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寒くても安くプレーできる冬は最高? 若者ゴルファーの辞書にオフシーズンという言葉はない

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第2回

2023/01/31 ゴルフサプリ編集部

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第2回

練習グリーン

ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
撮影/篠原嗣典

真冬でもゴルフが出来る幸せ

「冬の間はゴルフはしないから……」
オールドゴルファーの何割かは、冬の期間はゴルフをお休みする慣習を採用しています。
他者に迷惑を掛けない限り、ゴルファーの選択は自由ですから、非難したり、されたりするのは野暮というものです。

雪が多いエリアでは、ゴルフコースは冬期クローズになりますから、ゴルフをしたくともできないと嘆いているゴルファーもいます。
彼らからすれば、真冬でもコースがクローズしないだけでも、十分にラッキーなことです。

とはいえ、せっかくのゴルフは、できるだけ良い環境でやりたいと考えるのは当たり前ですから、好き好んで真冬にゴルフをするという人は少ないのが現実。
冬はゴルフのオフシーズンということになるわけです。

しかし、2020年の終わり頃から、冬のオフシーズンの様子が少し変わってきました。都会から遠いコースは、冬になると来場者が少なくなり、ガラガラになるものですが、明らかに人が増えたのです。『コロナ禍で迎えた冬のオフシーズンなのに?』と関係者の疑問をスルーして、事実は小説より奇なり、でした。

そして、2021年の終わりは異常でした。秋のハイシーズンから始まって冬のオフシーズン、そして、年末年始まで、週末の満員御礼が途切れなかったのです。
約10年間、そのコースに通っていますが、こんなことは初めてでした。

真冬でもコースがゴルファーで溢れた最大の要因は、たくさんの若いゴルファーが誘い合って来場しているからです。コースに溢れるゴルファーの過半数は、若い人たちなのは、誰が見てもわかる現実だったのです。

僕は朝のゴルフコースで、ゴルファーの期待に溢れた笑顔が交差するシーンが大好きで、スタート時間にかかわらず、早めにコースに行くようにしています。
そういう中でも、冬の朝は特別なのです。

「寒いけどさぁ。安くゴルフできるのって、最高だよね」
というような声が、コースのあちらこちらで聞こえてきます。
その多くが若者たちです。何とも頼もしく、微笑ましい気持ちになります。

カチコチのコースは平等で原点なのだ

「ボールは飛ばなくなるし、グリーンは凍っていて止まらないし、コースは茶色で寂しいし、真冬のゴルフは面白くないよ」

真冬のゴルフが嫌いなベテランのゴルファーは、異口同音にこんなふうに言うのです。その通りなのです。

2022年の初打ちで、隣のホールのティから、こんな会話が聞こえてきました。
「おぉー! 乗った。乗った」
「生まれて初めてパー4でワンオンした」
「凄いじゃん。300ヤードだよ」
「俺、練習場での最高250ヤードしか飛んだことないけど、本番に強いタイプなんだな」

永久凍土になったと俗にいうのですが、真冬になると、コースの表面の霜が溶けても、芝生の下の地面は凍ったままで、ボールが道路に当たったように跳ねて止まらなくなります。
永久凍土のコースでは、ドライバーショットの場合、50ヤードぐらい普段より転がって飛ぶ現象が起きるのは当たり前で、条件によっては100ヤードもランで稼ぐことあるのです。

隣のコースのグループは、永久凍土を上手く使って、2022年最初のゴルフの神様からの贈り物をもらった、ということなのだと思います。
今年1年間、もしくはそれ以上に、何度も語れるエピソードになるでしょう。

良いことばかりではありません。ドライバーショットだけではなく、空中を飛んでいくショット全てに永久凍土は影響して、ボールを跳ね飛ばすからです。
グリーンを狙ったショットは、キャリーでグリーンに落ちたら、気持ち良く跳ねて、ほぼグリーンを越えてしまいます。

次こそは止まるかもしれない、とグリーンを狙い続けるのもありですし、花道を狙って転がし上げる作戦もありです。パワーヒッターの超高弾道ボールも、強烈なバックスピンも、永久凍土の前では無力です。
普段より転がることを利用する永久凍土のゴルフは、突き詰めて考えると、限りなく平等なのです。

挑戦し続けてわかることは、永久凍土のコースを前に、ゴルファーが出来ることは、コースと戦うことではなく、コースに従いつつ、自分のやりたいことを実行できるか、ということだけなのです。

修行を経て僕らは悟りを開く

極寒ゴルフの面白さは、最新の装備で防寒に成功する楽しさが一つのポイントです。
そして、真冬のゴルフを経験すればするほど、転がってしまうことをベースにコース攻略を考える絶好の機会になるということに気がつくものなのです。

ゴルフが生まれて、しばらくの間、ゴルフはボールを転がすゲームだったと考えられています。
それは、現在のゴルフでもパットとして重要な要素の1つになって残っています。
極寒の永久凍土のコースは、原始のゴルフを疑似体験するチャンスだと考えると、急に面白さが増し、コースマネージメント力を高めるのだ、とやる気も増すのです。

「真冬のゴルフなんて、何が面白いの?」
過去に千回以上聞かれました。
「真冬のゴルフは修行です。修行を乗り越えた者だけが、入ることを許される楽園があるのです」
できるだけキラキラした目をするようにして答えています。
大概の相手は、キラキラしたつぶらな瞳を悪い薬でもやっているバキバキした目だと誤解して、ドン引きします。

でも、冗談と笑い話にする気はないのです。
本当に真冬のゴルフは修行なのです。ハイシーズンのゴルフの面白みの半分ぐらいは封印されているのに、やせ我慢を強いられても、平常心を保たなければならないからです。
とはいえ、その苦悩の先に、楽園があるのは本当です。冬を制して、ランクアップしたゴルファーを僕はたくさん知っています。

極寒の真冬ゴルフで修行して、悟りを開いて春を待つ……
氷点下の気温の朝。ゴルフコースに集まるゴルファーは、もちろん、自分の仲間以外は知らない人です。でも、特別なシンパシーを感じるのです。
そこにいるゴルファーは、厳しい修行を一緒に耐える仲間だと思えるからです。

かつて、修行仲間は少数でした。冬のオフシーズンのコースは閑散としているものでした。
2022年。若いゴルファーの増加によって、修行仲間は一気に増えています。

若い者には負けていられない、というプライドも感じつつ、悟りを開いたゴルファーだけが行ける春の楽園に向けて、修行は始まっているのです。

篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家

篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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