マスターズってどんな大会? どうしてゴルフの祭典と呼ばれてるの? 全世界のゴルファーが熱狂する理由

2025年のメジャー初戦、「マスターズ」がいよいよ開幕します。ゴルフを始めたばかりの人の中には、メジャー大会の中では最も歴史が浅いマスターズが、なぜこれほどまでに注目されるかということに「?」と感じる人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、多くのゴルファーがマスターズに熱狂する理由について紹介しましょう。
写真/Masters Tournament
美しい花が咲き乱れる箱庭のようなコースで繰り広げられるし烈な戦い

マスターズがスタートしたのは1934年のこと。生涯アマチュアゴルファーながら、全英オープン、全米オープンを制した、“球聖”ボビー・ジョーンズの企画によるもので、「世界の名手だけを招待する」ということからマスターズと名付けられました(マスターズが正式名称になったのは1939年から)。
このように、全英オープン(1860年創設)、全米オープン(同1895年)、全米プロ(同1916年)より歴史が浅いマスターズが、他のメジャーの匹敵する、ときにはそれ以上に注目を集めるのにはいくつかの理由があります。
その理由のひとつとして、メジャーの中では唯一、毎年、同じコースで開催されることが挙げられます。

開催コースは、ジョージア州にあるオーガスタナショナルゴルフクラブ。しかもそのコースが、箱庭のように美しく、それでいて戦略性に富んでいるという点が、多くの人を魅了する要因になっています。
まずは、その美しさから。ここでは、緑の絨毯を敷きつめたフェアウェイと白砂のバンカーからなる各ホールを取り囲むかのように色とりどりの草花が咲き誇っています。シンボルは、アザレア(つつじ)。また、1番から18番のホールにはそれぞれ、草花の名称がつけられていて、ホールごとの景観にうっとりする人も多いようです。

次に戦略性について。その難しさの象徴として挙げられるのがグリーンです。映像で見ている限りはそれほどハッキリと分からないのですがグリーンの傾斜は激しく、一番低い地点から、最も高いところまでが、人の背丈よりも高いところがあります。しかもグリーンは、“ガラスの板”といわれるほど高速に仕上げられていて、傾斜との組み合わせで、ボールに触っただけでも数十メートル転がってしまうこともあります。
実際、中継を見ていると、カップの方向から90度以上違う方向に向けて打ち出したり、一度グリーンの外に出してからカップに近づけることもあります。また、打ち出したボールがカップ直前で90度曲がるというシーンなどもたびたび見られます。
グリーンがこのような状態なので、セカンド、あるいはサードショットを乗せる場所も限られてきます。ゴルファーによって表現は異なりますが、「バーディーを取るためには、1m四方の所に落とさなければならない。それがカップから5m以上離れていてもそれがベストショットになる」という人も。また、ピン位置によっては、ピンの近くにドスンと落ちてもボールはそこに止まってくれず、最悪の場合はグリーン周りにあるクリークまで転がってしまうこともあります。それだけショットには高い精度が要求されるということです。
アーメンコーナーをどうのり切るかに注目
また、「ナイスショットにはご褒美を、ミスにはペナルティーを」が徹底されているのもオーガスタの特徴です。それを具現化しているのが、“アーメンコーナー”と呼ばれる11~13番の3ホールです。
11番は520ヤードと500ヤード超えのパー4。グリーンが左サイドの池に向かって傾斜していて、どこに乗せていくかがポイントになります。昨年大会も最も難易度が高く平均スコアは4.3859。優勝したスコッティ・シェフラーもパー2回、ボギー2回というスコアでした。
12番は155ヤードのパー3。距離は短いのですが、グリーンの奥行きが15ヤードしかなく、クリーク(手前)とバンカー(奥)に挟まれていて、奥のバンカーに入れると下りのアプローチが残り、寄せようとするとクリークまで転がってしまいます。1980年の大会では、トム・ワイスコフ(73年の全英王者)はここで13打を叩いています。

13番は545ヤードのパー5。実は、コースの難易度からいうと23年は15位、24年は16位と超難関ではないのですが、バーディーを狙って無理をすると罠にはまるというホールで、中嶋常幸が1978年に11オン2パットの13打を叩いてしまったというのは有名な話です。
しかもこの3ホールは、風の読みが難しいことでも知られ、選手たちの多くは、「ティーグラウンドとフェアウェイとグリーンでは風向きが違う」といいます。
もちろんこの3ホールだけでなく、全てのホールでいろいろなドラマが生んできたわけですが、アーメンコーナーのプレーは必見です。

スコッティ・シェフラー。2024年のマスターズで2年ぶり2度目の優勝。
最後にもう一つ。現在のプレーヤーのほとんどが、そんなマスターズに憧れてゴルフを始めたこともマスターズが魅力のある大会になっている大きな要因といえるでしょう。「グリーンジャケット(優勝者に与えられるジャケット)に袖を通したい」という気持ちは誰もが持っていて、それを力にする選手もいれば、プレッシャーに押しつぶされる選手もいる。その悲喜こもごもが観る人に大きな感動を与えるような気がします。
選ばれし者たちの究極の戦い。今年は、世界No.1プレーヤーと称されるスコッティ・シェフラーの連覇なるか、メジャーでマスターズ王者のみ手にしていないローリー・マキロイの悲願の初優勝なるか、さらには、松山英樹の4年ぶり2度目の優勝なるかに注目が集まります。新しい歴史が生まれる瞬間をしっかり見届けましょう。

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文/真鍋雅彦
1957年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。1986年に退社し、フリーライターとしてナンバー、週刊ベースボール、ラグビーマガジン、近代柔道などで執筆。
ゴルフは、1986年からALBAのライターとして制作に関わり、その後、週刊パーゴルフ、週刊ゴルフダイジェストなどでも執筆。現在はゴルフ雑誌、新聞などで記事を執筆するほか、ゴルフ書籍の制作にも携わっている。