ゴルフのバックスイングを安定させるコツ|右肘や左膝、手首の使い方
この記事ではゴルフのバックスイングについてお話しします。ゴルフスイングにおいてバックスイングはとても重要とよくいわれます。そのせいか、バックスイングに悩んでいるアマチュアを多く見かけます。
そこで悩み解決の糸口となる情報をさまざまな角度からご紹介。バックスイングの良し悪しはスコアアップはもちろん、飛距離アップや方向性アップにもかかわってくるため、ぜひ参考にしてください。
ゴルフのバックスイングとは
ゴルフのバックスイングとはスイングを開始してからトップに至るまでの一連の動きのことです。またアドレスしたあと、クラブを後方へ引いたり、振り上げたりして、トップまで導くことという解釈もあります。
ごく簡単にいうと打つ前の動作のこと。金槌で釘を打つとき、バットでボールを打つとき、ラケットでシャトルを打つときなどにも起こる当たり前の動作です。
バックスイングが難しい理由は始動にアリ
バックスイングが難しいとされる理由のひとつに、体が静止している状態から、能動的に始動しなければならないからというものがあります(静止しないプレーヤーも多々います)。
静止した状態から、理想とされる動きでバックスイングを行おうとすると、たいていの人はリキみが生じ、逆に理想とかけ離れた動きになってしまう傾向があります。するとバックスイング時のクラブの軌道が悪くなったり、体重移動が正しく行われないといったことが発生します。
また理想的とはいえないバックスイングだと、肝心のダウンスイングにも悪影響がでて、インパクトが不安定になります。こういったことからバックスイングは難しいといわれるのです。
ゴルフ初心者に多いバックスイングのミス
ここではゴルフをはじめたばかりの人や100切りを目指すレベルの人に多い、バックスイングのミスについてお話しします。ここに挙げたエラー動作を行っていないか、確認してみてください。
- バックスイングでフェースが極端に開く/閉じる
- バックスイングの動作で手と体が連動していない
- バックスイング時に体が伸び上がる/スエーする
バックスイングでフェースが極端に開く/閉じる
ハイハンデのアマチュアゴルファーがおかしがちなバックスイングのミスその1は、フェースの開き具合です。
スイングの基本はゴルフクラブのシャフトが地面と水平になったとき、フェースは前傾角度と同じ傾きがベストです(スクエアフェース)。
前傾角度よりもフェースが下を向いていたり(シャットフェース)、上を向いていたり(オープンフェース)すると、スクエアにインパクトする確率が低くなります。
このことから、できるだけ前傾角と同じ向きになるように心がけてバックスイングすることが大切です。
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トゥが真上を指すのはオープンフェース
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フェース面が下を向くのはシャットフェース
バックスイングの動作で手と体が連動していない
ヘッドが背中側にあるのは理想の軌道から外れているから
ハイハンデのアマチュアゴルファーがおかしがちなバックスイングのミスその2は、手(グリップ)と体の位置関係です。
スイングの基本はゴルフクラブのシャフトが地面と水平になったとき、グリップとヘッドが重なっているのがベストです。
ヘッドが飛球線側にあったり、逆に背中側にあったりすると、クラブが理想の軌道から外れているためスクエアにインパクトする確率が低くなります。
このことから、できるだけグリップとヘッドが重なるように注意してバックスイングすることが大切です。
バックスイング時に体が伸び上がる/スエーする
体が伸び上がるとミスショットしやすくなる
ハイハンデのアマチュアゴルファーがおかしがちなバックスイングのミスその3は、体の動きです。
スイングの基本として、バックスイングのときに体が伸び上がったり、スエーするのはエラー動作です。
このような動きが発生するとクラブが理想の軌道から外れて下りてくるためダフったり、トップしたりということに。つまり、スクエアインパクトの確率が下がるのです。
このことから、伸び上がったり、スエーしたりしないように気をつけることがとても重要です。
バックスイングの上げ方のポイント【図解】
ここからは実際にバックスイングする際の“上げ方=方法”についてお話しします。
バックスイングに悩んでいて、どう上げたらいいのか迷っている人はぜひ参考にしてください。そしてスムーズなスイングを手に入れましょう!
- まずはバックスイングのよい軌道をイメージする
- 上げる方向と高さはハーフウェイバックでチェックする
- バックスイングは手や腕ではなく肩や腰で行う
- フェースは腰の位置で前傾角度と同じにする
- 左肘は自然に伸ばし、右肘は軽く曲げる
- 必ず手首のコックを使ってバックスイングする
まずはバックスイングのよい軌道をイメージする
バックスイングはボールを打つための準備といえる動作です。この“準備”をきちんと行うことで、ボールを芯でとらえる確率がアップします。つまりよいショットのためには、とても大切な動きなのです。
そのためバックスイングにはさまざまなチェックポイントがありますが、まず意識してほしいのがバックスイング時にクラブヘッドが通る“軌道”です。
ナイスショットできる自分なりのバックスイング軌道をイメージし、その軌道に沿って上げてみましょう。これを繰り返せば体によいイメージが浸透してきます。
上げる方向と高さはハーフウェイバックでチェックする
グリップとヘッドが重なるように上げる
バックスイングの前半ではシャフトが地面と水平になったとき(いわゆるハーフウェイバック)、グリップとヘッドがシャフトプレーン上で重なるように上げていきましょう。
その後はシャフトが右腕の前腕の上を通るように体を回転させて、トップをつくります。このふたつに注意すれば上げる方向も高さも迷わずに済みます。
ハーフウェイバックでヘッドが飛球線側にあったり、背中側にあったりするのはクラブが理想の軌道から外れている証拠。注意しましょう。
バックスイングは手や腕ではなく肩や腰で行う
一般的にバックスイングは手や腕で行わず、肩の回転や腰の回転で行いましょうといわれます。その理由は手や腕は器用に動くため、バックスイングの軌道が安定しないから。つまり肩や腰は自由に動かないため軌道が安定しやすいというわけです。
方法としては、アドレスしたら鳩尾を右へ向けるように腰を回す、肩が飛球線に対して直角になるように回すなどがよく挙げられます。
またその際、アドレス時の両肩とグリップでつくられる三角形を崩さないようにともいわれます。
フェースは腰の位置で前傾角度と同じにする
ハーフウェイバックで前傾角度とフェースの向きが一致することが大切
前記したハーフウェイバックではグリップとヘッドが重なる位置にバックスイングします。
そしてその際のフェースは前傾角度と同じ角度がベストです。
この角度が揃っていればフェースはスクエアなので、インパクトでもスクエアになる確率が高くなります。
トップでフェースが正面を向くのはオープンフェース。上空を向くのはシャットフェースです。これらふたつの中間を向いていればスクエアフェースです。
ハイハンデでボールをつかまえるのが苦手な人は、スクエアかシャットになるように心がけましょう。
左肘は自然に伸ばし、右肘は軽く曲げる
左肘は自然に伸び、右肘は軽く曲がっているのがベスト
左肘はアドレスからトップまで、自然に伸ばしておきましょう。バックスイングのとき、体を回転させるにしたがって左肘を曲げてしまう人がいます。これはエラー動作でオーバースイングを招きます。
右肘は体が回転し、トップへと向かうにつれて徐々に曲がっていきます。そしてトップポジションでは右肘が地面方向を指しているのが理想です。
ハイハンデのアマチュアで右肘が背中方向を指している人がいますが、こうなると右脇が開いて、クロストップになるため注意が必要です。
必ず手首のコックを使ってバックスイングする
コックを使ってトップまでクラブを運ぶことが大切
手首のコックとは、親指の方向に手首を折る動作のことです。肩や腰の回転でバックスイングをスタートさせたら、少しずつコックの動作を行い、トップをつくりましょう。
コックを使わないとクラブヘッドが上昇しません。またタメもできません。さらに腕の運動量(腕が動く範囲)が大きくなりすぎるため、クラブが理想の軌道から外れます。
コックを意識する必要はないとか、コックを使う必要はないといった考えもあり、これは間違いではありません。ただ、使うことで得られるものもたくさんあるので、使ったことがない人は試してみるべきでしょう。
バックスイングの左膝の使い方
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左膝はアドレスの位置をキープする
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左膝を能動的に動かすのはエラー動作
バックスイングのとき、左膝を能動的に動かすことはエラー動作です。左膝に限らず、両方の足が不用意に動いてしまうとスイング軸がブレるのでジャストミートすることが難しくなります。
意識として膝は、アドレス時のカタチ(曲げ具合)も位置もキープしつづけるようにします。バックスイング中に伸びることもなければ、縮むこともありませんし、右足のほうへ過度に寄ったりすることもありません。
この意識がないと、左膝は許容範囲を超えて動いてしまうため注意が必要です。意識したうえで、体の回転につられて少し曲がったり、少し右足のほうへ寄ったりするのはOK。
ただし、膝が動けば動くほどボールコンタクトは悪くなります。このことをしっかりと覚えておきましょう。
バックスイングで多い悩みと解決方法
ここでは初心者や初級者のアマチュアゴルファーがバックスイングで悩みがちな主なポイントを紹介します。またその解決方法もお話しするので、当てはまる人はぜひ参考にしてください。
- クラブが極端に外側や内側に上がってしまいます
- 体が伸び上がってしまうのですが…
- 頭が下がるクセがあるのですが…
クラブが極端に外側や内側に上がってしまいます
バックスイングしたときのクラブの軌道が極端に外側だったり、内側だったりすると、クラブが理想の軌道から外れるためおすすめできません。
このタイプはたいてい手や腕の動きだけでバックスイングしているので、体を主体にして上げるようにすることが大切です。
アドレスしたときの両肩とグリップでつくられる三角形を崩さずに、みぞおちを右へ向けるようにしましょう。このとき少しずつコックを入れていくと、ハーフウェイバックでグリップとヘッドが重なる理想の位置へバックスイングできます。
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手や腕で上げると軌道から外れやすい
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みぞおちを右へ向ける意識が大切
体が伸び上がってしまうのですが…
バックスイング中に体が伸び上がってしまうと、ダウンスイングでクラブがアウトサイドから下りてくるためボールがつかまりません。またアタックアングルが鋭角になりすぎて、ダフりなどのミスを招きます。
このタイプはバックスイングでクラブを上にあげる意識が強く、そのためグリップを持ち上げる傾向があります。
グリップは上ではなく、後ろへ引くイメージを持つことが大切。このイメージでコックが入れば、十分にヘッドは高い位置まで上がります。また体が伸び上がることもありません。
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クラブを上にあげると体が伸び上がりやすい
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グリップを後ろへ引く意識をもてば伸び上がらない
頭が下がるクセがあるのですが…
バックスイング中に頭が下がると、ダウンスイングのときに伸び上がったり、起き上がったりするためトップやダフりなどのミスを招きます。このタイプは体の回転だけでバックスイングする人に多くみられます。
回転だけだと左足に体重がかかりやすく、そのせいで膝が深く曲がるのです。体を回す意識をなくして、グリップをスッと持ち上げるようにすることが大切。
その際、コックも必ず使いましょう。これなら右足に体重がかかるため、左膝が深く曲がらず、頭が下がりません。
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体を回すだけだと頭が下がりやすい
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グリップを持ち上げる意識なら頭が下がらない
バックスイングが安定するおすすめ練習方法
振り子をイメージした連続素振りが、バックスイングを安定させる練習方法としておすすめです。練習のやり方はとても簡単。
- 任意のクラブを持ってアドレスします。ボールは不要です。
- フォロー方向にヘッドを出します(ヘッドが4時の位置に来ればOKです)。
- その位置から振り子をイメージして、トップまでバックスイング。
- この動作を連続で行います。
練習のポイントはヘッドの重さを感じながら連続で行うこと。手、腕、体でクラブを操作せず、ヘッドの重さでクラブが行ったり来たりするようにします。
その際のヘッド軌道がもっともナチュラルな動きなので、ボールを打つときもこの軌道をイメージしましょう。また振り子のイメージのバックスイングなら手や腕などにムダな力が入らず、スイング全体もスムーズになるでしょう。
【Q&A】ゴルフのバックスイングについて多い質問
以下では、ゴルフのバックスイングについて多い質問・疑問に回答します。
- バックスイングは「ゆっくり上げる」「速く上げる」どっちが正解?
- バックスイングで右腰を引くのはなぜ?
- バックスイングで沈み込むのは間違い?
Q. バックスイングは「ゆっくり上げる」「速く上げる」どっちが正解?
バックスイングのテンポは人それぞれです。ですので、速く上げても、ゆっくり上げてもOKです。
ただ、バックスイングの途中で急にテンポが変わるような上げ方はおすすめできません。
また打ちいそぎにつながるせわしないテンポや慌ただしいテンポも避けたほうがいいでしょう。テンポは人それぞれ自由ですが、スムーズさやリズミカルな動きは必要です。
Q. バックスイングで右腰を引くのはなぜ?
バックスイングのとき、能動的に右腰を引く人もいれば、引かない人もいます。
能動的に引く人は右股関節で体重を受け止める意識が強い人といえ、股関節の使い方を理解している必要があります。理解していない人が見様見真似で腰を引くと、単に腰が引けた状態になるので注意が必要です。
能動的に腰を引かない人(受動的に腰を引く人)は、足裏で体重を受け止めるほうがマッチしているからでしょう。
Q. バックスイングで沈み込むのは間違い?
バックスイングのときに体が沈み込むと、ダウンスイングで伸び上がったり、起き上がったりするのでエラー動作です。
バックスイングに限らず、スイングに無駄な上下左右の動きは不要。動けば動くだけスイング軸がブレて、ミート率が下がります。
初心者や初級者には難しいことかもしれませんが、最低でもインパクトするまでは頭は不動。この意識があれば沈み込み防止に役立つでしょう。
正しいバックスイングを身につけてスイングを安定させよう
スイングのスタート地点といえるバックスイングは、ここの成否がショットの成否につながるといわれる部分なので、多くの人が悩むところです。
もしあなたが多くのゴルファーと同じように、バックスイングに悩んでいるなら、ぜひこの記事を参考にいろいろ試してください。そしてあなたにマッチした方法を見つけてください。
■解説者プロフィール
宮川岳也(みやかわ たけや)
ゴルフ雑誌編集記者を経て、フリーランスのゴルフライターへ。USGTFティーチングプロ資格を有し、現在は埼玉県の練習場でレッスン活動も行っている。