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“飛ばないボール規制”でメーカーはコントロール性重視の開発を加速させる?

戸川景の重箱の隅、つつかせていただきます|第42回

2024/01/23 ゴルフサプリ編集部

ゴルフ場

スイング、ゴルフギア、ルールなどなど…。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。

Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ
GOLF TODAY本誌 No.620/74ページより

“飛ばないボール”規制はどうすれば嫌われないのか?

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昨年末の12月、ゴルフルールの総本山であるR&AとUSGAが、ボールによる新たな飛距離制限を発効することを発表した。

具体的には、公認球となるための飛距離の上限が現行より若干下がる。ヘッドスピード125マイル/時(約55.5m/s)、スピン量2200回転/分、打ち出し角11度の条件下で、317ヤード以内(+測定誤差3ヤードまでは許容)に収めなければならない。

この制限で、平均的な男子プロで10ヤード前後、女子プロで6ヤード前後の飛距離減が見込まれるという。ヘッドスピードが遅いほど影響は小さくなるので、一般ゴルファーは5ヤードも変わらないだろう、とのこと。

4年後の2028年1月から施行される予定だが、2027年までの公認球は、一般ゴルファー2030年1月になるまでは使用可能になるそう。買いだめや買い控えを考慮した、メーカー向けの対策だろう。

さて、この“飛ばないボール”規制に対しては巷で賛否両論が噴出したようだが、私は大賛成だ。その理由を述べていこう。

公認球の制限はプレーヤー一律

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まず、大前提として飛距離の抑制の必要性がある。R&AとUSGAが2018年からスタートした「ディスタンスインサイトプロジェクト」と、世界的な7つのツアーから提供されたデータの分析から、今回提示された「ディスタンスインサイトプロジェクトからの結論:ゴルフにおける飛距離の影響」を読んでほしい。フルレポートがJGAのホームページに掲載されている。現時点で、用具による飛距離の増大はゴルフのゲーム性を損なう危険性が高いと理解できるだろう。

大賛成のもうひとつの理由は、公認球でプレーヤー一律に制限をかけたことだ。実は昨年の3月の時点では、エリート(ツアーや競技参加者)とレクリエーショナル(一般アマ)で使用球を分け、エリートにのみ制限を設けようという動きがあった。野球の木製バットと金属バットのような考え方だが、ゴルフにおいてこのようなダブルスタンダードは受け入れがたい、と感じていた。

ゴルフではティーイングエリアとハンディキャップで誰もが対等にプレーできるのが魅力。用具で差別化を図る必要はないはずだ。

さて、ここからは私の妄想的推察だが、新しい公認球の仕様を考えてみた。

ボールで飛距離を落とすには、反発力を下げてボール初速を落とすかスピン量を増やして推進力を落とすか。これ以外の方法も考えられるが、ツアーで通用するコントロール性を犠牲にしないことを考慮すると、この2つに絞られると思う。

反発力を下げるには、ウレタンカバーを少し厚くするとか、コアの硬度を変えるとか。だが、これだとアイアンの飛距離も落ちてしまう。メーカーとしては、一般アマ向けにアピールするには、飛距離減はドライバーだけで、アイアンなどには影響しないようなスペックにしたいはず。

となれば、スピン量とディンプルの工夫で、滞空時間を変えてくるのが正解だろう。まず、新しい制限値に対して、滞空時間を減らすディンプル設計にする。そのうえで、ロフト角が増える他番手ではスピン量を増やし、キャリーを確保できるようにする。デジタル解析を駆使できる現代の技術なら、4年後までにはできると思う。

ただ、私が本当に期待しているのは、各メーカーが飛距離アップを謳い文句から外すことで、よりコントロール性に特化した、というよりセカンド以降のパフォーマンスを重視した設計に移行することだ。高弾道化高スピン化など、今までとは違う弾道を創造してほしい。

戸川景(とがわ・ひかる)

1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て(株)オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。

重箱の隅、つつかせていただきます

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