タイトリスト T100・Sアイアンを高橋良明が試打評価レビュー
『T100・Sアイアン』と『T100アイアン』はタイトリストの2代目「Tシリーズ」の中でもとくに評判を呼んでいるアスリートモデルです。今回はこの2機種のうち、より初速性能を重視した『T100・Sアイアン』の飛びやねらいやすさについて、試打のスペシャリストとしても活躍するプロゴルファー高橋良明が解き明かしていきます。
[目次]
タイトリスト T100・Sアイアンの総合評価
飛距離性能 | ★★★★☆(4/5) |
---|---|
打球感 | ★★★★☆(4/5) |
操作性 | ★★★★☆(4/5) |
上がりやすさ | ★★★★☆(4/5) |
総合評価 | ★★★★☆(4/5) |
タイトリスト T100・Sアイアンの特徴
双子のように見た目のそっくりな『T100・Sアイアン』と『T100アイアン』ですが、実は商品コンセプトに応じて明確な作り分けがなされています。それぞれのコンセプトは『T100アイアン』が複合素材を採用した「モダンツアーアイアン」。これに対して『T100・Sアイアン』は「ファスター(より速い)ツアーアイアン」として、製品名にもスピードを意味するSが添えられています。つまり、『T100・Sアイアン』はツアーからのフィードバックによるかまえやすさや高い操作性など『T100アイアン』と基本性能を共有しながら、初速性能をさらに向上させた飛び系アスリートアイアンというわけです。
- ストロングロフトと「マッスルチャンネル」で初速がアップ
- 球筋をイメージできる顔と精密なコントロールが可能なソール
- 「高比重タングステンウエイト」内蔵でコンパクトでもやさしい
特徴1. ストロングロフトと「マッスルチャンネル」で初速がアップ
『T100・Sアイアン』の初速性能が高い理由は2つあります。一つはストロングロフト設定です。全番手のロフトが『T100アイアン』よりも2度ずつ立てられているため、エネルギーが効率よく伝わってボールを前に押し出してくれます。もう一つは「マッスルチャンネル」と名付けられた新構造です。『T100・Sアイアン』の外観は『T100アイアン』と同じハーフキャビティのように見えますが、実はキャビティの下側にスリットの入ったポケットキャビティのような構造となっていて、ポケット部分にポリマーが充填されています。「マッスルチャンネル」にはフェースの弾きをさらにアップさせると同時に打ち出し角を上げる効果があるため、『T100・Sアイアン』は高初速・高弾道で飛ばして止められるアイアンとなっています。
特徴2. 球筋をイメージできる顔と精密なコントロールが可能なソール
ストロングロフトを採用したアイアンの多くはヘッドサイズもグースの度合いも大きめで、オートマチックに真っすぐ飛ばせるように作られています。これに対し、『T100・Sアイアン』は短いブレード、薄いトップブレード、ほぼストレートなネックなどインテンショナルな球筋をイメージしやすい顔に仕立てられています。また、ツアープレーヤーによるテストで磨き抜かれたソール形状は、エリアごとに最適なバウンス角を設定。芝の種類やライの状況にかかわらずスムーズにヘッドを振り抜くことができるため、より精密なボールコントロールが可能となっています。
特徴3. 「高比重タングステンウエイト」内蔵でコンパクトでもやさしい
操作性に優れたツアーモデルながら高い寛容性を併せ持っているところも特徴です。『T100・Sアイアン』ではロング&ミドル番手のボディに強度の高いバネ鋼「SUP-10」を採用。タングステン合金の中でもとくに比重の高い素材を航空宇宙産業向けの特殊な製法でトゥ・ヒールへ精密に配置することで、コンパクトなサイズにもかかわらず芯を外してもブレにくいヘッドを実現しています。さらにフェース後方のスリット「マッスルチャンネル」により高初速エリアが拡大、安定したキャリーで飛ばしてねらえるアイアンとなっています。
タイトリスト T100・Sアイアンのスペック
全番手のロフト角が『T100アイアン』よりも2度ずつ立っており、単純計算で0.5番手飛ぶ仕様。6番からPWまでの5本セットなのでミドルアイアンの代わりにUTを組み込みやすくなっています。また、オプションで48度のギャップウェッジ(W)を選べるためSWまでスムーズな距離の階段を作ることができます。標準シャフトはタイトリストオリジナルの『N.S.PRO 105T』と『N.S.PRO MODUS3 TOUR115』から選べます。
メーカー | タイトリスト |
---|---|
製品名 | T100・S アイアン |
ヘッド素材 | [#4〜7]SUP-10鍛造+高比重タングステン [#8〜W]軟鉄 |
番手/ロフト角 | 4I/22度 5I/25度 6I/28度 7I/32度 8I/36度 9I/40度 P/44度 W/48度 |
シャフト | スチール:N.S.PRO 105T(S)、N.S.PRO MODUS3 TOUR115(S) |
長さ(#7) | 37インチ |
重量/バランス(#7) | 426g/D1(N.S.PRO 105T (S)) 432g/D3(N.S.PRO MODUS3 TOUR115 (S)) |
価格 | 5本セット(#6〜9、P):132,000円(税込み) 単品(#3、#4、#5、W):26,400円(税込み) |
公式サイト | タイトリスト公式サイト |
タイトリスト T100・Sアイアンを試打レビュー
ツアープロが望んだシャープな形状、寛容性に飛距離性能がプラスされた『T100・Sアイアン』のはどんなゴルファーにマッチするのか。『T100アイアン』との比較も交えつつ高橋良明が徹底的にチェックしました。
- ソールの抜けが抜群にいいから何発打っても同じ弾道になる
- 見た目がシャープでもミスヒットに強く球のブレが小さい
- 高初速、高打ち出しで0.5〜1番手飛び、しかも止まりやすい
ソールの抜けが抜群にいいから何発打っても同じ弾道になる
『T100・Sアイアン』の顔は『T100アイアン』とまったく同じに見えますね。両方を並べてみるとようやくロフトが立っているのがわかるくらいです。ヘッドが小さくてトップブレードが薄くてシャープ、オフセットも少なくかまえた感じはタイトリストのプロモデル『620MB』や『620CB』など近く、持っただけでその気にさせてくれる面構えです。ソール幅もけっこう狭く抜けがいいのも特徴です。形状もよく考えられていて、どこか一箇所が地面に突っかかるようなことがなくバンス全体がきれいに当たる感じです。けっこう上から入れてもスパッときれいに抜けてくれて、フェース面のブレもありません。それなりに技術のある人が使えば何度打っても同じような球が出ます。
見た目がシャープでもミスヒットに強く球のブレが小さい
これだけブレードが短くて薄くても、タングステンウエイトのおかげでヘッドサイズに比べてスイートスポットが大きくなっているので、芯を外したときにもそれほど当たり負けする感じはありません。とくにトゥ側のミスヒットに強く、フェースが開いて右にすっぽ抜ける球が出にくくなっています。ポケットキャビティの『T100・Sアイアン』は『T100アイアン』よりもさらに芯が広く、ロフトが立って難しくなっている分をカバーしています。また、ロフトが立っている分初速も早くなっていますが、ポケット内のポリマーが振動を吸収してくれて、ソリッドな打感は『T100アイアン』とまったく同じ。打って区別の付く人は少ないでしょう。
高初速、高打ち出しで0.5〜1番手飛び、しかも止まりやすい
ロフト角2度分、『T100・Sアイアン』の初速は確実に速くなっています。同じシリーズの『T300アイアン』や『T400アイアン』ほどではありませんが、『T100アイアン』と比べると飛距離は顕著に違っていて、自分自身が打ったイメージでは1番手くらい飛んでいますし、誰が打っても半番手は伸びると思います。ただ、一般的な飛び系アイアンと違うのはスピンが入って球の高さがしっかり出るところです。球の高さや飛び方は『T100アイアン』とほぼ同じで、最高到達点だけが先の方に移動している感じです。したがって落下するときの角度も大きく、グリーンにボールを止めやすくなっています。
タイトリスト T100・Sアイアンがおすすめの人
ロフト角と素材の影響で中空アイアンのように出球が速いけれど、打感そのものはとてもソフトです。ショートアイアンは軟鉄ですが、違いが気にならないくらいなので打感にこだわる人にもオススメできます。顔もとてもシャープで、競技志向のゴルファーやタイトリスト好きなら文句はないはずです。このアイアンが気になる人が迷うとすれば顔がほとんど同じ『T100・Sアイアン』と『T100アイアン』のどちらを選ぶかでしょう。いままでマッスルバックやハーフキャビティを使って来て距離が落ちてきた人や、アイアンももうちょっと飛ばしたいなって人には『T100・Sアイアン』がオススメ。操作性やショットの精度についても不満は出ないでしょう。また、ウェッジの本数でアイアンを決める方法もあります。PWを含めて4本ウェッジで行くなら入れるなら『T100・Sアイアン』、3本なら『T100アイアン』を選べばショートゲームのつながりがよくなります。
タイトリスト T100・Sアイアンの評価
『T100・Sアイアン』は、マッスルバックのようなシャープな顔とやわらかくてソリッド打感、複合モデルのやさしさを融合し、そこに飛び系アイアンの要素を加えた新しいジャンルのアイアンです。アイアンで飛距離を求めるとどうしてもサイズが大きくなったり、ブレードが厚くなったりするので『T100・Sアイアン』のようなモデルはとても貴重です。アイアンで飛ばしたいけどピンをねらえないのはちょっと困るという人や、バリバリのアスリートでももう少し飛んだら攻め方が楽になるという人にはぴったりのクラブです。
テスター/高橋良明(たかはし・よしあき)
1983年生まれ、東京都出身。2013年プロ入会。サザンヤードCC所属。ツアーに挑戦するかたわら、ゴルフ専門誌やウェブメディアでテスターを務める。毎年出る新製品をほぼ打ち尽くす試打のスペシャリスト。
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