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テーラーメイドSIMに隠されていた2つめのS|ギアモノ語り

話題の新作開発ストーリー秘話

2020/05/05 ゴルフサプリ編集部

テーラーメイドが革新的テクノロジーを追求し、その開発に最大限の力を入れていることはモデル名にもあらわれている。マルチマテリアルの意味を込めた『M』、そしてシェイプインモーションの頭文字をつけた『SIM』まで、最先端のテクノロジーをモデルの名称でも表現している。『SIM』では斬新なシェイプに注目が集まっているが、シェイプはカタチの意味だけではなかった。

テーラーメイド ゴルフ㈱
ハードグッズプロダクトマネージャー

柴崎高賜
「前作の『M5/M6』に比べて『SIM/SIMMAX』は重心が低くなっているので、よりアマチュアがやさしく感じるドライバーになっています」

カタチのS、弾道のS、そして17度、1700回転へ

ドライバーで最も特徴的なのは、ソールの後方に斜めに突起したウェイト(イナーシャジェネレーター)。この形状によって空気抵抗を最大限に削減できたのだが、開発で最も苦労した部分は別のところにあったと語る。

「Mシリーズより、さらにアマチュア向けのドライバーになった」

モデル名である『SIM』の由来となったシェイプインモーション(Shape In Motion)は「動きの中で極めたカタチ」という日本語になる。このシェイプはカタチだけの意味だと思われていたが、プロダクトマネージャーの柴崎氏はもう一つ大切な意味があると語ってくれた。

「シェイプの一つめの意味は、新製品発表会でも説明させてもらった空力性能を追求した形状です。そして、もう一つはあまり語っていませんが弾道のシェイプです。今回の『SIM』では、『Mシリーズ』を超える高弾道・低スピンを追求しています。具体的な数字としては打ち出し角17度、バックスピン量1700回転を目指しました。この弾道こそがテーラーメイドがドライバーにおいて長年、追い求めている理想の弾道です」

私がはじめてテーラーメイドから17度、1700回転のフレーズを聞いたのは、2014年の1月だった。当時は『SLDR』というドライバーを発表した直後であり、17度で1700回転というのは非現実的な数字に思えた。しかし、6年が経った今、明らかに最新ドライバーの打ち出し角とスピン量は17度、1700回転に近くなってきている。この打ち出し角とバックスピン量は、かつては両立しないものとも言われていた。

「ドライバーの開発は何かを獲得しようとすると、何かを犠牲にしないといけないことが多かったです。例えば『SLDR』の時代は、重心を浅くしたことで低スピンにはできたけど、慣性モーメントが大きくならなかった。浅重心のせいで、打ち出しも高くなかった。だから、ロフトアップを推奨したりしていました。でも、今回の『SIM』は初めて重心も、慣性モーメントも、そして空気抵抗も犠牲にしないで開発できたドライバーです」

特に空力性能の効果を最初に感じたのはツアープロだ。今年1月の試合から世界中の試合で実戦投入されるとタイガー・ウッズ、ローリー・マキロイ、ダスティン・ジョンソンなどの契約選手はすぐに『M』から『SIM』にスイッチ。その中で柴崎氏は、昨年まで小型ヘッドを使っていた選手が『SIMMAX』に変えたことに空力性能の真価があると語った。

「例えば、ダスティン・ジョンソン選手は昨年まで『M5ツアー』という小さいヘッドを使っていました。彼は空力性能を考えていて、小さいヘッドの方が空気抵抗が少ないのでヘッドスピードが上げられると感じていました。また大きいヘッドについては空気抵抗が大きくて、少し振り遅れる感覚があったかも知れません。そんな選手が、いきなり『SIMMAX』にスイッチできた。それは、いかに『SIM』の空気抵抗が少ないかということです。ちなみに、今回の『SIM』では小型ヘッドは作っていません、その必要がないからです」

また、重心と慣性モーメントが両立できたことについては、『Mシリーズ』時代の恩恵も大きかったと語る。

「今回の『SIM』のようにトゥ側に斜めの形状のウェイトを配置すると、普通は重心がトゥ側になってしまう。それを防ぐために今回はソールのトゥ側部分をカーボン素材にして重心位置を調整しています。『SIM』の開発では重心調整がエンジニアを最も苦労させた部分です。理想の重心にしないと17度、1700回転に近づけません。こういう部分にカーボン素材をポイントで使えるのもMシリーズにおけるマルチマテリアルのノウハウだと思います」
 
17度、1700回転を目指すと宣言してから6年間、テーラーメイドは同じ目標に向かって進んでいた。『M』を止めたのではなく、『SIM』の中にもマルチマテリアルの『M』を継承。テーラーメイドは、そうやってカタチの先にある弾道を求めてきたのだ。

空力性能を最大限にするための、斜めのカタチ

トゥ側方向に向かって斜めに配置されているイナーシャジェネレーター。ダウンスイングからインパクトのヘッド軌道に合わせて斜めの角度にすることで空気抵抗を削減し、ヘッドスピードを上げる効果を生む。

トゥ側のカーボンだけでなくクラウンも軽量化!

トゥ側に斜めに伸びたイナーシャジェネレーターの先端には10グラムのスチールウェイトが配置されているが、そのウェイトによって重心がトゥ側にならないようにソールのトゥ側の一部をカーボンに。またグラファイトコンポジットのクラウンも『M5/M6』よりさらに軽量化されている。
横から見ると台座のようにウェイトがヘッド後方の低い位置にあることで、重心を低くしたまま慣性モーメントが大きいヘッド設計を実現。

ツイストフェースやスピードインジェクションはMシリーズを継承!

『M3/M4』で初めて搭載したツイストフェースや、『M5/M6』で衝撃的だったスピードインジェクションは『SIMシリーズ』にも継承されている。

世界のトップ選手もすぐにSIMを使用

1月の試合からすでにタイガー・ウッズ、ローリー・マキロイ、ダスティン・ジョンソン、ジェイソン・デイ、ジョン・ラームなど多くのビックネームが『SIMシリーズ』を使用している。
純正シャフトの特徴は『SIM』に採用した『シルバー』は安定感のある中調子タイプ。『SIMMAX』の『ブルー』はより軽量でしなりが大きいので、打球が上がりやすい。

純正シャフトにもMの刻印

「先端にグラフェンという特殊素材を使っています」

 テーラーメイドのテクノロジーへのこだわりを感じるのはモデル名だけではない。純正シャフトにはマルチマテリアルの文字と『M』の刻印が入っていた。もちろん、それはただのデザインではない。

「今回の純正シャフトは三菱ケミカルの『テンセイ』をベースにしたものですが、『SIM』に採用した純正シャフトの先端部分にグラフェンという特殊な素材を使っています。それが複合素材としてマルチマテリアルの文字を入れた理由です。このグラフェンは鋼鉄の約200倍の強度があって、ノーベル賞のテーマにもなった最先端の素材。おそらく、三菱のシャフトにグラフェンを採用したのは『SIM』が初めてです」

シャフトにおけるグラフェンの効果について柴崎氏は、

「そもそも当社のツイストフェースはトゥ側、ヒール側に当たったときでも曲がりにくい効果があるのですが、グラフェンという強い素材をシャフト先端につけたことで、ミスヒットしたときでもシャフトがねじれにくくなりました。特にアマチュアゴルファーにはメリットが大きいと思います」

長年プロダクトマネージャーを務める柴崎氏は、シャフトだけでなく、ここ数年のテーラーメイドには、アマチュアゴルファーを意識したテクノロジーが多いと語った。

「約50万発のドライバーショットを分析して、打点を上下左右に外しても打球が曲がらないようなフェースを追求したツイストフェースも、打点が安定しているツアープロではなく、ミスヒットが多いアマチュアを想定した技術でした」

さらにスピードインジェクションや、低重心化した『SIM』についても、

「ルール限界の反発性能を追求したスピードインジェクションも、コンセプトはツアープロが使っている反発性能が高いヘッドをアマチュアゴルファーにも使ってもうためのものです。また、高弾道、低スピンを求めた『SIM』では、かなり重心を低くしています。それはアマチュアゴルファーに、理想の弾道を叶えてほしいと思っているからです」

テーラーメイドと言えば世界のトップ選手が愛用しているイメージが強いが、実はそのテクノロジーはアマチュア目線で開発されている。それは米国本社があるカールスバッドのテストでも同じだった。

「1年に何度か米国に行きますが、本国の開発チームはヒューマンテストを大切にしています。もちろんロボットやモーションキャプチャーを使ったテストもやっているのですが、牧場のように広大なテストセンターではずっと男女、年代の違う人がヒューマンテストをやっているんです。最先端のテクノロジーを追求しながら、テスト方法では原始的なヒューマンテストを重視する。それも昔から変わらないテーラーメイドの伝統です」

2月に発売された『SIM』は、『M5/M6』に比べて純正シャフトを購入する人の割合が増えていて、純正シャフトへの評価も高い。

SIM Driver
●SPEC
体積/460㎤
ロフト角/9、10.5度
重さ/307g(テンセイ⦆シルバーTM50・S)
シャフト/テンセイ⦆シルバーTM50など
●価格/7万8000円+税~ 

SIM MAX Driver
●SPEC
体積/460㎤
ロフト角/9、10.5、12度
重さ/298g(テンセイ⦆ブルーTM50・S)
シャフト/テンセイ⦆ブルーTM50など
●価格/7万3000円+税~ 

名器Vスチールのシェイプも復活

フェアウェイウッドのシェイプインモーションには、ドライバーとは別の狙いがあった。

「決定的に違うのはフェアウェイウッドは地面にあるボールを打つクラブだと言うことです。その軌道を考えた結果、ドライバーとは違うカタチになりました」

ドライバーでは斜めの突起物のように見えるイナーシャジェネレーターが、フェアウェイウッドには搭載されていない。その代わりに、名器と称賛された『Vスチール』のソールを復活させていた。

「フェアウェイウッドでは、より接地面積が少ない形状を探していたのですが、そこで辿りついたのが名器Vスチールのソールシェイプでした」

もちろん、2003年に発売された『Vスチール』とは性能に格段の差がある。

「圧倒的に低重心化されていますので、やさしさも飛距離も上がりやすさも全然違います。でも、よく冗談でベテランのプロやアマチュアの方から『昔のVスチールに、今のツイストフェースをつけたら最高なのに』と言われたこともありました。今回は、それが実現できたと思っています」

ちなみに『SIM』と『SIM MAX』ではフェース素材が違う。『SIM』はチタンで、『SIM MAX』はステンレスを使っているが、勘違いしている人も多い。

「よく、『チタンだからSIMの方が飛ぶ?』と聞かれるのですが、どちらも飛びます(笑)。『SIM』でチタンを使ったのはスピンを抑えるための余剰重量を確保するためでもあって、『SIM』は強い弾道で叩いても上がりすぎない設計になっています。一方の『SIMMAX』はより高弾道で打球が上がりやすくなっています」

テーラーメイドがテクノロジーにこだわるのは、ゴルファーに理想の打球を打ってほしいからである。だから、カタチのSにも、弾道のSにもこだわっているのだ。

Vのプレートで劇的な低重心設計に

Vスチールプレート部分には約80グラムのウェイトがあり、『M5/M6』より重心が低い設計を実現。ヘッドサイズも3番ウッドで180㎤と大型化。

PGAツアーの現場でも予想を超えていたFWとレスキューの使用者急増

ドライバーだけでなく、フェアウェイウッド、さらにレスキューまでPGAツアーで高い使用率を誇っている『SIMシリーズ』。タイガーが1Wは『SIM』で、3Wが『SIMMAX』の二刀流だったり、マキロイが人生初のウッド型UT『SIMMAX』を使ったことも話題になった。

SIM MAX FW
●SPEC
ロフト角/15度(3W)、18度(5W)、21度(7W)
フェース素材/ステンレススチール【C300】
重さ/313g(テンセイ⦆ブルーTM50・S)
●価格/4万円+税~

SIM FW
●SPEC
ロフト角/15度(3W)、19度(5W)
フェース素材/チタン【ZA】
重さ/315g(テンセイ⦆シルバーTM50・S)
●価格/5万円+税~

GOLF TODAY本誌 No.575 105〜109ページより


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