7番アイアンを抜いて31.5度の7Uを入れた片山晋呉。スイングはユーティリティで作る時代に!?
吉本巧のゴルフギア教室 第44回
片山晋呉が7番アイアンを抜いてユーティリティを入れたことが話題となった。このことに興味をそそられたゴルファーは多いはず。どんなメリットがあるのか? 吉本巧が詳しく解説する。
アイアンでスイングを作るとウッドを使う時にギャップを感じる人が多い
国内男子ツアー屈指のモンスターコース・富士桜CCで行われた今年のフジサンケイクラシック。悪天候のため36ホールに短縮されましたが、51歳の片山晋呉プロがトータル1アンダーの16位タイでフィニッシュしました。
そこで話題になったのが7番ユーティリティ(以下UT)。7月にはミニドライバーを入れ、ウッドはドライバー、4、7番の3本体制。その下に4、5、6番のUTを入れていた片山プロ。そこに7番が加わり、ウェッジ以外のアイアンは8、9番の2本になりました。UTは4~6番がピン、新規投入した7番はキャロウェイのパラダイム Aiスモークで、ロフトは30度を31.5度にしたそうです。
UTは曲がったり、思った以上に飛ぶことがあるものの、基本的にはボールが上がって止まります。プロがUTを使うのもそれを考えてのこと。7番アイアンをしっかり打てる片山プロが、レギュラーツアーの固くて速いグリーンに止めるにはUTの方が有効と判断しての投入だったと思います。
アイアンとUTを比べた場合、アイアンの方がスピンはかかります。しかし、スピンは計算できません。フェースとボールの間に挟まる芝の量によってかかり方が変わるなど運に左右される部分もあります。それなら上から落として止めるUTの方が安定して止まりやすい。これが浸透すれば、近い将来にスピンで止めるという概念はなくなるかもしれません。
飛距離もUTのメリットで、平均飛距離は間違いなく伸びます。また、重心深度が深いので打ち負けることがない。スチールシャフトのアイアンと比べると段違いです。フルショットでなくても高いボールが打てて、飛距離もコントロールできるとなれば、片山プロにとっては鬼に金棒。持ち前のショットコントロール力を際立たせる絶好の武器になるでしょう。
もちろんアマチュアゴルファーにも大きなメリットがあります。プロも7番アイアンをUTにする時代ですから、打ちやすいUTにする発想はあっていい。シニアの方などは大いにありだと思います。ただ、7番アイアンだとロフトは30度台前半くらい。これに相当するロフトのUTは、まだあまり種類がないかもしれません。
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かつてスイングは7番アイアンで作ると言われてきました。7番がパターを除く13本の真ん中だからだと思いますが、練習には必ず7番を持って行きました。でも、その当時はアイアンが多かったですが今は少なくなっています。
この流れを踏まえると、スイング作りの基本はウッド系という概念にもなっていきそう。実際、アマチュアの方がアイアンでスイングを作ると、ウッドを使う時にギャップを感じることが多いと思います。「アイアンはいいけどドライバーがダメ」とか、この逆もありますが、これはアイアンでスイングを作っているからかもしれないのです。それなら、かつて7番アイアンが負っていた役割をUTに負ってもらえば、ウッドやドライバーへの違和感が緩和され、早く全てのクラブを打てるようになるかもしれません。
ある意味、アイアンでスイングを作ると限界がきます。ふと、こんなことを思い出しました。日本では「九九」を覚えるためか、暗算の美徳みたいなものがあります。でも、アメリカではそこに美徳はなく、計算は電卓を使うのが普通。むしろ電卓を使いこなすことを美徳とします。その方が未来が広がるという考え方です。
日本人にとってのアイアンには「九九」みたいなところがある気がします。ミドルアイアン以下はとりあえず当たるので大ケガはしません。ただ、重くてしならないから飛ばない、ウッドに比べて芯が狭い、重心が浅いので打ち負ける、など難しいところもあります。その点UTなら、形状や性質的にフェアウェイウッド(以下FW)やドライバーの練習にもなる要素が多い。そうなるとドライバーが苦手な人が少なくなるかもしれない。そのぶん未来が広がるかなと思ったわけです。
いずれにしても、アマチュアゴルファーの足を引っ張るのはもっぱら長い番手。アイアンよりも長いUTでスイング作れば、長さに慣れることは間違いありません。FWという選択もありますが、こちらはウッドに偏りすぎるので、やはりUTの方がいいと思います。
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吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・表参道の「表参道ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。