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常勝を呼び込んだグリップ改造の正体とは?

アイアンが際立つ!強いスイングの作り方[第11回]

2021/04/17 ゴルフサプリ編集部

1940年代には、第二次大戦を挟みながら5回の賞金王に輝いたホーガン。グリップ改造が大きな転機になったというが、そのポイントはどこにあったのか。「左手が邪魔をしなくなった」と森プロは言う。

GOLF TODAY本誌 No.586 73〜77ページより

ホーガン流スイング作り【課題10】精度を上げるグリップの見直し

「ロングサム」が切り返しでのブレを生んだ

フックグリップをスクエアに直してフックのミスを解消し、優勝を重ねたホーガン。だが、いきなりスクエアグリップが完成したわけではない、と森プロ。

「1940年にメジャー勝者のヘンリー・ピカードから手を左に回すウィークグリップを教わってフック病が直ったという話ですが、練習量の多いプロほど急にはグリップを変えられません。

おそらく右手はかぶせられても、左手はフックグリップのまま、という状態でスタートしたはず。それでも、右手のスナップ動作をフルに生かしてもフックしないようになり、ショットが安定し、スコアを伸ばせたんです」(森)

だが、メジャーに勝てるようになるのは、第二次大戦後。

「左手親指を伸ばす、いわゆるロングサムから短く詰めるショートサムに。切り返しで左手親指からクラブがズレなくなり、より安定しました」(森)

最初は右手だけかぶせる

最初は右手を極端にかぶせる(下)と、ヒンジングをしっかり使える感覚をつかみやすい。それからスクエア(上)に。
左手をかぶせたまま、右手もかぶせる。ホーガン自身はこうすることで両手の一体感が高まり、よりハンドアクションが使える、と述べている。

かぶせた右手グリップが左手の「ショートサム」を促した

「ロングサム」では親指と人差し指の間にズレ込む

「ホーガンはフックグリップで甲側にカッピングするので、シャフトが左手親指に乗るのではなく、親指と人差し指の間にはまりやすかったはず。このズレ込みが、切り返しのブレにつながっていました」(森)

右手をかぶせるには「ロングサム」は邪魔

「右手を深くかぶせるほど、伸ばした左手親指は邪魔になります。ショートサムに変えることで、右手親指下のふくらみ部分に、しっくり収まるようになったはずです」(森)

<グリップ改造のステップ>スナップをフルに生かせる右手に左手を合わせる

「ショートサム」から両手が絞り込まれていく

「ショートサム」で左ヒジは締まる/右ヒジが前に出ないように/左手のV字は右肩を指す/右手親指の付け根を左に回り込ませる

右手小指が一体感のカギ

乗せている/引っかけている
「ホーガンは右手小指を左手人差し指に乗せる(左)のではなく、引っかけるようにする(右)ことを強調しました。これは、両手を絞り込むようにすると、甲が上向きになり、外れやすかったから。小指を引っかけることで一体感を出したのです」(森)

左手グリップのスクエア化は最後の修正

右サイド主体のスナップ動作を左でどう受けるか

「シャフトのトルクをねじり込んで打つ必要があったヒッコリーから、トルクが激減したスチールに移り、ねじり込まないようにするには、ウィークグリップにするのが一見簡単そうですが、それでは長年培ってきたスイングの感覚が狂います。

ホーガンの場合、まず右手だけかぶせて折り合いをつけ、右手のヒラとフェース面をシンクロさせた。すると、ヒンジングを強調したスナップ動作で叩いてもフックしなくなった。

右手のヒラ感覚で叩くから、左手は〝引っぱる〟のがメインとなり〝たぐる〟必要はなかった。だから左腰のターンとともに左肩も大きく開くフォローになり、逆C型のフィニッシュになりました。

これでも完成形ですが1949年の自動車事故で左サイドを壊され、左手もよりスクエアにして〝新しいスナップの受け方〟にする必要が出てきたのです」(森)

自動車事故の後で左手をスクエアに

「自動車事故でスイングがコンパクトになる前の『パワー・ゴルフ』では右肩を指していた左手のV字が、『モダン・ゴルフ』では右目を指すように変わった。事故で壊れた左サイドの負荷を軽減できるようにアレンジしたのだと思います」(森)

左手で変わるのは左腕のローリング

「左手がフックのときは、ダウンで左腕のローリングはゆるやかで、左サイド全体のターンでスナップ動作を受けていました。左手がスクエアになると、左腕のローリングとたぐり動作が鋭くなり、フィニッシュで上体が反らなくなっています」(森)

ホーガンアナリスト
森 守洋
ベン・ホーガンを手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。

取材協力/東京ゴルフスタジオ


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