PGAツアー選手たちを鼓舞するマイケル・ジョーダンシューズ
佐渡充高のテレビでは語れなかったPGAツアー
ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活躍する佐渡充高が取り上げ、独自の見解とともにお届けします。
GOLF TODAY本誌 No.591/99ページより
神様は最高のインフルエンサー
2年前に15キロ以上の激ヤセ、昨秋にメンタルヘルスの不調を公表し案じられたババ・ワトソン(42歳)に心身の確かな復調が感じられる。7月ロケットモゲージクラシック最終日、ベストの8アンダーで25位から一気に6位タイへ浮上し今季5回目のトップ10。前週の大会で最終日終盤に崩れ逆転負けを喫した速攻リベンジは、ガッツにあふれていた。その足元にはバスケの神様マイケル・ジョーダン(以下、MJ)のトレードマーク“ジャンプマン”が! パワフルなプレーは神様に鼓舞されているようだった。
ワトソンは今春からMJシューズを履きはじめた。最初はマスターズで白と緑の特別モデルのエア・ジョーダン4G。7月は同シリーズの5モデルと次々に投入。時には未発売でマニア垂涎シューズを履いていることも! そのわけはMJとサイズが同じ13で、MJ直履きのプレミアム「おさがり」を多数譲り受けているからだ。
ワトソンは学生時代にバスケ選手で、アンジー夫人は欧州女子リーグの元プロバスケ選手。夫妻はMJの活躍に大きな影響を受けてきた。ワトソンはNBA時代へのリスペクトと今も猛烈にゴルフに打ち込むMJのパッションに刺激を受け、復調への願いをシューズにこめている。
PGAツアーで初めてMJシューズを履いたのは2015年Kブラドリー、2018年からは契約選手バーナーⅢ、ツアー3勝のパット・ぺレス(45歳)は人生の歩みをかみしめながら履いている。
「中学生の頃、経済的理由でスニーカーを買えなかった。偶然ゴミ箱に捨てられていた憧れのジョーダンモデルを拾い履いてみるとピッタリ! 家に持ち帰り磨き上げた。それが最初の1足」とシューズ愛と運命を振り返る。今では自宅に千足以上を飾る専用部屋を設営するに至った。
MJと親しい俳優ビル・マーレー兄弟プロデュースのウェアを着用していた縁で、MJ本人と対面が叶い意気投合。仲間も加わり欧州へ一緒にゴルフ旅行をするほど親しくなり「まるでシンデレラストーリー」と、今ではMJの人柄にもぞっこんだ。
MJがゴルフと出会ったのは84年ノースカロライナ大学時代。チームメイトがゴルフ部のデービス・ラブⅢと友人で、誘われ初めてゴルフを経験。NBA現役時代も寸暇を惜しみプレーし「ゴルフはパッション」と公言。引退後はタイガー・ウッズらに珠玉の助言を授け、ライダー杯やプレ杯では副主将として勝利に貢献。一昨年秋に完成したマイ・ゴルフ場には彼を慕う著名選手が集い、コロナ禍でも安心しプレーできるよう食事や飲料運搬にいち早くドローン投入などアイデアに拍手喝采! 初孫(2歳)にも恵まれた58歳のハッピーな神様は、ゴルフ界最高のインフルエンサーだ。
●文/佐渡充高
さど・みつたか
上智大学法学部卒業。1985年に渡米し、USPGAツアーを中心に世界のゴルフを取材。NHKゴルフ解説者。
写真/Getty Images
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