ツアー競技で「スコア誤記」がなくならない理由とは?

去る10月、USLPGAのQスクール・ステージ2に挑戦していた原英莉花が「スコア誤記」で失格となった。

私は「スコア誤記」は「交通事故」のようなもの、と捉えている。プレーヤー本人の不注意と、偶然の不運が重なって起こるケースが大半だからだ。ルールに疎いから生じるものではない。

競技では、スコアカードはマーカー(主に同伴競技者)が記入。プレーヤーはラウンド後にそれを受け取り、チェック。間違いがないことを確認して、提出する。

実は、ツアー競技では毎年「スコア誤記」による失格者が結構生じている。ただ、優勝争いなどに絡むケースが少ないため、表沙汰にならないだけなのだ。

なぜ「スコア誤記」は生じるのか。競技ならではの一番の理由としては「自分のプレーに集中するあまり、他人のスコア確認が疎かになる」ことだろう。グリーンの反対側でのザックリミスを見逃していても、不思議ではない。

また、各ホールでスコアを確認せず、まとめて記入するのも危険だ。合計スコアは合っていても、ホールごとの数字を入れ間違えるケースがある。スコアの成否の判断は、ホールごと。ハーフやトータルの合計数字は間違えてもお咎めなしだが、たとえば連続する2ホールで「3」と「4」のスコアを入れ違えた場合、本来「4」のホールを「3」と記入したことで「過少申告」とみなされ、失格となるのだ。

現在では、ルール絡みの「スコア誤記」による失格はほとんどない。というのも、2016年から「スコアカードを提出する前に罰を受けていたことを知らず、罰打を含めなかった場合は競技失格とならない」というルール改訂があったからだ。とはいえ、ルール絡みでの「スコア誤記」の失格がまったくなくなったわけでもない。

ミスは自分の不注意(うっかり)に起因する

原は、2018年のスタジオアリス女子オープンでも「スコア誤記」で失格しているが、このときはカート道路からの救済処置を勘違いしたもの。

同伴競技者の指摘を無視し、そのまま罰打を加えずスコアカードを提出したことで過少申告」となったものだ。「罰を受けていたことを知らず」ではなかったからだ。

もちろん、この件で原は猛省。ルール確認には慎重になったはずだ。それだけに、今回の「スコア誤記」は残念でならない。

さて、競技運営側には落ち度がないのか。昔はスコアカードを提出箱に入れたら修正不可能だったが、現在では「提出エリア」内であれば、レコーダー(スコア記録係)が確認し、「エリア」内にプレーヤーが留まっている間は修正できるようになっている。また、提出前に「コーリング」というスコアの読み合わせも行われている。今回の原も「コーリング」を実行しながら、確認ミス。連戦の疲れの影響か、集中力の欠如か。

私が「交通事故」と捉えるのは、他の要因が様々に絡んでも、最後は自分の不注意(うっかり)に起因する、と感じているからだ。人間だから致し方ない、と感じるのも人情。

1957年の全米女子オープン、2位に1打差で優勝したはずのジャッキー・パンが「過少申告」で失格(賞金ゼロ)となった際、開催コースのメンバーたちが不憫に思い、彼女のために寄付を募ったところ、優勝賞金以上の金額が集まったという。

1960年の日本オープンでは陳清波が優勝のはずが、同じく「過少申告」で失格。同組だった2位の小針春芳が繰り上げ優勝、陳のマーカーだった小野光一は2位タイに。2人とも自分の賞金を分け合い、陳に渡したそうだ。「スコア誤記」で最も落ち込むのはプレーヤー自身。責めるのではなく、寄り添ってあげてほしい。

戸川景(とがわ・ひかる)

1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て(株)オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。


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