アプローチショットで距離感を合わせるコツ
人気プロコーチ・大西翔太がわかりやすく解説!
アプローチショットの距離感が合わないとピンに寄らないし、スコアにならない。「そんな悩みを抱えている人の多くは、スイングを理屈で考えすぎる傾向が見られます。もっと自分の感覚を引き出せば、距離感が合いやすくなりますよ」と大西翔太コーチ。そこで距離感を身につける方法をレクチャー。目からウロコのアドバイスで、アプローチが一気に上達する。
アプローチショットで距離感を合わせるコツ
アプローチショットの距離感を合わせるコツ
アプローチショットの距離感をどのようにコントロールするかというと、一番はスイングの大きさです。ピンまでの距離が近いとスイングの振り幅が小さくなりますし、ピンが遠いほどスイングが大きくなります。それはだれでも一緒ですが、「どのくらいの振り幅でスイングすれば、自分の打ちたい距離を出せるか」が難しいところ。距離感というのはゴルファー個々で異なりますし、距離感の出し方も人それぞれです。ピンまでの距離が40ヤードなら、ゴルファーによってスイングの振り幅や感覚が違います。つまり、アプローチの距離感の合わせ方は正解があってないようなもので、自分自身で作っていくしか方法はないのです。
ボクの場合、どのようにアプローチショットの距離感を合わせているかというと、「足踏み」の感覚です。自分が歩いている姿を想像してください。小さい歩幅でゆっくり歩くときは腕を小さく振りますよね。歩幅を次第に広げて、歩くスピードを速めていくと腕の振りが大きくなるでしょう。足の出力が小さいと腕の振りが小さくなる。足の出力を上げれば自然と腕の振りが大きくなる。アプローチショットの距離感は腕の振りの大きさでコントロールしますが、腕の振りを調整するのは足の出力にかかっています。足裏で距離感を表現することが、アプローチショットの距離感を合わせるコツなのです。
アプローチショットの距離感を合わせる打ち方
アプローチショットの距離感を合わせる打ち方としては、軽く足踏みしながらスイングする感覚が一番です。普段の練習でも小さい足踏みからスタートして、足踏みを少しずつ大きくしていきましょう。打つ前に軽く足踏みしながらの素振りを数回繰り返し、感じをつかんだらボールを打ちます。小さい足踏みのときは左右の重心移動やカラダの回転量が少ないのでスタンスは狭くします。足踏みを大きくし、足の出力を上げていくと左右の重心移動やカラダの回転量が増えますからスタンスの幅も広くしていきましょう。足の出力が最大になったところがフルショットです。
実際にボールを打つときは歩行時のような足踏みはしませんが、足踏みしながらスイングする感覚はとても大事です。小さめの足踏み感覚ならボールが何ヤードくらい飛ぶか、足の出力を何段階かに分けて、このくらいならキャリーが何ヤードくらい出るか、という具合に自分なりの距離感を磨いてください。アプローチショットは下半身を止めて、腕だけを振ろうとしてもダメ。腕を振る大きさばかりに意識がいくと、自分の感覚を生かせなくなります。またインパクトの強弱で距離感を合わせようとしてもインパクトの打点が安定しにくく、ダフリやトップなどのミスが多発します。
足踏み感覚のスイングなら、テークバックとフォロースルーが左右対称形となりやすく、スイング軌道が安定します。結果的にインパクトの打点が一定して距離感がそろいやすいのです。またクラブを長く持つとスイング軌道にズレが生じやすいですから、クラブは短く持ちましょう。グリップエンド側を自分のコブシの幅くらい余して持つようにすれば、クラブをコントロールしやすくなり、距離感がそろいやすくなります。
アプローチショットの距離感を合わせるドリル
アプローチショットの距離感を合わせるための練習方法としては、自分の感覚を磨くことが大前提となります。たとえば野球のキャッチボールを思い浮かべてください。相手までの距離を本能的に目で測って、腕を振るスピードや大きさを加減してボールを投げますよね。キャッチボールをしたことのない人でも、少し離れたゴミ箱に向かってゴミを下手(したて)で投げるときもゴミ箱までの距離を目測して腕を振るでしょう。腕をどのくらいの大きさで振るか、どのくらいのスピードで振るかというのは頭で計算することではなく、目で見た感覚やイメージに委ねるものなのです。
練習場には30ヤードとか50ヤード、70ヤードなどの表示板があります。そこで1球ずつ目標を変えて打つ練習をしましょう。50ヤードの次は30ヤード、その次は70ヤードという具合に色々な距離をランダムに打ち分けるのです。「今度はあそこに打ってみよう」と、ときには表示板がない場所を狙って打つのも効果的。目標までの距離がよくわからなくても、目で見た感覚のままで打つ練習こそ、本当の意味でのアプローチショットの距離感を合わせるドリルです。
距離感は目からの情報がとても重要で、ピンまで50ヤードの距離を打つときは、ショット前にピンを見たまま軽く足踏みしながら素振りを数回繰り返しましょう。30ヤードや70ヤードのアプローチショットも同様で、足の出力や足裏で距離感をイメージして素振りするのです。素振りを続けるうちにテークバックとフォロースルーが自然と左右対称形となり、距離感のイメージが明確に浮かんできます。アドレスを作ったら、素振りで把握したイメージが消えないうちにボールを打ち終えるようにしましょう。
ボクはジュニアゴルファーのコーチもしていますが、特に力説したいのは「感育」ということです。感育とは「感覚を育てる」という意味で、アプローチショットの距離感を合わせるためにも感育が大切になります。ジュニア世代はスイングを理論よりも感覚で覚えようとするから、メキメキ上達します。ところが大人は理論で覚えようとしがちで、これが感育を妨げてしまいやすいのです。自分の感覚を育てる気持ちになれば、アプローチショットの距離感を合わせるコツがすぐにつかめるはずです。
〈アプローチショットの距離感を合わせるコツのまとめ〉
・足踏みの感覚を取り入れると、スイングの大きさをコントロールしやすい。
・実際に打つときも足踏みのイメージでスイングする。
・打つ前に目標までの距離を見ながら素振りを数回繰り返す。
・目標までの距離をランダムに変えて打つ練習で距離感を養う。
足踏みの感覚を取り入れて距離感を合わせる。
目標を見て軽く足踏みしながら素振りすれば、距離感のイメージがつかめる。
※動画はショット音が流れますので音量にご注意ください。
取材・文/三代 崇
写真/渡辺義孝
協力/静ヒルズカントリークラブ
大西翔太
大西・翔太/1992年6月20日生まれ、千葉県出身。水城高校ゴルフ部を経てティーチングプロの道に進む。日本プロゴルフ協会公認A級の資格を取得。現在はジュニアの育成に尽力する一方で、青木瀬令奈のコーチもつとめる。21年は宮里藍 サントリーレディスオープンで、青木の4年振りツアー2勝目に貢献した。メンタルやフィジカルの知識も豊富。女子ツアープロの大西葵は実妹。