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PGAツアーの勝者として初めて100歳まで生きたグランドマスター、ジャック・バークJr.って知ってる?

佐渡充高のプレミアム・ファイル

2024/05/15 ゴルフサプリ編集部

佐渡充高のプレミアム・ファイル

ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活躍する佐渡充高が取り上げ、独自の見解とともにお届けします。

GOLF TODAY本誌 No.623/99ページより

ゴルフは頭脳

100歳で逝ったGRAND MASTER ジャック・バークJr.

ジャック・バーク・ジュニア

2024年1月19日ジャック・バークJr.が、101歳の誕生日を迎える10日前に天国へと旅立った。メジャー、PGAツアーの勝者として初めて100歳を生き、世界のファンはレジェンドを超えたグランドマスターと追悼した。

初対面は03年11月テキサス州チャンピオンズGC。同コース5回目のツアー選手権で最後の開催地になった時だ。大会前の練習場で選手たちから「ジャッキー!」と呼ばれていて、すぐに彼だとわかった。バークはサラゼン、スニード、ホーガン、ネルソンらと名勝負を繰り広げ、年配女性は「とても素敵でセックスシンボルだったのよ」と回想するほど人気選手だった。

挨拶するとなぜか「久しぶり!」とガッチリ握手! 驚いたが、とことん愉快な人柄でキレ味鋭いトークにどんどん引き込まれた。最後に「ヒューストンを楽しんでいるかい? 楽しくなかったら僕に連絡して!」と満面の笑顔。(社交辞令ではなかった)わずか数十分で、気づけば僕もファンになり幅広い世代から愛される理由が理解できる気がした。

再婚したロビン夫人とのエピソードもユニーク。24歳時に64歳のバークにパットのレッスンを願い会うことに。バークは楽しく学んでほしいとパットの勝負を提案。それもバークはパターではなく足で打つ奇抜なアイデア! 会う度にゴルフの真髄を鋭く朗らかに説くバークに魅かれ40歳差婚に至った。夫人も97年全米女子アマ2位、アマ女子の団体戦最高峰カーティス杯米国代表、16年には同大会米国主将など活躍し、唯一夫妻揃ってテキサスゴルフの殿堂入りを果たしている。

ジャック・バーク・ジュニア

バークからもらった彼のお気に入り写真

PGAツアー最後の優勝は1961年ビュイックオープン40周年の記念大会。特大トロフィと副賞の最新モデル車。

驚いたのは身長170㎝と小柄。サラゼンより大きいがホーガンより小柄だと感じた。それで生涯16勝。彼の名言「ゴルフの80%は頭脳によるプレー」を思い起こした。柔道で心身を鍛え、ライス大学卒業後は海兵隊で柔道の指導経験も。56年マスターズは最終日8打差の大逆転優勝、52年には史上初の4試合連続優勝記録を樹立、達成したのは今も03年のウッズと2人のみ。現役選手は彼の引退後も頭脳と経験を求め、81歳でライダー杯副主将に異例の就任(史上最高齢)などゴルフ界へ貢献を続けた。

バークは引退後、指導者としても活躍。名コーチのブッチ・ハーモン、ジム・マクリーンもバークのレッスンを経験後に指導者の道へ。多くのメジャー勝者も育て上げ、ミケルソンにも100連続ショートパット練習法を伝授。運営に携わったゴルフ場は彼の指導で約1000人メンバーの半数がシングルという全米屈指の高レベル。彼は最高のコーチ、インストラクター、メンターでありPGAツアー史上ただ一人の「ティーチャー」だった。

ジャック・バーク・ジュニア

(写真上)ジャック&ロビン夫妻でテキサスゴルフ殿堂入り。最初の妻アイリーンと5人の子供に恵まれたが死別。40歳下でテキサス大学ゴルフ部出身のロビンと再婚し娘メーガン誕生。支え合いゴルフの世界で活躍を続け33年をともに生きた。(写真下)ロビン夫人にレッスン。02年ゴルフダイジェスト7月号でも2人の特集。

ジャック・バーク・ジュニア

テキサス州ヒューストンのチャンピオンズGC練習場。身長170センチで80歳(当時)とは思えぬパワフル体型だった。

ジャック・バーク・ジュニア(愛称ジャッキー)/プロゴルファー

ジャック・バーク・ジュニア

1923年1月29日テキサス州ダラス生まれ。父Sr.は1920年全米オープン2位の名選手でJr.は2代目プロ。7歳でゴルフを始め4番アイアン1本だけの練習とプレー(G上も)で技術を磨いた。テキサス州ライス大学を経て4年間海兵隊入隊。除隊後は屈指の名門ウィングドフットGCでクロード・ハーモンのアシスタントプロに。PGAツアー16勝、メジャー2勝、1952年4週連続優勝、1956年マスターズ、全米プロ選手権優勝で同年最優秀選手賞、ライダー杯5回出場。

佐渡充高

●文/佐渡充高
さど・みつたか
上智大学法学部卒業。1985年に渡米し、USPGAツアーを中心に世界のゴルフを取材。2022年まで32年間NHKゴルフ解説者。2023年からBS放送局『BSJapanext』にて「大正製薬 Presents PGA TOUR TV Program PGA ツアー」の解説者に。※2024年からは「フォーラムエイト Presents PGA TOUR TV Program PGA ツアー」。


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