茨城県笠間市のゴルフによる地域活性化の取り組み
SDGsとゴルフ|第2回
SDGsとは,Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標であり、17のゴール・169のターゲットから構成されている。
SDGsをスポーツで達成しようとする動きの一つに地域の活性化がある。野球、サッカー、バスケットボールなどのチームスポーツでは、本拠地、ホームタウンの名の下に、地域社会に貢献することでSDGs達成を目指す組織が数多く出てきている。実はこのスポーツを通じた地域の活性化の動きは個人スポーツであるゴルフでもあるのだ。
GOLF TODAY本誌 No.591/101ページより
人口約7万人の町が、ゴルフのオリンピック選手2人を輩出!
市内の施設で子供の頃からゴルフに親しんだ星野陸也、畑岡奈紗がオリンピック代表に!
本号が発売される8月5日には、すでにオリンピック男子ゴルフは終了し、女子も2日目を迎えている。単なる出場だけでなくメダリストとなっている可能性も高いが、執筆時は開催前だということだけ先に書かせていただく。
7月5日、茨城県笠間市のホームページに、ワクワク感に溢れた言葉が掲載された。「私たち市民に夢と希望を与えてくれた嬉しいニュースに、感謝と応援を込めた“声”をお送りします」。星野陸也、畑岡奈紗のオリンピック出場決定を伝えるニュースには、彼らが子供の頃から関わってきた市内の関係者の声が多数掲載されていた。
「以前からオリンピックに出たいと話していた夢を有言実行されたのは本当にすごいと思いますし、みんなで喜んでいます。がんばってね!」と話す市内のゴルフセンターの方の声、さらには幼稚園、小学校、中学校の先生など、両選手に関わってきた地域の人々の声はとっても温か。2人の活躍が市民の皆さんの希望になっていることが伝わってくる。
2003年から社会貢献活動の一環として行われてきたスナッグゴルフの寄贈
2人のオリンピック選手が出てきた背景には、笠間市などが約20年前から開始したゴルフと子供たちをつなげる取り組みがある。山口伸樹市長のメッセージには、「本市では、2003年に社会貢献活動の一環として、森ビル株式会社様と日本ゴルフツアー機構様から小学校全校にスナッグゴルフのセットが寄贈されたことをきっかけに、今でもスナッグゴルフが盛んに行われており、毎年全国大会で上位の成績を上げています。両選手ともにスナッグゴルフの経験があると聞いておりますが、スナッグゴルフを通じゴルフの楽しさに触れ、将来のプロゴルファーを目指すきっかけとなったのではないでしょうか」と記載されていた。
星野、畑岡だけでなく、笠間市では毎年のようにプロゴルファーを輩出。笠間市は以前より「ゴルフのまち」を目指していると明言しており、ゴルフでの地域活性化を推進してきた。笠間市にある男子メジャー「日本ゴルフツアー選手権」を開催する宍戸ヒルズカントリークラブがスナッグゴルフの練習のために土日の午後にコースを解放するなど、子供達がゴルフに親しむ環境づくりをゴルフ場やゴルフ練習場もバックアップ。その結果が、2人のオリンピック選手を生み出した。
ゴルフによる地域活性化の取り組みは笠間市以外にも様々なものがある
今回は笠間市だけに焦点を当てたが、ゴルフによる地域活性化の動きは他にもある。ゴルフトーナメントなどのイベントの開催、ゴルフを目的とする旅行スタイルを提唱するゴルフツーリズム、さらにはコロナ禍によってリモートワークが日常化したことで、ゴルフ場でのワーケーションの動きも出てきた。
地域の活性化にはSDGsの推進が必要。その中でゴルフが貢献できることは間違いなくたくさんある。
北村 収
1968年東京都生まれ。ゴルフ雑誌(ALBA)編集部、ゴルフダイジェスト・オンライン メディア部門に所属後、2011年に株式会社ナインバリューズを設立。ゴルフ分野を中心に、取材・執筆・編集からソーシャルメディア、web、Eコマースの企画運営まで総合プロデュースを手掛ける。