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曲がりにくくなったボールとクラブで低くなった「曲げるニーズ」

重箱の隅、つつかせていただきます|第22回

2022/06/04 ゴルフサプリ編集部

スイング、ゴルフギア、ルールなどなど……。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。今回は、ゴルフクラブやボールの進化(トレンドの変化)によって、ボールを曲げるニーズが低くなったというお話です。

GOLF TODAY本誌 No.600/70ページより

戸川景
とがわ・ひかる。1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。

なぜ「曲げる球」のニーズは低いのか?

昔からゴルフのスイング技術、ショットの理想として「遠く、正確に」という考え方がある。飛ばそうと思えば曲がり、曲げまいと思えば飛ばせない。相反する要素を両立させることが難しいからこそ、練習目標として成り立っていたと思う。

だが、ボールとクラブの進化のおかげで、レッスン記事でも「正確に」の技術追求意識はかなり下がったように感じている。曲がりにくくなったボールとクラブで、打ち出し方向だけ整えればいい。後は「遠くに」だけに専念するような話ばかりになっている。

スイング技術の基本はレッスン書で学ぶなりティーチングプロに教わるなりするのが王道で、雑誌のレッスン記事が応用編、ヒント集に偏るのはごく自然な流れだと思っている。

とはいえ、基本技術の習得以上に飛距離アップできるヒントなど、そうそうあるわけがない。ひとつ間違えればケガや故障を生じるような、体に大きな負担をかける技術がもてはやされたりしているのが現状だ。

一方、飛ばし屋のプロの連続写真やスイングを眺めても、飛ばせるようにはならないと思う。ブライソン・デシャンボーの技術は、あり余る体力を生かして、強く振って曲げない方法論だから、非力な一般アマの飛距離アップにはつながらない、と考えている。

本来、飛距離アップは体力トレーニングで得るもの。過去、私が知っているレッスン書で具体的なゴルフ用の体力トレーニング方法を述べていたのは、ゲーリー・プレーヤーの『グランドスラムゴルフ』と石井朝夫の『プッシュショット』だけ。いずれも60年以上前に書かれたものだが、前腕と足腰を鍛えるという考え方は現在でも通用すると思う。

さて、なぜ長々と飛距離アップレッスンにネガティブな意見を述べてきたかというと、そろそろレッスン記事の主流は「正確に」に軸足を移していい頃合いではないか、と考えるからだ。

スイング技術習熟の順序はざっくり示すと「当たるようになる」→「飛ばせるようになる」→「狙えるようになる」。本当に楽しくなるのは、試すことが増える第3段階の「狙う」だと思う。

ゴルフは本来ターゲットゲーム。「狙い打ち」のための「正確に」は飛ばし優先の「曲げない技術」ではなく「曲げる技術」が必要になるはずだ。

最近ではトーナメント中継でも、弾道をトレース表示することが多いので、いかにトッププロの弾道が曲げられているか、目視できるようになっている。
「曲げる技術」は、ヘッド軌道を変えたり、打点をズラしたり、フェースの角度を調整したりと、複数の要素が絡み合うためか、上級者の高等テクと敬遠されがち。だが、基本をマスターしただけではコースで通用しないのは、初心者のうちに気づいたはずだ。

コースの斜面からは否が応でも“曲がって”しまう。「曲げる技術」が理解できないと、グリーンは狙えない。つまり、「曲げる技術」は覚えるのを後回しにする高等テクではなく、初心者から心がける必須テクと捉えるべきだ。

曲がり幅の調整、弾道の高低の変え方など、最近のレッスンではなかなか見かけないが、深掘りするほどにプロそれぞれのやり方の違いから広がりが出るはず。また、曲がりにくくなったボールとクラブのメリットの生かし方を考えると、現代的な新しいレッスン記事が展開できると思う。

昔、グレッグ・ノーマンは左右の曲げ幅を抑えるイメージとして「タテ(上)に曲げる」と語っていた。これ、ドライバーの話。現代のトッププロは、どんなイメージを描いているのだろうか。


Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ


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