着く9月までは、熱中症予防を念頭に置いて日常生活をする必要があります。
熱中症は単なる水分不足ではなく、その時の体調等によっては命にかかわる危険もありますので、決して軽く見てはいけません。
脳や心臓へ運ばれる血液を冷やすことが重要
プロゴルファーをはじめ、多くのトップアスリートのトレーニングやコンディショニング指導に定評がある医学博士の末武信宏氏に、熱中症の予防に欠かせないポイントを改めて教えていただきました。
「もし明日、明後日にもゴルフをしに行く方がこれを読んでいたら、ぜひ実行していただきたいのは、ゴルフのラウンド中に手のヒラと首筋に冷たいタオルを当てて冷やすことです。カートに乗る、ショットの順番を待つ、ちょっとした間にこまめに首筋や、グローブを外して手のヒラを冷やしてください。首の両サイドのやや前側にある頸動脈、経静脈を冷やすと、脳や心臓へ運ばれる血液が冷えることはよく知られています。実は、意外と知られていないようですが、手のヒラを冷やすことにも同様の効果があるのです。冷たいタオルは、濡れタオルの間に氷をはさんでジプロックに入れ、保冷バッグでコースに携行するのがオススメです」。
手のヒラは毛細血管が豊富な「ラジエーター」
確かに、ゴルファーはよく首筋に冷たいペットボトルを当てたりして冷やします。一方、手のヒラを冷やすと熱中症予防に大きな効果があることはあまり知られていないかもしれません。
「手のヒラを冷やすことで熱中症を予防し、スポーツのパフォーマンスを上げる。これはオリンピックの競歩選手への指導から始まり、今では多くのアスリートが取り入れています。というのも、手のヒラにはさまざまな毛細血管が網目のように張り巡らされているため、手のヒラを冷やすことで体内をめぐる血液を冷却することができるからです。車にたとえると、ラジエーターの機能をもっているようなものです」。
末武先生によると、熱中症がこわいのは、体温が高くなることによって脳をはじめ中枢神経にダメージを与えるからだといいます。中等度になるとボーッとするのはそのためですが、そうなる前に血液を冷やして体温を上げないことが大切です。
体温調整を司る自律神経の負担を軽くする
「人は、体温が1度上昇すると体が動かなくなり、3度上昇すると生命の維持が困難になります。ですから暑いときは汗をかいて、気化熱により体を冷やして体温の上昇を防ぎ、熱に弱い脳や神経を守っているのです。発汗や体温調整をコントロールするのは自律神経なのですが、ゴルフは元々ストレスが多く、心身に緊張を強いるスポーツです。炎天下では自律神経にさらなる負担がかかり、オーバーワークになって体温調整ができにくくなりがちです。悪循環を防ぐためには、手のひらや頸動脈を冷やして血液、そして脳を冷やし、自律神経と整えて働きやすいようにすることが重要です」。
近々ラウンド予定のある人は、冷たいタオルやペットボトルを携行して、首筋だけでなくグローブを外して両手のヒラを冷やしましょう。
JGA推奨の熱中症を予防する6カ条を確認
もちろん、水分補給も忘れてはいけません。ここで一般的な熱中症予防の注意点を確認しておきましょう。
日本ゴルフ協会では、公式ホームページ「新型コロナ対策と熱中症予防(社会福祉法人恩賜財団済生会)」として次の6つのポイントを挙げています。
1定期的にマスクを外す(10分に1回1分外し、水分を補給する)
2エアコンと換気(30分に数分ていど換気する)
3暑さに慣れる(適度に運動する)
4こまめな水分補給(1日1.2〜1.5Lを目安に6〜8回に分けてとる)
5食事をしっかりとる(タンパク質を含んだバランスのいい食事をとる)
6十分な睡眠で休養をとる(6時間程度の睡眠をとり体を回復させる)
1、2、3、5、6は、日常生活での注意点ですが、ゴルフ直前の1〜2週間は特に気をつけて行ないましょう。特に6は、体調に大きな影響がありますので、ゴルフ前日は必ず守りたいものです。
塩分不足によるこむら返りは熱中症の入口
また、4の水分補給については、末武先生に補足アドバイスをしていただきました。
「個人差はありますが、ゴルフで18ホールを回ると1〜2リットルの汗をかくといわれます。水分補給の目安は1時間で500ml、ハーフで1リットルになります。よくいわれることですが、喉が乾いてから飲むのではなく、最初から毎ホールこまめに、ちょこちょこ飲むことが大切です。カートに乗っている時とかティーイングエリアでとか決めず、ペットボトルを持ち歩いて1ホールに数回飲んでいただきたいと思います。水でもお茶でもスポーツドリンクでもいいのですが、夏場は汗とともに失われた水分やミネラルを効率良く補うことができるスポーツドリンクがオススメです」。
「塩分をとることも重要です。汗と一緒に塩分も排出されて血液中のナトリウム濃度が低下すると、ご経験のある方もいると思いますが、筋肉痛、筋肉のこむら返り、めまいなどがあらわれるからです。異常な量の汗をかくこともあります。これらの症状は軽症の場合で、中等症に進むと、頭痛、吐き気、倦怠感、虚脱感、意識障害といった症状がみられます。さらに重症になると、けいれん発作や意識障害をまねいて命を落とすこともあります。必ず塩飴などを用意してハーフに1〜2個口に入れる、茶店や食堂に小梅干しが置いてあれば2〜3個いただくようにしてください」。
ハーフで500ml2本と塩あめ2個は必須
末武先生のお話から、ハーフで500mlのペットボトル2本と塩飴を2個もつことは必須といえそうです。足りない場合はゴルフ場で買ったり食堂の氷水サービスを利用したりするにしても、自宅から前半のハーフ分だけでもペットボトルごと凍らせたり冷やしたりして多めに持って行き、スタート前から少しずつ水分補給をすることが大切です。
そのほかに帽子、日傘、速乾冷却素材のウェア、氷のうなどを利用する。最近は、ネッククーラー、冷却スプレー、アイスパックなど熱中症対策グッズがさまざま開発されています。それらを積極的に使い、また日陰や少しでも風通しのいいところに身を置くなど小さな工夫を重ねて体温の上昇を防ぎ、熱中症を予防しましょう。
熱中症から身を守るには、ゴルフ当日の水分補給や冷却が欠かせないのは言うまでもありません。さらに、できればラウンドの2週間くらい前から「暑熱順化」を取り入れることが重要です。日常生活を通して暑さに慣れ、体を動かして、夏場の18ホールをしっかり回れる体を作りましょう。
【熱中症のまとめ】
(1)発症しやすい時期
梅雨の晴れ間
梅雨が明けて急に暑くなったとき
体がまだ暑さに慣れていないとき
7月下旬からお盆休みにかけてピーク
(2)熱中症を招く要因
気温が高い、湿度が高い、輻射熱が多い
(3)熱中症の症状
軽症…筋肉痛、筋肉のこむら返り、めまいなど
中等症…頭痛、吐き気、倦怠感、虚脱感、意識障害など
重症…けいれん発作、意識障害など
(4)有効な冷却部位
首筋、手のヒラ、足の裏、ワキの下など
(5)水分・塩分補給
ハーフで1リットルが目安
喉が乾く前からこまめに飲み不足させない
塩あめやタブレットで塩分も補給
(6)その他の予防法
帽子、日傘、速乾冷却素材のウェア、氷のう、ネッククーラー、
冷却スプレー、アイスパックなど熱中症対策グッズを利用する
日陰や少しでも風通しのいいところに立つ、歩く
取材・文/野上雅子
・健康指導/医学博士 末武信宏氏(さかえクリニック院長、先端医科学ウエルネスアカデミー副代表理事、順天堂大学医学部非常勤講師、トップアスリート株式会社代表取締役)
日本美容外科学会認定専門医。アンチエイジング診療を行なうかたわら順天堂大学医学部でスポーツ医学の研究に従事。五輪選手をはじめ、さまざまな競技選手への治療およびトレーニング、コンディショニング指導で実績を積み、トップアスリートらから厚い信頼を得ている。テレビや雑誌、講演会など多方面で活躍中。著書も多く、先の6月21日には、監修をつとめる『スポーツのパフォーマンスを最強にする超肺活』(カンゼン)が出版された。
http://n-suetake.com
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