ビギナーやリスタート派にはちょっと操作できるアイアンがおすすめ

編集担当さんにいきなり「ゴルフ用具の中で一番好きなのはなに?」と聞かれました。なんでそんなこと聞くの? と思いながらも「自分はなにが好きなんだろう」と考え込んでしまいました。最近はスタジオCGAさんというショップさんと一緒にオリジナルのウエッジを作っていたので、ウエッジのことを考える時間が長かったけど、好きというより目の前の課題をやっていた感じ。好きと言うならドライバーもアイアンも好きだしなぁ……。

そこで、ふと思ったのはロングアイアンに憧れがあること。これも好きとはちょっとニュアンスが違うけれど、タイガー・ウッズやミンウ・リーのすごいロングアイアンショットを見るとカッコいいと思う。古くはオラサバルがマスターズを勝った時に18番で打った糸を引くようなロングアイアン、生で見たのは宍戸ヒルズのツアー選手権で伊沢利光さんが4番か5番アイアンでベタピンにつけたショットなど、ロングアイアンに感動していたのを思い出しました。こんなことを言うと知り合いから「じゃあユーティリティなんか使うなよ」と言われそうですが……。

さて、前置きが長くなりましたが、ロングアイアンの話が出たところで今回はアイアンについて、特にこれから本格的にゴルフを始める、あるいはブランクがあるけど再始動したリターンゴルファーに役立つアイアンの周辺情報をお伝えしたいと思います。

昨今はロフトが立った飛び系アイアンやマッスルバック、中空など様々なヘッドがありますが、おすすめなのは大型キャビティにしろ、中空にしろ、寛容性があってストライクゾーンが広いアイアンです。自分の感覚でいいので、ヘッドの大きさが小さすぎず大きすぎないもの。そしてロフトがそれなりにあるものを使うべきでしょう。

ロフトが立ったアイアンは飛びますが、僕はボールがロフトに乗って浮くのを知ることがゴルフにとってすごく重要だと考えています。なぜならロフトに乗せてボールに回転をかけるのが、球技たるゴルフの大きなキモだから。いわゆるスピンコントロールを味わえるアイアンがいい。マッスルバックほどの操作性はなくてもいいけれど、全く操作できないワンパターンのアイアンより、フェースを開いたり閉じたりして、ちょっとアレンジできるくらいの方がアイアンの奥深さがわかって楽しめると思うのです。

その際には重さも気にした方がいい。お父さんや先輩から譲ってもらったアイアンでゴルフを始める人も多いですが、その場合、最近は軽めのクラブを使うことになる傾向があります。軟鉄鍛造のマッスルバックしかなかった時代は、否応なく重いクラブでスイングを作らなければなりませんでしたが、軽いよりはちょっと重めの方が、結果的に長持ちするスイングができると思います。

リリースしながら打った方が芯に当たりやすいアイアンもある

ダウンブローに打てるアイアンを選んだ方がいい、という意見も多いですが、昨年のZOZOチャンピオンシップでPGAツアーの選手を見たところ、昔と比べてターフをとっていませんでした。レベルスイングとまでは言わないまでも、抑え込んでフケ気味のボールを打って止めるのではなく、最初から高い球をバーンと打って上から落として止める。ラフにしてもかなり手前からゴッソリ芝を刈るように振り、高さ出して止めるプロも多くいました。重心が高い軟鉄鍛造のクラブで上から打ち込むプロばかりではないのです。

もちろんダウンブローでボールを押さえ込むのはひとつの技術として有効ですが、中空アイアンなど、ヘッドによっては極端に打ち込むと美味しいところでヒットできないものもある。道具の使い方という視点でスイングを見た場合、そういったロジックがわかっていないと道具の恩恵を受けられないというのもまた事実なのです。

どちらかと言えば、僕はオールドスタイルでゴルフを覚えた側なのでダウンブローに打っていますが、将来的にもそれが主流なのかと聞かれたら、そこまでダウンブローにこだわらなくてもいいと思う。パンチショットで抑え込んで、みたいなスタイルからちょっとずつ変わってきているからです。全盛時のタイガーさんは草鞋のようなターフを取っていましたが、最近のタイガーさんはあまりターフを取りませんから。

ダウンブロー至上主義は、そもそもダフるところに端を発しています。シャクるような打ち方をして大幅に手前からダフった時に「ダフるのはダウンブローじゃないから」と誰かが言う。「だからダウンブローに打たなきゃダメ」みたいな論法ですね。

でも、僕にはこんな経験があります。フェアウェイ脇のクロスバンカーから140~150ヤード打つ時に、体重を左足に乗せてダウンブローに打っていましたが、ある時それが上手くいかなくなりました。球が低く出てアゴに当たることが数回あったのです。

「下手になったのかな」と思って試行錯誤したところ、今のアイアンは右足体重でシャローに打った方が飛ぶことがわかりました。重心が低めなので、上から打ち込むよりリリースしながら打った方が芯に当たって距離も出るし普通に狙っていけるんです。使っている道具によって技術も変わってくるものなのか、と思うとともに、昔覚えた技術だけでは今のクラブを使っている人に向けたレッスンはできないんだと改めて思いました。




石井良介
いしい・りょうすけ。1981年生まれ。『令和の試打職人』として各種メディアに引っ張りだこの人気解説者。PGAティーチングプロA級。You tube「試打ラボしだるTV」が人気。早くからトラックマンを活用したレッスンを開始。高い経験値と分析力で正しいスイング、正しいギアへと導く指導と的確な試打インプレッションに定評がある。


石井良介のゴルフ・すべらない話

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