50歳でもメジャーに勝てる! IQ200の天才フィル・ミケルソンに自信と確信を授けたゴルフドクター
佐渡充高のテレビでは語れなかったPGAツアー
ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活躍する佐渡充高が取り上げ、独自の見解とともにお届けします。
GOLF TODAY本誌 No.590/83ページより
メジャー史上最年長優勝記録を更新できた背景には何があったのか
フィル・ミケルソンは50歳で5月の全米プロゴルフ選手権に優勝し、メジャー史上最年長優勝記録を更新。それは47.9インチの長尺ドライバー&ミニドライバー、コーチ、キャディ(実弟)、トレーナーらチームの尽力と総力、心身の徹底ケアの賜物だった。
加えて今回の切り札はアラ・サピアというゴルフドクターの存在だ。ミケルソンの戦略や様々な創意工夫に対し医学的エビデンスに基づいた助言で迷いを払拭できたからこそ、最後まで自身を信じ集中力を維持、圧巻のドライビングも可能にしたのだと感じた。
サピア医師はマレーシア出身。イングランドの医科大学に留学し外科医となった。スポーツ選手の手術を執刀した際、選手から試合復帰の時期や早期回復への工夫等の具体的質問を受け、機能スポーツ医学へシフト。2002年ライダー杯で欧州チーム専属医師として勝利を経験。その後、米国へ渡り市民権を取得し2016年ライダー杯では米国チーム専属医師として、また勝利。これを機にミケルソンと親しくなり医療アドバイザーとしてサポートすることになった。
ミケルソンはプロ3年目にスキー事故による大腿部、足首骨折でツアーを約3カ月離脱。腰痛や手首痛なども経験。負傷予防も兼ね02年から本格トレーニングを開始したが、40歳で体にかつてない異変が起こった。全米オープン直前に関節リュウマチで歩行困難に。投薬でプレーが可能になっても左人差し指、右手首に激痛があり自分で注射を施しながらの転戦を経験し体調を強く意識するように。加齢による変化も加わり今後の展望を練り直す時期にサピア医師に出会った。
19年7月から医師の指導のもと36時間断食を習慣化すると腹部がすっきりし腰の動きもスムース、ヒザへの負担も軽減し想定を超える効果が! 断食期間に試した機能性コーヒー(Lテアニン、MCT油、コラーゲン等入り)も進化をサポート。気持ちが安定するとプレー中も愛飲し、昨年6月頃からは皮膚がん予防と紫外線対策のためサングラスを着用しはじめた。すべてのミッションはIQ200で医学部進学を勧められた天才ミケルソンの探求心を刺激し、さらなる意欲をかきたてた。脂肪の多い肉類や糖質の多いパスタなどを減らし野菜中心メニューに変え体調は好転したが、最も辛かったのは食事制限。20年前にレストラン開業、自宅でも専属シェフによる美食を堪能する日々から断食という転換は革命に近かった。イバラの道を乗り越えたミケルソン、次の大願成就へ挑戦は続く。
●文/佐渡充高
さど・みつたか
上智大学法学部卒業。1985年に渡米し、USPGAツアーを中心に世界のゴルフを取材。NHKゴルフ解説者。
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