子供はゴルフをする資格なし?今でもそんなことを考える人がいる不思議

今から約20年前、ジュニアゴルファーを育成する団体が、子供がプレーできるか否かを日本中のコースに確認して調査しました。その結果、原則として子供のプレーは禁止しているコースが90%を越えていたのです

原則としてというのは、メンバーの子供は家族メンバーになれば可能だったり、中学生以上の競技のみ許可していたりしたからです。子供と大人の線引きは、公共交通機関が大人料金になる中学生でした。

つまり、小学生以下の子供はゴルフをする資格がない、というのが常識だったのです。ゴルフコースだけではなく、練習場も小学生以下の入場禁止としているところもたくさんありました。

ジュニアゴルフブームの火付け役

21世紀になって、ゴルフ業界はゴルフ人口の減少に危機感を持っていました。ピーク時の人口の半分以下になったゴルファーを増やすための会議を繰り返し、ノープランのまま「ゴルファーを増やそう!」という掛け声だけを交わし合って自己満足していました。

状況が大きく変わるのは、2003年に女子高生ゴルファーだった宮里藍がツアー優勝してジュニアゴルフブームが起き、さらに2007年、高校生ゴルファーだった石川遼がツアー優勝し、はにかみ王子が社会現象になってからです。

子供にゴルフをさせようという親が増えて本当の意味でゴルフが大衆化し始めた結果、年齢制限を撤廃したコースが過半数になって現在に至っています。

しかし、子供がコースで騒いでいるようなシーンを見て、「昔のように子供がいなかったゴルフコースが懐かしい」というオールドゴルファーは少なからずいます。

比較的高級なゴルフコースが今でも年齢制限を設けているのは、非現実的な空間を守るための防衛手段だと正当化する考え方があるからで、名門コースの中には子供どころか35歳未満はプレー不可、という年齢制限を維持しているところが現在もあります。

親子三代で同じゲームを楽しめるゴルフって、まさに生涯スポーツで素晴らしい!

「ゴルフは歩けるようになったら始めて、歩けなくなったらやめるもの」

古くからスコットランドに伝わる常套句ですが、実際にはボールが打てるようになり、禁止されていることを我慢することができるなど、いくつかの条件をクリアしないとゴルフはできません。ジュニア育成機関にいた経験で書くと、個人差はありますが早ければ幼稚園児からゴルフを体験できますし、小学校に上がって普通に授業を受けられれば、ほぼ問題なくゴルフデビューはできます。

18ホールを正式にラウンドするのではなく、100ヤードの杭の横から第1打を打ち、3回打ったらグリーンの端っこにボールを動かしていいとか、幼い子供用のルールでプレーすればいいのです。逆に、一緒にプレーする大人のほうにハウツーがあることが重要だといえます。

「孫とさ、息子たちと嫁たちとさ、ミニコンペしちゃったよ。令和のゴルフブーム様々だよ。プレー代は全部オレが払ったけど、それだって5万円ちょっとだよ。ゴルフをしていて良かった、って思ったね」

先輩ゴルファーから何枚かの画像を見せられて、笑顔の報告を受けました。ゴルフの大きな魅力は、老若男女が同じ時空を共有して楽しめることです。

僕もゴルフを始めてから十数年間は祖父を筆頭に、親族が集まってゴルフコンペをしていました。昭和の頃には親子三代のゴルフというのは理想ではあっても、年齢制限などもあって簡単ではありませんでした。しかし今振り返って思い出すと、祖父も親戚たちも、本当に楽しそうにしていました。

老害ゴルファーには、年齢制限が必要な時代が来る?!

ひと昔前までは、歩けなくなったからゴルフを引退するというオールドゴルファーが当たり前でした。
しかし令和のゴルフブームの真っ只中、乗用カートが一般化したおかげで長い距離を歩くのは無理でも、短い距離が歩ければゴルフを続けることができるようになりました。

一般的には、70代のどこかの時点でクラブを置くケースが多いようです。60代でゴルフを卒業する人もいます。一緒にプレーする仲間がいない、というのが理由のトップなのだとか。少し寂しい話です。80歳を超えてもゴルフができると賞賛される傾向があります。

僕は30代までは、「7番アイアンで150ヤードを打てなくなったら」「歩けなくなったら迷惑をかけるから」ゴルフを引退すると公言していました。還暦まであと2年と少しですが、ぶっ飛び系アイアンの7番で辛うじて150ヤードを打ち、乗用カートに助けられ、かつての発言を撤回してゴルフを続けています

20年前までは子供がゴルフをするのは非常識とされていましたが、今は子供を排除するほうが非常識になっています。
ゴルファーの寿命が延びたため、過去にはいなかった老害ゴルファーが出現しているのは、なんとも切ない皮肉な話です。時代が進めば、今度は彼らを”プレーお断り”にする決まりが必要になるのかもしれません。

死ぬまでゴルフをしていたいと切望しながら変わっていく時代を楽しむのも、ゴルフの内なのです。




篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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