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PRECEPT TOUR PREMIUM|ツアーを変えたウレタンソリッドボール

商品開発はドラマ!!!|今だから言える驚きのストーリー[第6回]

2021/07/05 ゴルフサプリ 編集部

ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話をメーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はウレタンソリッドボールが主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.589/68ページより

糸巻きからウレタンへ! 2000年を境に圧倒的な飛距離とメジャーに通用するスピン性能を実現

2000年1月にPGAツアーを意識して米国で発売されたのが「PRECEPT TOUR PREMIUM」。同年6月には日本国内で「ツアーステージU-Spin」として世に出た。

糸巻きからウレタンへ! 2000年を境に圧倒的な飛距離とメジャーに通用するスピン性能を実現

2021年の米国PGAツアーで大きな話題となったのは、ブライソン・デシャンボーが優勝した「アーノルド・パーマー招待」のドライバー飛距離だ。4日間平均で321.4ヤード、特に、会場となったベイヒル&ロッジズ6番のパー5は左ドッグレッグ。フェアウエイ左サイドは池で、通常選手は池を避けるために右方向を狙うが、デシャンボーは直接池越えでグリーン方向を狙った。

3日目370ヤード、4日目376ヤードと池越えに成功し、ギャラリーを沸かせた。この時使用していたボールはブリヂストンスポーツの「TOUR BX」。この飛距離を支えている一つの要因はウレタンソリッドボールだ。

ウレタンソリッドボールが本格的にツアーに登場したのは2000年。タイガー・ウッズの影響だ。タイガーがプロ入りした1996年米国で使用されている主流のゴルフボールは、糸巻きと呼ばれるボールの芯に糸ゴムを強く伸ばして巻き付けた構造のボールであった。

タイガーが2000年5月から、合成ゴムを芯としボールの一番外側のカバーをウレタン素材にしたナイキのソリッドボールに切り替えた。その圧倒的な飛距離とメジャーで通用するスピン性能で、その年の全米オープン、全英オープン、全米プロのメジャー3勝を含むPGAツアーで7勝をあげた。他のプロも糸巻きボールから一斉にウレタンソリッドボールに変え、糸巻きボールは一気にツアーから消え去った。

これを証明するのが、PGAツアー上位50名の平均飛距離である。2000年は277.5ヤード、糸巻きがツアーからなくなった2003年は292.8ヤードでとこの間15.3ヤード伸びている。それ以降2010年を見ても292.4ヤードと飛距離の伸びは見られない。いかにソリッドウレタンボールの影響が大きいかがわかる。

50以上の特許を取得! 丸山茂樹からデシャンボーへ受け継がれた精度へのこだわり

世界で初めてウレタンソリッドボールを開発した、ブリヂストンスポーツの開発・設計・製造の技術開発部の甲斐雅貴部長(左)、ボール商品開発部の古山大樹部長(中央)、笠嶋厚紀課長(右)。

ウレタンソリッドボールを世界で初めて出したのはブリヂストンスポーツである。その開発について、ブリヂストンスポーツの開発・設計・製造の技術開発部の甲斐雅貴部長、ボール商品開発部の古山大樹部長、笠嶋厚紀課長にお話を伺った。

ブリヂストングループの企業理念は、創業者が社是として制定した「最高の品質で社会に貢献」を不変の使命として掲げている。その品質にこだわったモノづくりがゴルフボールにも生かされている。しかしウレタン以前のソリッドボールは飛んで止まるというボール要求性を、完全に満足できるものではなかった。特にスピン性能については、ラフなどの悪いライで、糸巻きボールに比べてスピン性能が劣っていた。

筆者もボールテストに立ち会ったことがあるが、丸山茂樹はアプローチで「ポッコンがでる」との表現でスピン性能の不足を指摘していた。

従来のソリッドボールのカバーに使われているサーリン樹脂に変わる材料は、90年代から継続的に研究されていた。バラタの改良、ポリエステル、シリコーン系など100種類以上の材料をテストし、スピン性能、反発性、傷つきにくさなどで、社内テスト、プロテストを繰り返し最終的にウレタンに行きついた。それは、ウレタンは軟らかい素材で、アプローチスピンがかりやすくプロの要望に応えられ、また軟らかくすると反発が良くなるという面白い性質も持っていたからである。もう一つ大きな課題が特許であった。良い材料でもあっても他社が特許を保有していれば使えない。ブリヂストンはウレタンに関する特許を50件以上取得・保有し、その点もクリアできた。

さらに大きな課題は製造技術であった。ウレタン材料は熱をかけて溶かして金型に射出成型するが、温度による流動性の変化が大きく、コントロールするのが難しかった。そのため、このウレタン材料に合せるため専用の新しい射出成型も1999年に導入した。各社技術開発を競うボールの世界で、世界初のウレタンソリッドボールの発売が2000年1月に決まった。安定した条件を出すまで不良品の山で、製造技術担当は工場で徹夜を繰り返す日々で、あった。当初は生産性も低く、生産量も目標の半分しかできなかったが、生産のノウハウを積み重ね、量産にこぎ着け発売に何とか間に合わすことができた。世界初のウレタンソリッドボール(PRECEPT TOUR PREMIUM、ツアーステージU-Spin)の誕生である。丸山茂樹が2001年米国で初優勝した時に使っていたのがブリヂストンのウレタンボール。米国ツアーの厳しいセッティングでの勝利であった。

プロの要求に応え、飛んで止まるを追求して生まれたウレタン。さらにプロが求めるバラツキの少なさ精度の高さは、ブリヂストンが求める「最高の品質」によって生み出され、1982年から培かわれてきたソリッドボールの製造技術でこれが実現できた。バラツキの少なさや精度にこだわるデシャンボーが自ら、ブリヂストンのボールを選んだのは有名な話である。

デシャンボーにはさらなるボールの飛距離を求められている。開発・製造の苦労はまだ続くことは間違いない。

米国での特許ももちろん取得。2001年には契約選手で当時PGAツアーに挑戦していた丸山茂樹が初優勝を飾った時もボールは「ツアーステージ U-Driver」。「ツアーステージ U-Spin」の改良版。


取材・文/嶋崎平人


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