「マネジメントがよくなってきている」と本人も評価
アムンディエビアンチャンピオンシップ最終日、西郷はベストスコアタイの7アンダーでプレーして上位陣を猛追。一時は首位に並ぶほどのプレーで、9打差15位タイから3位タイにジャンプアップして大会を終えた。
西郷にとっては全米女子オープン、全米女子プロに続くメジャー3戦目。いずれも、ロレックスランキング上位で手にした出場権だ。今季の日本ツアー開幕戦、ダイキンオーキッドで初優勝し、5月までに5勝する怒涛の勢いでランキングを駆け上ってメジャーの舞台に立ち続けている。全米女子オープン44位タイ、全米女子プロ30位タイと前の2試合はどちらも予選を通過して4日間プレーした。合間も米国に残って練習に励み、全米女子プロ終了後、一度日本に帰って試合に出て調整。挑んだのが今大会だった。
経験を重ねるうちに、どんどんメジャーの戦い方を身につけていくのが伝わってくる。最終日、最終組で一緒に回っていた古江彩佳のクラブが、カートに積まれたまま大会主催のJGA事務局長が運転するカートとの接触で折られてしまったとんでもない事件だ。
思い出されるのは、2019年日本女子アマでの一幕だ。ご記憶の方もいるだろう。
今回は試合中、2度のアクシデントも自力で乗り切った。大会2日目のハーフターンで言ったトイレに、大事なコースメモを置き忘れたのがその1つ目。使用するクラブの番手や距離を書き込んだマネジメントには大切なそれは、そのまま紛失し、その晩、思い出しながら3時間かけて書き直し、残り2日に臨んでいる。
もう一つ、同じ日にカート事故にも遭った。プロの試合は基本的に歩いてプレーするが、時間短縮のためホール間のインターバルなど、決まった場所をカートで送迎するのは、日本でも欧米でも珍しくない。エビアンでは4番と5番の間の傾斜が厳しく、カート送迎が行われていた。その間を練習場送迎の車が走っていたが、西郷の乗ったカートがそれと衝突。無事だったが後部に乗っていたキャディが振り落とされている。一歩間違えば大変なことになるアクシデント。だが、西郷はそれにもあわてることはなかった。
被害者の古江はもちろんだが、泣いているその姿を見て、プレーが遅れる現実にもさらされた同伴プレーヤーは、当然ペースを乱される。それでも西郷は冷静にプレーを続け、見事に優勝している。強さあってのものだろう。
エビアンの4日間を通じて、際立ったのが西郷のマネジメントだった。コースマネジメントだけではなく、セルフマネジメントも含めて。攻めるべきところは攻め、守るべきところは守る。ガッツポーズでわかるように闘志をみなぎらせつつも、気持ちのアップダウンに振り回されずにプレーする。特に最終日は、追い上げるしかない立場だったとはいえ、首位に並んでからも同じようにプレーを続けた。
「(メジャー3戦目で)徐々にマネジメントがよくなってきています」と3位に終わった後に本人も評価していた部分だ。メジャーでは欲張りすぎるとうまくいかないことも体感している。「今日は何ホールかちょっと欲張ったショットでミスになってしまったので」と。
ここから先がさらに厳しいのは言うまでもない。メジャータイトルがチラついた途端、迷路に入ったり悩んだりする。今、そこに一番直面しているのは、ツアーで勝ち星を重ねながらメジャーではなかなか勝てない畑岡奈紗だろう。
相手のあることだから運もある。遡れば、1987年に外国人として初めて米ツアーの賞金女王になったツアー17勝の岡本綾子は、メジャーに勝って当然の実力の持ち主だった。だが、残念ながらメジャータイトルとは縁がなかった。岡本の例を出すまでもなく、世界を見渡せば、実力はあるのに、メジャー優勝のない選手は少なくない。
西郷真央がこの先、どんなふうに世界の舞台で活躍していくのか。師匠の尾崎将司は、何度もメジャーに挑戦したが、自他ともに認める海外嫌いもあって、優勝することはできなかった。すでに今年、米国で長い時間を過ごしている西郷にはその心配はなさそうだ。
今の西郷は、ものすごい勢いでいいことも悪いことも経験を自分の中で咀嚼し、実践しているはずだ。焦り過ぎることはない。女子ゴルフの世界では、若い選手が次々に台頭してくることもあり、周囲がすぐに結果を求める傾向にある。選手本人もそれに振り回されることがあるが、そこに自分を委ねる必要はまったくない。将来の見据え方は人それぞれだ。
あえて言うならまだ20歳。「3歩進んで2歩下がる」どころか「3歩進んで5歩下がる」ように感じられることもある厳しい世界ではあるが、歩み続けるしかない。メジャー優勝という栄光が、その過程にあると思いながら。




